前回は「賢い人に共通するマンションの買い方」について、お伝えした。
意外にも(?)多方面から反応があり、マンションに対する関心度の高さをうかがわせた。
特に、「消費マンション」というキーワードについては、ある業界関係者から「今年の業界の流行語大賞モノだよ」と言われ、妙な気分になった。
さて今回は、前回の内容をさらに具体化してみたい。
今すぐマンションを買う予定のない人も、一生賃貸住宅に住む予定の人にも読んでもらいたい。
しかし、買ったばかりの人や、手付金を払ったばかりの人は、「嗚呼!」と後悔することになっては困るので、今回は読まないほうがいいかもしれない。
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では、始めます。
■ “所有”する時代から“使用”する時代へ
いつごろからだろうか? 7~8年くらい前から、レンタル使用、シェア使用というスタイルが広まり始めた。
かつては所有することがステイタスだった車。車がないと生活に支障をきたす地方都市は当然として、都市部に住む多くの人々が車を所有していた。
しかし、「持っていないと、それほど不自由なのだろうか? ほんとに買う必要あるの?」と疑問を抱く人々が増え始めた。
それまでビジネスやリゾート地ぐらいでしか利用していなかったレンタカーが日常生活の中へ浸透し始めた。
また、マンション単位やコインパーキングでのカーシェアリングも一般化してきた。
■ 小さな志向の変化はあるが、住宅はまだ“所有”する時代
背景にあるのは、よく言われているような、所得水準が下がったという理由だけではなく、
(むしろこちらのほうが大きいと思うのだが)車を持つことがステイタスでなくなりつつあるのだ。
高額商品に対する消費者の志向は、“所有する”から“使用する”に移行している。
古くは、着物がこれに該当する。「めったに着ないのだから、必要な時にレンタルで十分だ」と。
最近では、高級バックや宝石などの高級アクセサリーも同様の傾向にあるようだ。
高級商品の志向の変化についてここまで述べてきたが、おそらく、多くの人々がイメージする一生の内で購入する最も高額な商品は住宅だろう。
では、住宅では“所有”から“使用”への移行は進んでいるのだろうか?
具体的には、自己所有住宅(一戸建て・マンションなど)に住む人が減り、賃貸物件(マンション・アパート、公営住宅など)に住む人が増えたのだろうか?
応えは否だ。『統計データでは増加傾向にあると言えるのだが、“所有”から“使用”への志向の変化とは言えない』状況だ。
単身世帯用の賃貸住宅が増え、ファミリータイプの賃貸住宅はそれほど大きな変化は見られない。
賃貸住宅入居者の増加理由として、高齢単身者の増加、未婚者の増加が主たるものと言える。
もちろん、少なからず志向の変化は見られるが、先に述べた例のように大きな変化ではないだろう。
日本人は、今も変わらず住宅を“所有”しようとする欲求は強いのだと思う。
昔から人々は住宅を「“夢”のマイホーム」と言った。そして大半の人々は“夢”で終わらせずマイホームを手に入れていた。
今でも、マイホームを自らの“城”と言う人は多い。
住処・城・基地…、住宅をこのように呼び、所有するステイタスを存分に謳歌しているのだ。
■ 値段がガタ落ちする“消費マンション”とガタ落ちしない“資産マンション”の違いとは
前回書いたように、一般的に分譲マンションは購入してから10年もすると、大きく資産が目減りしてしまう。
実際によく聞く話を2つ。(体験者から直接聞いた話)
新築物件を購入し、数ヵ月しか生活しなかった(使わなかった)マンションを何らかの理由で手放さなくなってしまった。
売却するために、不動産売買仲介業者に売出し価格の査定をしてもらうと、なんと購入金額の75%くらいの値段しか付かなかったというのだ。
一度使用すると、たとえ数ヵ月しか使用していなくても、新築時価格の3/4の価格になってしまうのだ。これは、大げさな話ではなく、数字の差はあれども一般的な話だ。
一方、こんな話も聞く。
新築物件を購入して半年ほど経過した頃から、仲介業者から「現在お住まいの物件をお売りになる気はありませんか? そのマンションの購入希望者がいるのです。購入金額とだいたい同金額でいかがでしょう。」と言われた。
この2つの話から分かることは、中古物件としての価値は経過年数だけで判断されるものではないということだ。
資産の目減りが大きい物件を“消費マンション”、一方、年数が経過しても値段が下がりにくい物件を“資産マンション”と呼んでいる。
できることなら、購入時から大きく値を下げない物件を買いたいものだ。
■ “資産マンション”に共通する6つのプレミアムポイントとは
では、どのような物件が資産マンションなのか。いくつかの具体的なポイントを挙げる。
(1)駅名プレミアム
首都圏では広尾・青山・表参道・白金・目黒…などの超一等地。
または、私鉄・地下鉄・JRなど路線が交差する駅。人気のある路線なら「その沿線の大半の駅」と言っていい。超一等地でなければ、お手ごろ価格の物件もある。
(2)駅近プレミアム
駅から徒歩10分圏内。ただし、チラシなどに「徒歩10分」と記載されている場合は、家を出てエレベーターに乗って(なかなか来ないかも…)ホームまで歩いて電車に乗るまでに12~15分くらいかかると思った方がいい。
湾岸地域ではないタワーマンションの多くは駅隣接物件が多く、さらに人気が出る。
(3)文教地区プレミアム
近隣に高校・大学があること。こうした地域は文教地域と呼ばれる。
いろいろな飲食店やお店があり、学生が行き来して街に活気がある。その学校と気持ちの一体化が図れる。特に首都圏でこの傾向が強い。
(4)学校区プレミアム
近隣にエリアナンバーワンの進学率を誇る公立中学・高校があること。特に公立中学・高校志向が強い関西地域で特にプレミアム率が高い。
(5)公園・神社・お寺プレミアム
近隣に大きな公園・神社・お寺などがあること。木々が生い茂り、環境が良いことは言うまでもない。
散歩・運動などが手軽にでき、健康志向の高まりに合致する。
さらに、たいていの場合、こうした場所は、商業施設やマンションなどに生まれ変わることが少ないという安心感もある。
(6)タワープレミアム・低層プレミアム
湾岸地域ではない高層マンションは利便性に優れていることが多い。
また、多くの世帯が住むことから、割り算算出する管理費や修繕積立金が割安である。
一方、低層マンションは管理費・修繕積立金は割高であるが、一住戸あたりの割り当て土地面積が広く、同じマンションの住人とのコミュニティも作りやすい。低層地域のため住環境も良い。
すべてとは言わない。これらの項目のいくつかが当てはまっていれば、年数が経っていても価格が下がりにくい“資産マンション”ではないかと思う。
一方、一つも当てはまらないマンションは“消費マンション”である可能性が高い。
さて、今回はこのあたりで終えようと思うが、実は、今回のプラスのプレミアムではなく、“逆プレミアム”と言っていい要因が存在する。
次回に詳しく、具体的にお伝えしていこうと思う。
(この記事は2011/11/28に初掲載されたものです。)
(出典:ダイヤモンド・オンライン)