今回は、業務改善のポイントについて解説します。
業績の良悪や大小に関わらず、あらゆる企業において、何かしらの業務改善が求められることは、皆さんもご存知の通りです。
パーフェクトな企業組織などは実質上存在せず、仮にある時点において限りなく完璧な状態に近いとしても、その企業に影響を与える市場環境や競合環境などは常に変化し、それにつられて自社の改善は必ず求められるからです。
対して、上述したように企業にとって必要不可欠な業務改善を実行するプロセスが、効果的に稼働しているケースはというと、実は非常に少ないのではないでしょうか。
実際に私がお付き合いしてきたクライアントでは、業務改善プロセスがうまく回らないといった課題が多く見受けられます。
そして、様々な業種業態のクライアントと議論をさせていただいているにも関わらず、対象の違いに関係なく業務改善の論点において共通的に挙がる課題があります。
ここでは、業務改善の課題として多く見受けられるケースを、業務改善プロセスに共通のポイントとして考えてみたいと思います。
見たところ、業務改善の障壁は、大概以下のような流れで発生しています。
①組織目標が上位下達されていない
②組織目標の伝達がなく、現場で組織目標が認知されていない
③組織目標の認識がないため、現場は個々人の目標・課題認識で動く
④現場の個々人の判断が、導出された改善策同士の相互反発を生む
⑤改善策同士の相互反発が業務全体の非効率を発生させる
⑥業務の非効率を結果として捉えたマネージャと、現場の努力に齟齬が出る
⑦マネージャと現場の認識齟齬からモチベーションダウンのスパイラルに入る
⑧低いモチベーションで場当り的・形骸な業務改善論が横行する
つまり、業務改善が停滞する根源は、①組織目標の伝達ができていないというところから来ると考えられます。
そこから⑧までの流れに派生して、モチベーションダウンと場当り的・形骸化の改善停滞スパイラルが進行していきます。
さらに、このスパイラルに対して、マネージャが⑥から介入してモチベーションが足りない、目標認識がないと現場を一方的に叱責することで、さらにマネージャと現場の認識齟齬が拡大していきます。
このようなスパイラルが長く続くと、現場は逃げの一手を取るような風潮になり、つまり、業務改善の障壁となる組織文化が形成されていきます。
また日本では特に、QC活動が広く浸透しており、業務改善というとボトムアップの印象が強いといえます。
しかし、①を前提としないボトムアップの業務改善論では、各論最適が散在することになり、④のところで引っかかる可能性が高いのです。
QCで言えば、このような場合、偶然に改善案同士の相互反発が起きないことを期待するか、QCをアカデミックな活動にポジショニングして、大会で発表することを主ゴールとして実質的な相互反発は許容するというスタンスしかなくなります。
このようにして、業務改善に課題を抱える企業が多い状況が生まれると考えられます。
組織目標の伝達が不十分な業務改善論は、正常に機能しないのです。
このような状況で現場のスキルが足りないといった議論をしても始まりません。
まずは、組織目標を論理的に構成し、それをどのように現場に伝えるかが業務改善プロセスのスタートラインとなります。
(この記事は2008年5月28日に初掲載されたものです。)