私どもの現場コンサルティングにおきまして、営業関連業務に関するご相談を頂くことが数多くあります。
多くの企業では、一定水準の販売実績を上げたかつての一流営業マンや優秀営業マンが営業責任者に昇格します。人並み以上の売上を上げてきた方がマネジメントをしていくことになっているので、本来は簡単に部下指導ができるはずなのですが、「なぜかうまくいかないのか」ということが、しばしばあります。
ケースとして多く見られるのは、「部下がわからない点がわからないために、指導できない」という現象です。営業マネージャーになる人は、「営業マンは動くことが基本」ということが体に染み付いているために、空気を吸うように当たり前の業務として色々なことを実施しています。そのため特別なことをしている意識がないので、「自分自身の気づき」が部下に必要であることを感じられないことが原因の一つになります。
また、本人としては普通の業務と考えているので、「できない部下が、何がわからないのかがわからない」という可能性もあります。ある程度のキャリアがあって伸び悩んでいる部下がいる場合には、「基本に戻って考えてみろ」と言われることも多いと思いますが、本人としては、基本はできているつもりなので、何が悪いのかがわからず、思い悩んでしまい、むしろ悪くなることさえあります。
このような場合には、「リハビリテーションで歩き方を教える」ようなものだと考えてみましょう。簡単に言うと、業務そのものに対するリハビリテーションが必要な状態なので、歩き方としての基本活動そのものを再確認していくことが重要なのです。他人に歩き方を教えるのは、非常に難しいことです。ケガをしてリハビリをしたご経験のある方は理解できると思いますが、寝たきりが長くつづくと歩き方を忘れてしまいます。この時、介護してくれる人が「まず右足を前に出して、踏みしめたら左足を前に」と指示してもらわないと歩き出すことができません。また、使っていない筋肉が衰えているので、転んでしまうこともありますね。
「当たり前にできるはずのことができない」というのは、このような状態です。
ところが、このような状態の営業マンは「自分が病気をして寝たきりになっている」という自覚が全くありませんので、何が問題なのかがつかめないまま思い悩んでしまうものなのです。
「スランプに陥る」と言う方もおられますが、スランプはもともと力のある人が陥るものであり、基本力がない営業マンは交通事故にあってあるけなくなっているようなものです。彼らの伸び悩みを解決するためには、リハビリテーションのようなものが必要であると考えてください。
部下がわからないポイントを見つけるためには、マネージャーが自分自身の活動を振り返り、実施してきた内容をプロセスに落とし込むことが有効です。優秀な営業マンが特殊な行動を取っているケースは、実はさほど多くはなく、むしろ業務プロセスごとにきちんと仕事を完結させていることの方が多いものです。
そのような場合には本人がその凄みを自覚していないため、周囲にうまく伝えることができません。実際には、同じプロセスであっても取り組みの深さが違うのですが、結果的に一般社員は、「本人の話しを聞くと、自分達と何も変わらないと言っているが、あの人は特殊だ」という印象を持ち、その活動から何かを学び取る意欲を失ってしまいます。自分自身の活動を一般営業マンに理解できるよう「プロセスとして書き出してみる」ことで、営業経験の棚卸ができ、業務として整理されていくものです。書くことが嫌いな方も多いようですが、言葉だけでは正しく伝わらないと考え、自分の経験を書き出していくようにしましょう。
「ベテランの営業プロセスは古い」と感じる部下がいるかもしれませんが、成果の分岐点はほぼ変わりありません。
自信を持って、勘と経験を書き出してみましょう。