ここで、地域家電店と表現しているのは、いわゆる「町の電気屋さん」のことだ。
もともと電化製品は、各メーカーが展開した「町の電気屋さん」チャネルを通じて普及していったわけだが、ある時期から登場する家電量販店に大きくシェアを奪われることになる。
大型の店舗を構え、全てのメーカーの商品を揃え、しかも大量仕入れによって安売りを実現する量販店の影響を受けて廃業に追い込まれた地域家電店は少なくない。
しかし、一方でしっかりと商売を続けているお店は想像するよりも多いようだ。
品揃え、価格、といった点に関しては量販店に全くかなわないわけだが、地域家電店にはそのエリアの中で築き上げてきたお客さまとの絆がある。
◇ 説明書など読まなくても使いこなせるように説明してくれる
◇ すぐに使えるように取り付けや設置作業をやってくれる
◇ 何か不具合があれば、すぐに家まで来てくれる
◇ 極論を言えば、電球1個でも持って来てくれる
このようなきめ細かいサービスを評価して、付き合い続けてくれるお客さまが意外に多いわけだ。
そう考えると、これから高齢化が進行していく日本においては、その存在価値が見直されるのではないかと思われる。地域家電店にとってはチャンスだろう。
ただし、解決すべき大きな課題として、認知度の向上がある。
現在の地域家電店のお客さまは、団塊世代以上が中心だ。
この層のお客さまは、もともと地域家電店で買い物をし、
その後量販店でも買い物をした経験はあるが、最終的に地域家電店を選択している、ということになるだろう。
いわば、地域家電店の店主とお客さまは「長い付き合い」だ。
一方で、40代以下の消費者はどうだろう。
団塊ジュニアといわれる世代もここに入ってくるが、この層はそもそも地域家電店で買い物をした経験が無いという人がかなり多い。
つまり、電化製品を買おうと思ったときに、地域家電店は選択肢にも入っていないわけだ。
しかも、自分の住んでいる町に店舗があるかどうかも知らない可能性が高い。
しかも、量販店しか知らないから量販店で買い物をしているけれども、「
疲れるから、あまり好きではないけれども仕方なく…」という意見をもつ人も少なからずいるようだ。
おそらく地域家電店は、「創業して数十年、この地域で商売を続けているんだから、ウチの店を知らない人なんていないだろう」という間違った思い込みをしている。
つまり、今買ってもらえてないのは、評価してもらえてない(量販店との勝負に負けている)からだという思い込みで、
現実には勝負にすらなっていないということだ。
基本中の基本だが、マーケットシェアの公式として以下がある。
「マーケットシェア=カバー率×勝率」
“カバー率”がいわゆる認知度だと思ってもらえば良いだろう。
地域家電店で言えば、商圏(例えば半径2km内)に1万世帯位があるとして「どの位の世帯に認知されているか?」がカバー率である。
勝ち負け(つまり勝率)の土俵に上がるためには、店の名前、場所、強み、位のことは、消費者に思い浮かべてもらわなければならない。
残念ながら、地域家電店のことを知らない消費者が思い浮かべるのは、今のところマイナス材料が圧倒的に多い。
“高い”、“商品が少ない”、“店が小さい”といった知らないなりのイメージだ。
まもなく到来する機会を獲得するためには、「正しいイメージを訴求しながらカバー率を上げる」ことに着手しなければならない。
この「すぐに売上実績にはつながらないけれども大切なこと」に対して、諦めずに計画的に取り組んだ地域家電店は、確実に一定のポジションを獲得できるはずだ。