■スランプだ!
「業績が上がらない……」
「最近どうもうまくいかない……」
「なんだか空回っている気がする……」
あなたの周りにこのような部署や同僚・部下はいませんか?
そんなとき、皆様はどのようにマネジメントしていますでしょうか。
■「期待」→「成果」
「ピグマリオン効果」という言葉をご存知でしょうか。
教育心理学の用語で、60年代にアメリカで実験が行われ、提唱されている理論です。簡単に言うと、教師が生徒に対して抱く期待が実際に良い結果(成績)を導くという現象です。
実験では、ある学校の生徒達に知能テストを行い、その中から無作為に数名の生徒を選んで、「今後成績が伸びることを期待できる生徒リスト」を作り担任の教師に渡します。無作為に選んでいますので、このテストやリストにはまったく根拠はありません。(リストの中には、成績の芳しくない生徒も混ざっていたことでしょう…。)
しかし、このリストを見た教師により、「成績が伸びる」と思って指導された生徒達の成績は実際に伸びるという実験結果が出るのです。
成績が上がっていく理由は、
【1】教師が期待を抱く生徒には熱心に指導する
【2】生徒にも期待が伝わり意識することで
少なからず良い方向へ努力すると考えられます。
人は期待されると、成果が上がるという、良い循環を作ることができるのです。(驚いたことに言葉の通じないマウスを使った実験でも同様の結果が出るそうです。これも非常に考えさせられます。)
興味深いのは、これが「どのような人であろうと」ということです。
つまり、素質や素養、実績にかかわらず、「期待」が良い成果を生むのです。素質や素養、実績があるから期待するというのが一般的な人間心理ですから、非常に逆説的です。
■「失望」→「失態」という悪循環
実は、期待と成果の関係には「ゴーレム効果」という逆の現象もあります。
教師や上司が「期待しないこと」により、生徒や部下の成績が下がるということも実証されているのです。
冒頭の質問に戻りましょう。
部署や同僚・部下の成績が良くないとき、皆様はどのようにマネジメントしていますか?
部下のできていないところを見つけ、できていないところを指摘し、できていない要因を考え、できていないところをモニタリングし、できるようになるまで意識させる……。
このような感じでしょうか。
確かにKPIを設定し、管理することは組織で目的達成の為には重要です。
しかし、このように「できていないところ」だけに焦点を当てたマネジメントでは、メンバーはゴーレム効果に囚われてしまうかもしれません。
■スイッチング・ウィン・バック
仕事で成果が出せるかどうかは、
【1】成功がイメージできるかどうか
【2】イメージどおりに行動できるかどうかによります。
ゴーレム効果に囚われてしまっている人は、
「自分が成功するイメージが明確に描けない」、
あるいは「自分が失敗するイメージに囚われてしまっている」とも言えます。
恐ろしいことに、多くのビジネスマンとお話していると、自覚なくこの状態に陥ってしまっている人が多いなぁと感じます。
上司、リーダーとしては、行動論、スキル論、テクニック論だけではなく、まずは何が当事者を縛ってしまっているのか……という制約に気がつき、打破してもらうかを考えることが重要です。
スポーツ選手は競技で失敗した時、この失敗を引きずらないように次の試合までに自分なりの儀式で心のスイッチを切り替えると言います。このスイッチングができないと、いわゆる「スランプ」という状態に陥ります。優秀なトレーナーをつけ、人より練習量をこなしているにもかかわらず、成績が上がらないのはこのスイッチングがうまくいかない、ゴーレム効果に囚われていることが原因の一つです。
人の精神は否応なく環境に依存します。それが、たとえどんなに内燃型の人でも、です。そして上司、リーダーは非常に影響力の強い環境要因なのです。
上司、リーダーは部署・チームのモチベーションとアクションが共にスイッチングするような環境を如何に作れるか?
ここにかかっていると言えるのではないでしょうか。
まずは成功をイメージできるような環境を作り、行動論、スキル論、テクニック論はその後に……というマネジメントが良いのではないでしょうか。