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プロレスに見る、戦略と新規顧客の大切さ

皆様は、プロレスを見たご経験はあるだろうか?

プロレスと言えば、一時は野球と並ぶ国民的スポーツであり、男性が好むスポーツだった。しかし近年はTV中継の廃止、観客数の減少により、すっかり「衰退スポーツ」のイメージになっている。そんな「衰退スポーツ」のプロレスでも、老舗大手の新日本プロレスが元気である。

「棚橋ぃぃー弘至ぃぃー!!」 語尾を伸ばす独特の言い回しで紹介された、筋骨隆々の大男はリングで手をあげる。同時に観客席から、様々な声が飛ぶ。

「棚橋ィィィー!!」、「うおぉぉぉ!!」、「いったれー!!」
「キャー!! (≧∇≦)━━━ 」、「棚橋さん、かっこいいー!!」

野太い男性の声援の中に、女性の黄色い声援が聞こえてくるのである。会場を見ると、プロレスグッズに身を固めた女性、カップルで来ている女性、女性グループで来ている女性など様々な女性が会場の2割から4割を占めているのである。 さらに会場は満席、チケットは売切れである。なぜ、衰退スポーツであったプロレスが、ここまで復活できたのか。主たる要因は、「新規ファンを開拓」したことにある。

長年プロレスを支えてきたのは、プロレスオタクと言われるコアなファンである。彼らは会場へ足を運び、選手のぶつかり合い・殴り合いなど、試合自体にエンターテインメントを求める。そのため各プロレス団体は目先の売上のため、「試合のマッチメーク」や「試合運び」「選手の派閥抗争」など、コアなファン以外にとって、とっつきにくく・わからない要素を重視展開し、プロレスがさらにマニアックになり、より観客離れが進んでしまった。老舗団体・新日本プロレスも同様であった。

しかし2012年トレーディングカード大手「ブシロード」の親会社変更により、新日本プロレスの状況は一変する。新社長の木谷高明氏は、“すべてのジャンルはマニアが潰す”の考えのもと、これまで支えたプロレスオタクから潜在ファン(プロレス好きを公にしていないファン)や女性ファンの開拓に注力をしたのである。

具体的には潜在ファンや女性ファンにターゲットを絞り、「口コミを生み出す」宣伝活動を行った。それまでのただのポスター掲示ではなく、TVCMや雑誌広告、山手線の車体広告や 駅の大きい看板など、プロレスを徹底的に目に付くようしたのである。その結果「あれ、何?」「ねぇあの広告、見た?」など会話や口コミが日常で発生し、潜在ファンが「プロレス好き」を公言できるきっかけを作ったのである。

また商品である選手による、インターネットでの情報発信(ブログやツイッターなど)や情報番組出演などを行い、より視聴者からの親しみを持ってもらう施策を行った。その結果、新日本プロレスは潜在ファン・女性ファンの開拓に成功し、3年前は約11億円の売上も直近では約25億円まで回復した。新日本プロレスが業界で一人勝ちなのも、競合団体とはちがい、目先の売上であるコアなファンを捨て、潜在ファンや女性ファンに絞った戦略があったからである。

今までプロレス好きを公にできなかった層や接点がなかった女性ファンにも、プロレスへの扉を開いたという意味で、業界においても新日本プロレスの貢献は非常に大きい。「とっつきにくい・わかりにくい」プロレスを、話題と親しみをもって露出・情報発信した事が、支持されたのだろう。

新日本プロレスは、現在ある資源を「新しい客に売る」第一段階は成功した。しかしそろそろ、そういった人々の需要も一巡する。今後、彼らは何を求めるのだろうか。2014年3月現在の新日本プロレスのホームページ等を見ても、変わらず「試合内容・結果」や「選手紹介」「ブログ」などが掲載されており、新たな戦略・施策はまだ出ていない。

新日本プロレスが、新たなファンの需要喚起をするためにどのような戦略・施策を打ちだすのか、企業経営の点でもぜひ注目である。