2004年に原田泳幸氏が代表取締役に就任されて以来、マクドナルドは劇的なV字回復、そして成長を実現している。
当時約3800億円だった売上は、およそ5300億円と約1500億円もの増加を果たしているのだけでも驚きだが、その間に店舗数は500店ほど減らしている。つまり、不採算店を整理しながらも、1店舗あたりの生産性を大きく向上させながらの成長というわけだ。
これまでの約8年間で、なんと6回もの値上げを断行している。
ハンバーガーの値段を、65円、80円、59円と短期間で変更させて、迷走する価格戦略などと揶揄され、マクドナルドのブランドも地に落ちた感のあった時期を振り返ると、ブランドイメージも見事に立て直したといって良いだろう。
確かに、六本木や表参道、あるいは二子玉川などで展開されている新しいタイプの店舗に行ってみると、これまでとは一新して、ゆったりくつろげるカフェのような店舗に変わってきている。
原田氏のコメントは極めてシンプルだが、それでいて奥の深さを感じるものだ。
まずは、「うまい」、「はやい」、というファーストフード業態としての価値を追求する、ということで、2004年2月に就任したその年末までに「MFY(メイド・フォー・ユー)」の全店導入を終わらせている。
このMFYは、注文を受けてから商品を作るという新しい調理システムで、複雑なオペレーションに対応するのが難しいことを理由に導入が遅れていたものだ。
しかしながら、作り置きが「まずい」と感じた原田氏は、全店導入すれば設備投資として100億円かかる状況を考慮しながらも、トップとしてスピーディーに意思決定した。
その後も、「100円マック」、「100円コーヒー」、「メガマック」、「ビッグアメリカキャンペーン」、「24時間営業の強化」、「ドライブスルーシステム導入」等々の企画を次々に打ち出しながらマクドナルドの成長を牽引してきたわけだ。
その根底にあるのは、「どうやって新しいお客さまに来ていただけるようにするか」、「どうやってリピーターのお客さまに高頻度で来ていただけるようにするか」、これを徹底的に考え抜くというスタンスだ。
また、変革を止めないために必要なことは「業績を上げること」だ、と断言する。
これまでの躍進を象徴する場面があった。
マクドナルドでは、お客さまの注文を受ける時間を「OT(オーダーテイク)タイム」と呼んでいる。全国の優秀社員として表彰されたAさん(20歳の女性)がメンバーとのミーティングでこう語りかける。
「私とBさんはOTタイム早い方だけど、工夫すればもっと早くできるよね。みんなも同じだよ。お客さまがスピーディーに意思決定できるように上手に提案していこうね」
そして、いざ現場に戻ると、レジ、商品受け渡し、ドライブスルー対応、と様々な役割をサポートしながら、「ポテトSの量が少し多いよ」などとスタッフに注意を促す。
そして店長に「これまでのOTタイム平均何秒ですか?」と確認、店長から「38秒」という答が返ってくると、レジのスタッフに「今、38秒。30秒目標でいこう。あと8秒」と声を掛ける。
こんな風に現場が動いている会社はやはり強い。
原田氏も言う。「マクドナルドを支えているのは、全国に約17万人いる従業員の皆さん。従業員が満足して働ける環境だからこそ、お客さま満足が実現する」
「デフレだから厳しい」、「人口が減少するから市場も縮小する」。
確かにそうとも言えるが、だから自分の会社も成長しないと思い込んでしまっていないだろうか。
すでに成熟期に入っている外食市場において、マクドナルドほどの規模をもっていても飛躍的成長を遂げているというこの事実は、大変学ぶべき点が多い。