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中国へのITオフショア・アウトソーシング

先週は、中国のITオフショア・アウトソーシング企業を訪問してきた。
中国はかつて、優秀な人材が豊富で、かつ人件費が安いことから、有望なITオフショア・アウトソーシング先であり、多くのITオフショア・アウトソーシング企業が存在してきた。
しかし、近年の人件費が高騰し、インド・ベトナムといった中国以外にも数字に強く、かつ人件費が安い国が中国の代わりに、ITオフショア・アウトソーシング先として注目を集めるようになってきている。そして、実際に、中国では、多くのITオフショア・アウトソーシング企業が、市場から姿を消している。

今後も中国の人件費上昇は避けられないため、さぞかしアウトソーシングビジネスは厳しいだろうと思って、大手各社を訪問したが、今回訪問した何れの中国のITオフショア・アウトソーシング企業も業績が好調であった。

某社は、アメリカのIBMやシスコシステムズといった大手企業と提携して、中国国内でのサービスを提供している。金融機関向けのシステムに強みを持っているとのこと。立派な本社ビルに入ると、そこには巨大なサーバが置かれている。オフショア企業というよりは、先進的な企業と表現した方がふさわしい。しかし、彼ら曰く、自分達はアウトソーシング企業であり、独自技術も独自コンテンツも保有していないという。
 

某社の仕事が増えている理由が大きく2点ある。一つ目は、中国企業からのシステムの受託が増えていることである。かつては、中国企業は、どの企業も、需要が増えれば、工場をたて、雇用を増やして生産を増やしていた。しかし近年の成長率の鈍化と人件費の高騰により、中国企業にとって効率化のニーズが高まり、システムを導入して効率化をはかろうという企業が多いようである。

二つ目は、外資企業が、従来は、国内でシステム開発するよりも、安くすむという理由で、中国企業にオフショア開発委託をしていたのが、近年は、中国市場にある自社の拠点を活用するために、中国企業にシステム開発委託をするようになっていることである。中国という大きな市場で活用するためのシステムは、最初から、本国の企業ではなく、中国の企業に開拓委託した方が望ましいという理由からである。

この二つの理由に共通しているのが、「中国マーケットを対象としたシステム開発」であるという点である。これは単純なコスト削減のためのアウトソーシングよりも、中国マーケットの現状をより的確にシステムに反映していくための必要性から生じているものである。

中国に存在しているアウトソーシング企業にとっては、今は人件費を抑えることももちろん重要ではあるが、それよりも、今は、優秀な従業員を雇用し、顧客から依頼を受ける多様なテーマに対応できる実力を持つことの方がより重要となってきている。そして、そのように優秀な能力をもった企業は、海外の一流企業と一緒に、中国市場向けのシステムを開発する機会が与えられている。

今後の展望として、そうやって外資と提携することによって実力をつけた中国のITオフショア・アウトソーシング企業が、中国市場向けに独自の展開を図っていくことが考えられる。実際、先ほど言及したIBMやシスコシステムズといった企業と提携しているアウトソーシング企業は、一方で地方政府と一緒に地場密着のシステム開発に取り組んでいる。

中国市場のシステムニーズは莫大である。この市場が今、大きく動き出している。そういった中国市場の動きを知り、かつ、必要な技術と知識を持つ中国のITオフショア・アウトソーシング企業は、今や単なる下請ではなく、重要なプレイヤーと見るべきである。
日本企業は、今後の世界市場展開を考えるにあたって、こういったパートナーを活用して、いかに市場に入り込んでいくか、という選択肢も考えていかなければならない。今回の中国出張では、そのことを痛烈に感じた。