前回は「事業戦略での策定内容」について、戦略のフレームワークと戦略の基本方針、および事業構造の「タテ」(=サプライチェーン)と「ヨコ」(=ターゲティングと4P)のうち、「タテ」の面についてご紹介しました。今回は「ヨコ」についての概説を行いたいと思います。
「ヨコ」とはすなわち自社の商品やサービスを販売するための市場ターゲットを決め、そのターゲットに対し製品、価格、販売、プロモーションの各戦略を定めていくことに他なりません。事業領域を明確にすることにより、有限である自社の経営リソースを集中投下することがねらいです。
私が数々の企業をサポートした経験上、事業領域決定の際に最も重要だと考えることは、「制約条件にとらわれない」ことにあります。企業や部門規模が大きくなればなるほど、この制約条件にとらわれてしまい、作業仮説(無意識のうちに自身の所属する社会の因習などに縛られた思考法に陥ること)に陥りがちになる傾向があります。
「B2B以外のビジネスは経験がないのでB2Cはターゲットとしては考えられない。そもそもコンシューマをターゲットとした場合、顧客サポートはどの部署が負荷を負うのか」といった具合です。組織の中で生きるビジネスマンとしては当然の思考法ですが、これを続けていては差別化戦略もコストリーダーシップ戦略もおぼつきません。また、例で挙げたような業務改善や人と組織のマネジメントといった経営課題は、事業戦略ではなく、以前お伝えした「実行戦略」の範疇となるからです。
さて、ターゲティングを行う場合には、もちろんその前提条件として市場をセグメントする必要があります。コンシューマ市場を例にとって考えてみると、次のようなものが考えられます。
「地理的変数」:地域、気候、人口密度など
「人口動態変数」:年齢、性別、職業、所得など
「心理的変数」:ライフスタイル(スポーツ好き、エコロジー志向など)など
「行動変数」:求めるベネフィット(経済性、機能性、デザイン性など)など
一方、ビジネス市場であれば以下のような切り口が考えられます。
「業種」
「業態」
「地域性」
「企業規模」:年商、従業員数、拠点数など
「株式公開」:上場の有無など
「企業特性」:オーナー系企業か否かなど
コンシューマ市場であれ、ビジネス市場であれ、セグメントを行う際にはできるだけ「セグメントについての測定可能性」「セグメントのランク付け」「ビジネス成立規模」「アクセス可能性」を心がけることが肝要です。いずれの切り口もセグメントをなるべく定量的・定性的に測定し、ビジネスの有益性やリスクヘッジの可能性を判断する材料になるからです。
たとえば「セグメントの測定可能性」では、当該市場セグメントの市場規模と購買力が測定できるか否か、「セグメントのランク付け」では、セグメントごとの成長性、ライバルプレイヤーとの想定される競合状況、参入障壁の高さ、自社の強みとの整合性などのパラメータから判断される魅力あるセグメントの順位付けといった具合です。
このようにしてターゲットとするセグメントを想定する一方で、自社および他社の現在の事業ポジションを明らかにすることによって、ターゲティングの正当性を検証していくことになります。ここまできて、はじめて4Pの各戦略に落とし込んでいくことができるのです。
(この記事は2008年8月16日に初掲載されたものです。)