先週発売された『絶対に断れない営業提案』は、おかげさまでAmazonのセールス・営業部門ランキング第3位にランクされるところまでいきました。
既に読み終わった方々から、ご意見や質問をいただくことも増えており、皆さまには大変感謝しております。ありがとうございました。
さて、その質問の中で多いのが、本書の第6章にある「お客さまとの約束」について。
殆どの企業が掲げていると思われる「顧客満足度の向上」、「顧客志向」、「お客さまの視点で考える」といったキーワードは、
単にお題目として唱えられているだけで、現場の動きまで落とし込まれていないケースが大半だ。
よって、現場に落とし込むために、現場スタッフに考えてもらうのが、
「この会社は、お客さまに対して何を約束していますか?」という問い掛けであり、これに対する答が「お客さまとの約束」になる。
本書では、ある食品卸会社の事例を上げており、最終的に掲げた約束は「街の“今”を伝える」になっているものだ。
ここまで洗練された“約束”にするためには、お客さまの“真の期待”を明らかにしなければならないわけだが、
そのステップが非常に難しくて先に進まない、というのが多くの質問である。
しかし、私自身は、そのステップでの「生みの苦しみ」こそが大切だと思っている。
この“真の期待”は、お客さまに聞いても答は得られない、いわゆる潜在的なものだ。
よって、徹底的にお客さまの立場で考える作業を続けなければならない。
ところが、捌くビジネスが跋扈し、“お客さま力”が退化してしまっている多くの人は、この徹底的にお客さまの立場で考えることが出来なくなってしまっている。
例えば、こんな話をよく耳にする。
「リッツ・カールトンホテルのサービスが良いって聞いたから泊まってみたんだけど、他のホテルとたいして変わらないよね」
言ってることはわからないではない。
恐らく、“普通”にフロントで受付をし、“普通”にベルマンに部屋までアテンドされ、翌日“普通”にチェックアウトしたのだろう。
決して、これが悪いわけではないが、「サービスレベルが良いって聞いたから」それを確認する目的だとすると、
“お客さま”としての積極性に欠けているのではないか、と感じる。
先日、ある企業の社員を集めてディスカッションをしてもらった。
テーマは、「買うつもりは無かったのに、思わず買ってしまったアパレルの“接客対応”について」。
議論するメンバーには、30代を中心に20代から50代までの幅広い年齢層の方々がいたのだが、
結局のところ意図した議論(どんな対応がお客さまの心を動かすのか)にはならなかった。
なぜかと言うと、ショッピングの時でも「販売員との会話は煩わしいから基本的に避けている」というのが本音らしい。
当然、意見はあるだろう。
「リッツカールトンホテルの方が、どんなお客さまにも高いサービスレベルを体感できるように努力すべきなのではないか」
「アパレル販売員の方が接客スキルを高めるべきではないか」
確かに、一般の“お客さま”であればそれでも良い。しかし、一方でサービスを提供する立場になるのであれば、少し違ってくる。
“お客さま”の立場で、自社の商品やサービスのレベルを評価できるスキルをつけるのは、とても大切なことである。
それを可能にするために、もっとも近道なのが、日常の生活のなかで自分がお客さまとして触れているサービスを評価すること、これが“お客さま力”を鍛えるということだ。
その姿勢で、買い物したり、サービスを受けたりすれば、これまでと違った景色が見えてくる。
これこそが「お客さまとの約束」をつくるスタートになる。