前回のコラムでは、目標を「エベレスト登頂」に例えて、
目標(エベレスト登頂)を達成するためには、計画(登り方)を創り込まなければならないことを書いた。
これに対して、数名のリーダーの方からこんな質問をもらった。
「目標と計画の定義については大変わかりやすかったんですが、
そもそもウチのメンバーは目標に対するモチベーションを持っていないように思います。
つまり、こちらが『さあエベレストに登ろう』と声を掛けても、
『いや~、別にエベレストに登りたいわけじゃないし…』といった感じだったり、
『エベレストなんてとても無理でしょ』といった感じだったりするわけです。
こういったメンバーが部下にいる場合、一体どうすれば良いのでしょうか?」
実は同じような悩みを持つ幹部の方も多いのではないだろうか。
本来であれば、「仕事なんだから、つべこべ言わずに登ればいいんだよ」と言いたくもなるところだろうが、
そうすることによって逆に部下のモチベーションが下がって目標を達成できないようでは全く意味が無いから、
誰もが悩んでしまうわけだ。
そう考えると、「なぜ、エベレストに登る必要があるのか」、「エベレスト登頂のその先に何があるのか」、という問い掛けに対し、
幹部としての答え、あるいは企業としての答えを明確にする必要がある。
以前にも取り上げたが、“なでしこジャパン”の事例がわかりやすい。
特に、「目標のその先」については、ほぼメンバー全員が共有しているのではないだろうか。
現在は、ロンドン五輪金メダルという高い目標を掲げているが、
昨年のワールドカップの前にはワールドカップ金メダルという高い目標を掲げていた。
スポーツの世界だから、目標に対するモチベーションは高くて当然なのだが、
見逃してはならないのが、「目標のその先」に、日本の女子サッカーをメジャーなスポーツにしたい、
という壮大な目的を全員が持っていることだ。
だからこそ、ワールドカップ金メダルという偉業を成し遂げた後でも、
燃え尽きることなく、高いモチベーションを維持することができているわけだ。
是非とも、ここから感じ取ってもらいたい。
「目標のその先」つまり、「なぜエベレストに登る必要があるのか」、「登頂のその先に何があるのか」を示すことの大切さを。
まず、幹部である皆さんは、自らに問い掛けてみてもらいたい。
「なぜ、この仕事を選び、続けているのか」
「自分自身が仕事に、会社に、誇りをもつために、どんな会社にしていきたいのか」
そして、まず自分自身の腹に落としてもらいたい。
「エベレストに登れと言われたから登っているわけじゃない。登った先の、もっと大きな目的の為にも、メンバーと一緒に登りたいんだ」
自らの腹に落ちたら、もう一度メンバーにその思いを語ってみよう。
すぐには難しいかもしれないが、ずっと言い続けることで、「本気でエベレストを目指す」メンバーが徐々に増えていくに違いない。