MENU
×

MENU

お問い合わせ マイページ

付帯するだけで会員数が2倍に!? ブラックカードホルダーに人気のサービスに見る新しいビジネス成功の切り口

ブラックカードとは、クレジットカードの中でも最高峰に位置し、カード会社からのインビテーション(招待状)が届いた人のみにその携帯が許されるカードです。ダイナースクラブのプレミアムカード、JCBのザ・クラス、アメリカン・エクスプレスのセンチュリオンなどがよく知られているところですが、そのブラックカードを持つことでカード会社が提供する様々な特典や各種サービスを無料、もしくは優待価格で利用することができるようになります。

■ 日本ではなかなか利用されない富裕層向けコンシェルジュサービス

もちろんブラックカード以外でも、いくつかの企業が富裕層を対象にしてコンシェルジュサービスを提供しています。

サービスメニューの例としては、プライベートジェットやヘリコプターのチャーター、クルーズ(船旅)のコーディネート、高級ホテルの予約、ハイヤーサービス、投資・資産運用のアドバイス、国内・海外不動産の紹介、医療・アンチエイジングサービスの提供、子どもの海外留学サポートなど。これらサービスは富裕層向け雑誌や各種コンシェルジュサービスを提供しているウェブサイトでも確認することができます。

ただ、富裕層を対象に、コンシェルジュサービスを提供しているある企業の経営者の方にお話を伺ったところ、上記に挙げたようなサービスは日本であまり利用されていないのが実情とのことでした。

とはいうものの、そういった中でも富裕層や経営者、医師といった人たちに比較的よく利用されているサービスもあります。では、どのようなサービスが、どういった理由で利用されているのでしょうか。

■ 富裕層の人たちが利用するサービスのキーワードは「グルメ」
コンシェルジュサービスを提供している、ある企業がサービスの利用状況を調べたところ、富裕層に一番利用されているサービスはグルメで、具体的には高級レストランの事前予約サービスでした。

富裕層と呼ばれる人たちは、名士、財閥といった数世代前からお金持ちのオールドリッチに定義される人たち、自分の代で事業に成功するなどして短期間のうちに資産を築いたニューリッチに定義される人たちに大きく分類されます。調査によると、いずれの富裕層も、それぞれのシチュエーションに合わせて食事の予約サービスを定期的、そして頻繁に利用していたのです。

経営者であれば商談や接待の場として、医師であれば日常の仕事の合間の楽しみとして、また富裕層の人たちはとりわけ記念日を大事にする傾向が強いので、孫の誕生日、結婚記念日といった彼らの特別の日に高級レストランや料亭での食事会、お気に入りの場所でのパーティーなどを頻繁に催します。こういった富裕層の人たちの日常の生活習慣からも、なぜ高級レストランの事前予約サービスが多く利用されているかを容易に理解することができます。

■ グルメサービスの展開に特化したビジネスモデルとそのメリット
具体的な事例として、イベント企画などを手がけているフィールド・プランニング(東京都千代田区)という企業を取り上げてみます。同社で提供している会員制サービスのビジネスモデルはユニークで、富裕層ビジネスを研究していく上でも非常に参考になります。

フィールド・プランニングでは、先に述べた富裕層の習慣に合わせたサービスを展開しています。それは、「招待日和」という主に富裕層向けに高級レストランの事前予約に特化した会員制サービスです。この会員制サービスへの入会は、経営者(役員以上)、医師、弁護士、公認会計士といった人たち、もしくは、ある一定の年収をクリアした個人が主な対象となっています。

富裕層ビジネスというテーマからフィールド・プランニングのビジネスモデルを考えた場合、それを採択することで享受できるメリットとしては以下の3つをあげることができると考えます。

 ・サービスを利用することで会員が享受するメリット
 ・サービスを提供することで飲食店が享受するメリット
 ・サービスを自社の従来のビジネスに活用するメリット

■ サービスを使うほどに高まる満足感とコストパフォーマンス

まず、「サービスを利用することで会員が享受するメリット」とは、会員がレストランを利用した際に感じるお店への満足度の高さと、利用すればするほど享受できるコストパフォーマンスの高さです。「招待日和」では、2011年4月現在、全国で約160店(東京で約70店)のレストランと提携しており、このサービスを受けられるレストランには、ミシュランやザガットサーベイで紹介されているような日本でも有名で人気の高いお店のみがセレクトされています。

例えば、イタリアンの「サバティーニ・ディ・フィレンツエ」、「銀座マキシム・ド・パリ」、「Q.E.D. CLUB」など、経営者や富裕層の人たちが、彼らの接待や記念日に利用するのに相応しいお店が多くラインナップされているので利用者の満足度も高くなると考えられます。

そして、このビジネスモデルの特徴としては同社が提携しているレストランのお薦めのコース料理を2人以上で利用した場合、1人分が無料となります。もちろんここで利用できるレストランのメニューはこのビジネスモデルのために食材原価を削減した特別メニューではなく、それぞれのお店の通常のコース料理となっています。

「招待日和」の会費は個人の場合、1ヵ月3150円(年会費を一括の場合、3万1500円)ですが、利用できるレストランのコースメニューの価格は1名で約1万円から3万円の価格帯なので、1名分が無料ということであれば数回利用すれば十分に元が取れる計算になります。私の知り合いにもビジネスの交際費をひと月に数十万円使っている経営者が何人かいますが、そういった人にとってはこのサービスを活用することで交際費を大幅に削減することも可能になります。

また、レストランの予約は専用のコンシェルジュデスクが設置されており、電話もしくは専用のWEBから事前に予約を入れておけば、当日はクーポン利用などの煩わしさもなく安心して利用できます。

■ これまでとは異なる効果的な販促費の使い方が集客力を上げる
次に「サービスを提供することで飲食店が享受するメリット」についてです。このサービスは利用者だけではなく、それを活用するレストラン側にもいくつかのメリットを提供します。つまり、レストランにとっての効果的な販売促進と、店舗での更なるサービス、ホスピタリティ向上に向けた取り組みが可能になり、新規顧客の獲得がはかれるということです。

このビジネスモデルの特徴である1名分の料金を無料にするというサービスは、各レストランの広告宣伝費から捻出されています。レストラン側としても雑誌やガイドブックなどに高いコストをかけてもなかなか費用対効果が上がらないなか、このビジネスモデルを活用することで、まずはお試しでお店を利用していただき、そこで最高の料理とおもてなしを提供することでリピーターになって頂くことを期待しています。

見込み客がお店のファンになり、リピーターとして育っていくためには、美味しい料理はもちろん、実際に使ってみてそのお店の雰囲気、料理、スタッフの対応といったホスピタリティに十分満足できたかといった点が重要となります。

そこで、サービスを提供しているフィールド・プランニングにはサービスを利用した多くの会員から日々意見が寄せられています。会員からの苦情、要望は、即座にお店にフィードバックされるので、お店にとってもお客様の満足度を向上させ、リピーターになってもらうために必要なことは何かを適宜把握し、それを踏まえて継続的な改善に努めることも可能となっています。

また、「招待日和」の会員には定期的にメルマガが配信されていますが、その中では利用率の上位ランキングも発表されるので、レストラン側としてもどういったお店が頻繁に会員に利用されているのかを客観的に把握、選ばれるお店の条件とは何かを考え、それに向けた対策を立てていくことにも役立っているようです。

■ ビジネスの成功要因はお客様コミュニティの育成と維持

最後に「サービスを自社の従来のビジネスに活用するメリット」ですが、これは、新規のお客様の獲得、既存のお客様の維持を目的にして、従来のやり方に「招待日和」のようなこれまでとは異なるサービスを付加することで得られるメリットです。

実際にいくつかのクレジットカード会社では、この「招待日和」のサービスをブラックカードに付帯することで「カードホルダーの約2割がこのサービスを利用した」、「会員数が約2倍になった」という実績、またアンケート調査では「このサービスの認知度が9割、そのうち約7割の会員が近く利用予定あり」といった調査結果が出ています。

富裕層ビジネスにおいては新規の見込み客や既存客のコミュニティの育成がビジネスの成功要因の1つになると考えますが、これは富裕層ビジネスに限ったことではありません。皆さんが普段から提供している商品やサービスのファンを増やし、収益を上げていくためには、現在抱えている見込み客や既存のお客様へ継続的に新しい価値を提供していくことが必要です。

場合によっては、今回ご紹介した「招待日和」のようなサービスも、時として皆さんの持つコミュニティを活性化させるための有効な手段となり得るかもしれません。

実際にこの「招待日和」のサービスはクレジット会社のブラックカードホルダーだけではなく、経営者が集まる各種クラブや、ドクターのコミュニティ、旅行会社のお得意様会員のコミュニティ、会社内の福利厚生など、様々な場で活用されているようです。

今回ご紹介した富裕層ビジネスの現場での事例も参考にしながら、これまでとは異なる別の視点から、今まで以上にお客様を満足させるための新たなアイディアを考えてみてはいかがでしょうか。異業種とパートナーシップを組むなど、「これまでとは異なる視点」、「これまでとは異なる切り口」が1つのキーワードです。
(出典:ダイヤモンド・オンライン)