先日、コオロギの研究をしている大学の先生の話を聞きました。
生まれてから「集団の中で育てたコオロギ」と「1匹だけで育てたコオロギ」との違いについてお話されていました。
「集団の中で育てたコオロギ」同士を戦わせると一瞬にして勝負が決し、負けたコオロギは勝ったコオロギに背を向けて逃げ出します。勝ったコオロギもそれ以上何もしません。一方、「集団の中で育てたコオロギ」と「1匹だけで育てたコオロギ」を戦わせ、「1匹だけで育てたコオロギ」が勝った場合、負けた「集団の中で育てたコオロギ」は先ほど同様に背を向けて逃げ出すのですが、勝った
「1匹だけで育てたコオロギ」はそれを執拗に追い回し、傷つけ、最終的に食べてしまう・・・というものでした。
詳細についてはここでは述べませんが、この話を聞いたとき、最近ニュースで取り上げられる「キレる子供たち」の事件に通ずるものがあるように思いました。また、最近コンサルティング現場で感じさせられることの多くなった「コミュニケーション」についても、考えさせられました。
インターネットの普及により、世の中非常に便利になったと皆様もお感じのことでしょう。楽天が運営するようなマッチングサイトや、ミクシィに代表されるSNSの存在など、公私ともにコミュニケーションを取る手法は大きく変わってきました。
我々は人と接することなく、様々なことを実現できるようになりました。その一方で、現実の世界でリアルにコミュニケーションを取る場面がどんどん減っていっているのではないでしょうか?
皆さんも、特に周りの若い社員のコミュニケーション力について、疑問を感じるご経験をされたことがあるのではないでしょうか?向かい合わせのデスクに座っているのに「今、お時間よろしいですか?」とメールが届いたり、クレーム発生した際の報告も第一報がメールで届く・・・などなど、お付き合い先の企業で聞かされる話は、年々エスカレートしているように感じます。
しかし、「コミュニケーション力」に疑問を感じる対象は、何も若い世代に限ったことではありません。
仕事柄、異業種交流会や受講したセミナー後の懇親会に参加し、経営者の方とお話をすることが多いのですが、自らコミュニケーション取ったり、他の方と関係を深めることなく、壁際に立っておられる経営者の方が、以前と違ってここ最近良く見られます。こうした場合、継続的な参加を促す異業種交流会を催し、参加者に関係を深めてもらおうと思っても、その自主性に任せていると参加者が下降の一途をたどるというのが一般的です。
また先月1ヶ月間かけて、IT系企業・士業事務所を中心に約140社の若いTOPの方(全員初対面でした)とお会いし、会社を設立された経緯や業務内容、サービスの詳細などについて1人1人お話をお聞きする機会がありました。しかし、技術や知識の説明にしたり、競合他社との違いがわからないサービス説明が多く、また数日経つと顔が思い出せないといった、全体として印象に残らない商談をされる方が多く、さらには、アポイントを取りながら時間になっても現れず、何日かしてメールをして来られる方が2社もあり、大変驚かされました。技術・知識や説明力はもちろんですが、多くの方がその前提となる「この人は、(他社と違って)こんなサービスを提供している会社の社長だ。信頼できそうだ。」という印象を与える(信頼関係を築く)コミュニケーションを、約1時間の席で取れないわけです。
新規顧客獲得の営業では、「1対1になるまで(買ってくれそうな顧客を見つけて1対1で話せる状況に持ち込むまで)」が最も難しいと考えていますが、今回のようにリスクを背負って独立創業(開業)されたTOPの方であってもコミュニケーションが取れない状況では、若い営業マンの方も含めて、「1対1になってから」ビジネスの話に持ち込む前に、商談の前提となる相手との信頼関係を築く「いかに商談相手とコミュニケーションを取るか」について、今まで以上に戦略を練ることが必要な時代になっているのではないでしょうか?
例えば、先述しました異業種交流会に参加するとしても、その場限りの単なる名刺交換に終わってしまわない、仕掛けのなされた(容易にコミュニケーションが取れる)環境を選択していく必要があります。それは、言うなれば学生時代の学祭やクラブ活動のように、参加するメンバーが「1つの目的や目標に向けて何をするかを話し合う」といった環境です。
そのような「少し懐かしい」感じのする「ハイテクではない」環境も、これからも皆様にご提供していきたいと思います。
(この記事は2008年5月17日に初掲載されたものです。)