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後、どのくらいの売上が取れるのか?

■ 根拠のない前年対比ベースの予算設定

12月に決算を迎える企業は、そろそろ本格的に来期への PL 予算づくりに動いているのではないだろうか。予算づくりによく散見される現象の一つとして、前年実績をベースに立てていくことがある。

コスト面においては妥当性をもつ場合もあるが、売上面において前年対比をベースにした設定には、総じて根拠がない場合が多い。

今回は、売上予算の根拠となる「後どのくらい売上が伸びる余地があるのか?」を明らかにするポテンシャルの概念について再度確認したい。

これは予算の話だけでなく、今の戦略を実行レベルでさらに強化して進める場合や、新たな戦略に打って出る場合においても、このポテンシャルを一つの判断基準として、フォーカスすべきことや投入する資源配分を検討することは有意義であると考える。

ここでは特に既に取引がある先での売上ポテンシャルについて見ていきたい。

■ 既存取引先での売上ポテンシャル把握の重要性

「売上ポテンシャル」とは言葉のとおり売上の伸びる余地を示しており、例えば、“既存の取引先で後どの程度売上がとれる余地があるのか”、“新たな取引先のパイはどの程度残っていて、それらを開拓するとどの程度の売上が見込めるのか”、“新たなチャネルを開拓した場合はどの程度のインパクトがあるか”などを企業として事前に“数値”として把握しておくことを指す。

上記の中で、既存の取引先での売上余地を明確に答えられる企業は意外に少ないのではないだろうか。逆に新たな展開を考えているケースでは、参入時の売上予想や計画なるものは、市場や競合といった側面から既に検討していることが多い。

疑問となるのは、現取引先の売上余地について見極めをせず、感覚的な閉塞感で新たな取り組みを検討するケースが意外に多いのではないだろうかということである。

既存取引先での売上ポテンシャルの把握は、顧客と接点をもつ営業から収集する情報設計さえ間違わなければそれほど難しい話ではないが、取引先ごと個別に把握する緻密さが求められる。

消費財系のメーカーを例にあげれば、自社の商品を扱っている小売店において、同カテゴリーの商品売上規模や近年の推移といったその店内における商品市場と自社シェアを取引店舗ごとに掴む必要があるだろう。

競合についても、取引先ごとにどの競合メーカーが参入し、その店にどのような条件で卸していて、現状どの程度のシェアをとっているのか、そしてシェア巻き返しに必要な条件はどんなものかを掴む必要があるだろう。

例えば割引率やリベートなど価格政策的なことなのか、営業の訪問頻度、提案内容そのもの、売り場づくり、キーマンとのパイプづくりといった営業的側面なのか、商品の機能的もしくは質的な側面なのかなどである。

そして、それぞれの施策でどの程度のシェアアップが図れるかについても個別で検討していく。個店ごとに検討するからこそ、何をやればどの程度のシェアアップが可能かの判断がつきやすい。

つまり、通常の事業戦略で取られているような 3C 分析を各個別の取引先ごとに行い、取引先別のポテンシャル、そのポテンシャルをとるために必要な条件(対策内容とコストと時間)、そして売上効果を明らかにしていく。

ここまでの作業を各営業の個人任せではなく、組織的な取り組みとして実施し、本部で集約することで、自社の既存取引先全体でどの程度の売上余地が残っていて、それを取るためにどれほどの対策が必要なのかを把握できるようになる。
ここまでできてはじめて既存取引先での売上限界値が“数値”として見えてくる。

それを踏まえた上で、次期は新たな取引先の開拓、もしくは新たなチャネルへのシフトを本格的に検討すべきかの判断が可能になる。既存の取引先においてもキーとなる対策さえ打てれば、まだまだ大きな売上増加余地が残っているケースは決して少ない話ではない。

■ 求められる売上機会の緻密な検証

ここで述べていることは、稀有なものではなく、特別なノウハウが必要なものでもない。今の取引先(顧客資産)でどの程度売上増が見込めるかという視点に着目するかどうかの話である。

ただ近年、特に国内市場においては、成長し続ける魅力的な市場を見つけるのは困難になってきている。よって、緻密に売上機会を検証していって、それを逃さないように動けるかどうかが一つの重要な優位性になると考えている。

その意味でまずは今の取引先での可能性(ポテンシャル)をしっかり抑えることは非常に有意義なことであり、それを踏まえた上で、数値目標やフォーカスすべきアクションを策定していってはどうかと考える。
(この記事は2008年9月30日に初掲載されたものです。)