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人事制度の変遷と、これから

業種や企業規模に関わらず「人材不足」が大きな経営課題となっています。日本商工会議所の調査によると、「人材不足」と答えた会社は(50%)となっており、「過不足なし」(45%)、「無回答」(1%)、そして「人材が過剰である」と答えた会社はわずか4%だけというデータが出ています。成長を目指す会社の多くで「人材不足」がボトルネックになっていると思われます。この人材不足の状態は、円安による輸出メーカーを中心の好業績、インバウンド需要、オリンピック需要などの2020年までの一時的なことだという楽観的な考え方もありますが、人口構造を考えれば、これから20年以上の長期スパンの現象だと言えます。
 
2010年から2025年までの15年の間に、総人口は5.8%減少すると予測されています。人口が減ると言うことは、国内市場の縮小を意味しますから、それ自体が憂慮すべき問題です。しかし、労働を提供する20~44歳人口は22.8%減少します。つまり消費する人の減少よりはるかに早いスピードで提供する人が減少するのです。時代は間違いなく変わったのです。そこで人事制度の変遷を長期スパンで振り返り、これからの人事制度について考察してみたいと思います

■年功的 職能主義の人事制度(戦後~1990年)
戦後から1990年頃まで、急速な経済発展し、誰もが未来永劫それが続くと思い込んでいましたから、安定した人材確保が重要課題でした。そこで「日本型人事制度」といわれる「終身雇用」「年功主義」が確立しました。時を経て「悪平等による納得性の問題」から、その後に職能等級制度が導入されていきました。職務遂行能力(=職能)と言っても、能力は年齢・経験を積み上げるごとに、習熟度が上がっていくはずであるという考えが根底あり、曖昧さと年功的要素が残った制度が主流の時代です。

■成果主義の人事制度(1990年~2011年?)
1990年代に入り、成長は鈍化しバブル崩壊で一気に悪化しました。それにより、大量に採用された団塊世代が、中年期(管理職適齢期)を向かえポスト不足(人余り)と高い人件費という問題が顕在化しました。今までのようにみんなが年功的に昇格して、処遇を高めていくことが不可能になったのです。そこで生まれたのが「成果主義」と言う名の選別方法です。

本来「再構築」と言う意味のリストラクチャリング(Restructuring)の略である「リストラ」が、「首切り」という意味が一般的になったのも、1990年頃からです。成果主義とは「成果を上げた者は処遇を確保するが、成果の上がらない者はそれ相応の処遇に下げる。」という考え方で、競争意欲を煽りながら、優秀な人材の選別をおこないました。悪意のある表現かも知れませんが、人が余っていたので選別から漏れた人がいても全く困らなかった時代です。

■これからの時代の人事制度(2011年~
経済状況はパッとしない状況は相変わらずですが、前述したように絶対的な人材不足に加え、特に中小企業ではこれからの会社を背負って立つはずの30代~40代前半の世代が、「失われた20年」の間の成功体験の欠如によって育っていないという重大な問題がおこっています。数の論理から言えば、会社が社員を選別する時代は終わり、社員が会社を選別する時代に突入しています。事実、ブラック企業のレッテルを貼られ人が集まらずに経営不振に陥いるケースはたくさんあります。

これまでの「成果主義」は成果を上げた者を選別する仕組みです。成果に応じて処遇を決めていくことにより短期的な人件費の適正化を図ることはできますが、如何せん絶対数が足りません。成果を評価することにより緊張感やモチベーションを上げようとしても、実際の成功体験ない者には、「どうせ頑張っても無駄」と心のどこかで思っている人も多くほとんど効果はありません。モラル低下という逆効果が起こっています。
 
成果によって選別する時代は終わり、少しでも多くの社員が成果を上げられるような仕組みが必要です。また、「頑張れば報われる」から、「報われるから頑張る」人事制度に変えていかなければならない時代になったのです。


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