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2010年下半期は不動産市場の回復が鮮明に! 市況の反転で不動産ビジネスはどう変わるか

早いもので2010年も前半戦が終わり、後半戦に入った。ここで、上半期を振り返り2010年下半期における不動産マーケットの動向を予測したい。

■ 2010年第1四半期の不動産市況「住宅用は回復するも、法人向けは未だ厳しい」
いうまでもなく不動産市況は、その国の、あるいはその国を取り巻く世界的な経済のファンダメンタルズを如実に反映する。例えば、下記の通り日経平均株価と東証REIT指数はほぼ同じ動きで推移しており、その相関関係は高いといえる。(ただし、後述する「6月以降の動き」に注目していただきたい)

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振り返ってみると、10年の出だしから、住宅系不動産マーケットの反転は著しかった。09年の新設住宅着工数が45年ぶりに80万戸を割ったという最悪の結果に比べ、分譲マンション、分譲住宅等を中心に回復の兆しを見せ始めていた。また新築のみならず、中古住宅の流通市場も好調で、中古マンションを中心に、良い流れが起きた。実際、新築住宅販売、不動産売買仲介といった私どもの顧問先企業の業績もまた、上向きに推移し始めていた。

このように10年の頭(正確には一部09年末)から、住宅系不動産マーケットの状況が好転し始めた要因として次の3つが挙げられる。1つ目は、リーマンショック以降の世界的な経済のシュリンク状態に対して、各国の政府、中央銀行が矢継ぎ早に実施したマクロ経済政策が効果を表し始め、マーケット全体に「二番底は回避された」との雰囲気が広がってきたということ。

2つ目は、我が国の景気対策の一環として強化された各種の住宅需要促進施策が功を奏してきたという点。ローン減税や、住宅資金の贈与税における非課税枠の拡大、住宅エコポイントなどが挙げられる。我が国においては、その波及効果も含めるとGDPのおよそ10%をも占めるとされている住宅投資の回復は、経済全体の復活に必要不可欠である。そうした考えから、不況期にはこの住宅投資に関する様々な対策が強化される場合が多い。それが地価の推移や、金利の状況と相まって、「今が買い時」感を醸成したと考えられる。

3つ目は、売り手側の事情だ。新築分譲マンションであれば、在庫処分という事情による値引き価格での販売が起きた。また、新築戸建では、景気低迷にあわせたローコスト住宅への対応が進んだ。そして中古住宅では、売り手の現金化ニーズが高まったことなどが、景気低迷期における消費者ニーズとマッチした。こうしたことが、ここ数年先送りされてきた住宅需要を復活させるきっかけとなったと考えられる。

一方で、法人向け不動産に関する市況は、10年に突入して以降も低迷が続いていた。09年末からREITを含む企業の不動産取引は徐々に回復傾向にあったが、オフィスの空室率は上昇を続け、賃料は下落し続けている。法人不動産市況のファンダメンタルズの1つでもある不動産賃料のデフレが続いている為、本来、もう少し上昇しても良いはずの不動産価格も低迷している。

前述した住宅需要が、国の景気対策や減税措置にビビットに反応するのに対し、一般的に法人向け不動産需要は、景気回復に対して遅効性があると言われている。社員の増員やそれに伴うオフィスの取得や増床、移転の背景にあるものは、当然ながら将来に対する期待感や投資という要素が強い。企業業績そのものがある程度底堅い回復を実現し、市況全体の明るさが見えてこなければ、企業としてそのような決断を下しにくいのであろう。

以上のことから10年の第1四半期頃までの不動産市況を簡潔に表現すると、住宅系不動産マーケットにとってはプラスのトレンドが出始め、法人系不動産マーケットは未だ厳しい状況が続いているという状態にあったといえよう。

■ J-REIT市場も再構築により回復基調に不動産市場の底堅い回復の予兆か
そんな中、改めて5月頃から顕在化したのが欧州の「ソブリンリスク問題」である。このギリシャを始めとする、いわゆるPIIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)を取り巻く問題の背景には、共通通貨ユーロの誕生による信用拡大、それによる対外不均衡の拡大、つまりは経常収支の悪化が拡大しつづけているという本質的な問題があった。

そのため、リーマンショック以後、各国において飛躍的に拡大した財政赤字は、結果的に経常収支を悪化させており、財政赤字や経常収支の赤字国に対する信用不安に加え、これまで取られてきた景気回復のための財政政策に対する批判や出口戦略を早める議論が活発化されたのである。

前述の日経平均株価の推移と東証REIT指数の推移のグラフを見てもわかるように、いずれも5月から6月にかけては下降トレンドとなっており、日経平均で9500円割れ、東証REIT指数で900ポイント割れを経験した。5月の新設住宅着工戸数は、前月比で再び下落に転じ、また、空室率の上昇幅や賃料の下落幅の縮小という形で、若干回復傾向にあったオフィス市況も再び悪化し、日本の不動産市況は再度、下降トレンドに入ったかのように見えた。

しかし、6月以降現在に至るまで、相変わらず欧州のソブリンリスクや米国の景気に再び不透明感が増し、表にあるとおり日経平均は下落、そして上昇幅の大きい一進一退の動きを見せているのに対し、東証REIT指数は概ね上昇傾向にある。もちろん、その背景にはJ-REIT市場の再構築が進んでいるという市場独自の要因もある。単独では厳しい投資法人が、より信用力のある投資法人に吸収合併される、あるいは大きくかつ信用力の高いスポンサーに鞍替えするというケースが増えている。

年初来との比較においても、日経平均が未だ10%近いマイナス水準にあるのに対し、REIT指数は2%程度ではあるがプラス水準である。国内の政治不安が重なり、我が国の景気全体は未だ不安定な状態にある一方で、不動産市場については徐々に底堅い回復を見せ始めている点は見逃せない。

■ 不動産市場の底は2010年上半期。下半期は回復がより鮮明になる
10年も下半期に入り、不動産市況は回復の兆しをより鮮明にさせるであろう。海外不動産市場との比較においても、未だ日本の不動産は買いの状態であり、徐々にではあるが、海外からの不動産に対する資金も戻りつつあるように感じる。海外から見れば、日本はデフレ、人口減少・高齢化の進展、肥大的に増える国債など、株式市場を中心に、あまりの投資対象として魅力ない国になりつつある。

それに対して、不動産は先程見たように、日経平均や東証TOPIXなどの年初からのトレンドと比較するとアウトパフォームしている点などから、注目は高まりつつあるといえよう。住宅需要についても、顧問先企業におけるモデルルームへの来場客数、中古不動産の成約件数などを見ていると、月々で多少の変動はあるにせよ、一定の需要の底堅さを感じさせる。以上のことから、不動産市場全体からすれば、10年上半期に底を打ったと言ってもよいだろう。

■ 市況回復期にとるべき不動産ビジネスの変革モデル
さて、市場トレンドが変化する最中、不動産にかかわるビジネスを展開される企業は、どのような戦略をもって下半期、そして2011年を戦っていけば良いのであろうか。不動産ビジネスといってもその実態は多義にわたり、一般消費者を対象とするもの、法人を対象にするもの、また、開発、仲介、賃貸、管理といったそれぞれのターゲット、ビジネスモデルによって取るべきポイントは様々であろう。

マクロ的には、経済全体がシュリンクするなか、不動産にかかわる新たな需要を創造、育成、拡大させる必要がある。少なくともこれまでのようなスクラップ&ビルド型の不動産ビジネスモデルが生き残ることは困難であり、不動産という資産をいかに長期にかつ有効に活用し続けることができるかという点がポイントになるといえよう。大手ハウスメーカーやデベロッパーもこのような観点で、長期かつ優良な新しい不動産のモデルを開発し始めている。

一方でこのストックを重視するという観点においては、今後、不動産を管理するビジネスは今まで以上に、その役割の重要性を高め、ビジネスチャンスとしても拡大する可能性があると言える。特に、商業用不動産に比べ、住居用不動産の管理モデルはまだまだ改善の余地が大きい。単なる清掃やメンテナンスを行う業者という観点のみならず、資産価値を維持・向上させるプロパティマネジメントとしてのモデルがより一層、求められるといえよう。

前述の通り、市場トレンドの変革期である今の段階で、押さえておくべきポイント、各種業界別の市場動向予測、各業界での成功モデルなど、今後の事業戦略、事業計画を構築する上で役に立つ情報をご提供したいと考えている。いずれにしても、この不動産の市況が底を打ち、本格的回復に至る今のタイミングでこのようなセミナーを開催する意義は大きいと考えている。

不動産市場の活性化には、日本全体の景気の回復、経済の活性化に寄与する役割も大きい。世界や日本の景況感には、まだまだ不安定な要素も多く、暗い話も尽きない。逆説的ではあるが、だからこそ不動産ビジネスが活性化されることで、日本を元気にさせることができるのではないか。今、このタイミングで何を考え、行動するかが全てを決めるのである。
(この記事は2010年8月2日に初掲載されたものです。)