生産財にとって、そもそもマーケティングという考え方は比較的新しい。
生産財の場合は、消費財のようにユーザーがそのまま製品を使用できるわけではなく、顧客が社内の体制を整えて、その生産財を使いこなすようにならなければならない。
したがって、生産財の新規ビジネスを立ち上げるためには、顧客に足しげく通う必要がある。そして一旦ビジネスが立ち上がった後も、既存の顧客にも足しげく通つづけ、新しいテーマを入手したり、既存のビジネスを競合に奪われないようにしたりするための活動が必要となる。
このように、このように生産財では、顧客に足しげく通うという営業活動が主体であり、新規顧客を開拓するためのマーケティング活用を行うことはまれである。
しかしながら、経済が右肩上がりで成長しているときは、そのような営業活動のみでユーザーとともにメーカーも成長できたが、マーケットが縮小している現在においては、限られた顧客のパイの奪い合いとなり、結果として、既存顧客との関係維持だけでは成長できず、新規に顧客を開拓するための活動が重要となっている。
そのような環境下において、生産財でもマーケティングの必要性が注目され、今では様々な生産財メーカーが、ダイレクトマーケティングという形で、新規顧客開拓のための取組みを行っている。
海外市場の場合は、このダイレクトマーケティングの考え方がより重要となる。
海外の顧客に対して足しげく通うためには、現地に営業担当者が必要である。そのためには、現地に法人を立ち上げるか、あるいは販売代理店が必要となるが、広大な海外市場の全てを網羅できるように、法人を設立したり、代理店を選定したりすることは不可能である。
したがって、ある程度エリアを決めて、当該エリアの中で、ポテンシャルの高い顧客に対して、重点的に取り組むということが、生産財での海外市場への取組みでは行われている。しかしながら、自社の顧客となりうる企業は、そのエリア以外にも、世界中に存在しているはずである。そこで、近年成功しているのが海外ダイレクトマーケティングである。
この海外ダイレクトマーケティングとは、WEBサイトやカタログを用いて見込み客を集め、見込み客の中からポテンシャルの高い顧客に対して重点的にアプローチするための仕組みを言う。
具体的には、生産財の海外ダイレクトマーケティングとは、英文・中文WEBサイトと英文・中文カタログを活用し、世界中にいる潜在顧客を見える化するための仕掛けである。
英文・中文WEBサイトは、自社の製品に興味を持つ可能性のある潜在顧客を集めるために活用する。今やインターネットは世界中に普及しており、生産財の顧客となる製造業ユーザーは、インターネットを通じて新しい製品や技術などの情報収集を行っている。
そこで、そういった世界中にいる新しい製品や技術などの情報を求めているユーザーに自社の製品をまず知ってもらうために、自社の英文・中文WEBサイトに誘導するのである。世界的にはグーグルが、中国では百度がネット検索の高いシェアを保有しており、これらのネット検索企業の仕組みを活用することで、世界中にいる潜在顧客を自社WEBサイトに誘導することができる。
しかし、たとえ、世界中の潜在顧客を自社WEBサイトに誘導できたとしても、それだけでは意味はなく、そういった潜在顧客が、自社に問い合わせをしてきてはじめて、コミュニケーションにつながる。
そこで重要な役割を果たすのが、英文・中文カタログである。英文・中文カタログを作成し、自社WEBサイト上でダウンロードできるようにしておき、そして潜在顧客がカタログのダウンロードするための条件として、会社名・個人名・連絡先を入力するようにしておけば、誰が自社の製品に興味を持ってカタログをダウンロードしたのか、その見込み客の名簿を入手することができる。
あとは、その見込み客に対して、アプローチをするのみである。
こういった海外ダイレクトマーケティングは今様々な企業で行われており、今まで一切海外との取引をしたことがないメーカーが、海外の大手企業との取引を開始するにいたった事例もある。
言語が異なる日本では、海外ダイレクトマーケティングの導入が他の国の企業よりも遅い。海外ダイレクトマーケティングモデルの立ち上げは、海外進出よりもはるかに投資額は少なくて済むため、取組みのハードルは低い。
日本にはすばらしい技術をもったメーカーが多数存在しているため、多くの企業が海外ダイレクトマーケティングへの取組みを開始されることを期待している。