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新興国中間層

東南アジア新興国では欧米系のマーケットリサーチ会社が消費者動向調査で高いプレゼンスを発揮している。先進国で売れている製品と新興国中間層で売れている製品とでは、価格も品質も異なる。先進国企業が先進国市場向けに輸出をするうえでは、

当該企業の論点は、

【1】これから取り組もうという市場の市場規模
【2】当該市場における競合のプレゼンス

であるが、先進国企業が新興国市場向けに輸出をする上では、

【1】まず自社の製品が、これから取り組もうという市場でそもそも受け入れられる可能性があるか、
【2】そして受け入れられるためには、何を変えなければならないか、
ということがまず論点となる。

欧米系のマーケットリサーチ会社は現地の消費者モニターに対して定量的・定性的に調査することで、これから新興国市場に取り組もうという企業に対して、新興国市場の消費者ニーズを知りたいという先進国企業のニーズを満たしている。定量的調査ではオンラインリサーチ、アンケート、インタビューなどが用いられ、定性的調査では、デプスインタビューやフォーカス・グループ・インタビューが用いられている。

新興国市場で、P&G、ユニリーバ、ネスレ、キンバリークラークなどが高いシェアを保有することができているのは、その世界的に高いブランド力に決して依存することなく、こういった欧米系のマーケットリサーチ会社に委託して現地市場のニーズを把握し、新興国市場に対して最適な製品を最適な価格帯で投入しているからに他ならない。

一方で、日本企業にも、現地市場を知り尽くし、最適な製品を投入することで成功している企業は存在しており、ユニチャーム・マンダム・フマキラーなどはその代表格である。成功している企業に共通している点は、現地市場を知り尽くし、現地市場に対応するために、「自社の製品を変えていること」である。

しかしながら多くの日本企業は、この「自社の製品を変える」ということを、「低価格品を実現して現地市場に投入する」という形で誤ってとらえ、失敗している。そもそも現地にニーズがなければ、価格だけ下げても需要を創出することなどできないことは明らかである。それにも関わらず、まず価格だけ下げて、あるいは価格だけでなく、品質も下げて、日本と同じまたは類似の製品を投入するのである。これは、正直言って、自殺行為としか言いようがない。市場のニーズがあるかのないのか、市場のニーズを作り出すためには、どうしたらよいか、ということを把握する前に、製品を市場に投入することは、欧米ではテストマーケティングと呼ばれる手法である。しかしながら、多くの日本企業が、テストマーケティングではなく、「本格参入」という形で、これを行っている。

アメリカのマーケットリサーチの市場規模は、日本の30倍とも呼ばれている。日本よりも人口が少なく、GDPも低いドイツをとってみても、マーケットリサーチの市場規模は、日本の5倍以上である。これは海外市場に参入するに際しての、危機意識の違いの差を如実にあらわしていると言うことができる。新興国市場でシェアが高い先進国企業ほど、現地市場のことを知り尽くしている。当たり前のことである。

日本でもアセアンビジネスセンターのように、低価格で豊富な消費者データベースに基づく現地市場調査を提供する市場調査会社も誕生してきている。もし自前での市場調査が無理ならば、積極的にこういった企業を活用してでも、現地市場をよく把握してから市場に参入することを十分検討いただきたい。