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事業戦略構築の手順(1)[マーケティング戦略・営業戦略]

事業戦略を実現させるフレームワークとして、考えなければならないことの一つに、「事業戦略での策定内容」があります。事業戦略の策定内容と手順につきまして、今回と私が担当する次の回の2回に分けて解説を進めてまいります。

事業戦略は全社や部門が共通の価値観を持ち、経営資源を集中することにより最大効果を挙げるという点において、企業や部門にとってなくてはならない「肝」になるものです。言葉だけの「お客様第一主義」といったお題目のようなものでは何の意味もありません。

戦略を構築する際には、前提として、
■他社と比べて優位性があること
■その優位性はある程度の参入障壁があり、他社が真似をしようとしても一定期間を要すること(つまり時間的にも優位であること)
が必要です。

そもそも戦略には4つの基本方針しかありません。
(1)【対広範囲顧客層】コストリーダーシップ戦略
(2)【対広範囲顧客層】(他社との)差別化戦略
(3)【対狭範囲顧客層】集中コストリーダーシップ戦略
(4)【対狭範囲顧客層】集中差別化戦略

これらの中から自社の特性にあったもの、つまり自社の強みを活かしたものを方針として選択します。ここで注意していただきたいのは、「コストリーダーシップ戦略」というものは「低価格戦略」とは限らないということです。ここでいう「コストリーダーシップ」は、スケールメリット(規模の経済性)により低い原価率が享受できるということなのです。したがって原則的にはナンバーワン企業以外はこの部分で争うことはできません。逆に「低価格戦略」は「差別化戦略」のひとつの選択肢にもなり得るということができます。

多くの企業の場合、「差別化戦略」か「集中差別化戦略」を選択することになるはずです。先に述べた戦略の2つの前提条件と自社の強みを考慮した上で、どこを差別化の武器にするかを考えなければなりません。

コストリーダーシップにせよ差別化にせよ、そのポイントを明確にするためには「ヨコ」と「タテ」のフレームを持つ必要があります。「ヨコ」とは事業の広がりとその構成を意味します。具体的には市場ターゲットと、4P(製品戦略、価格戦略、販売戦略、プロモーション戦略)を明らかにすることです。
これらは一般的にはマーケティング戦略と呼ばれますが、このマーケティング戦略の策定方法につきましては、私の担当する次号にお話しさせていただくことにします。
これに対し、「タテ」とはビジネスモデルを構築することにより、収益やコスト構造を規定することがねらいです。具体的にはバリューチェーンやサプライチェーンを明確にします。バリューチェーンとは自社内での収益・コストモデルを決定するもので、価値連鎖を意味します。例えばあるメーカーの場合では、「研究開発」→「調達」→「製造」→「物流」→「マーケティング」→「サービス」→「販売」といったバリューチェーンになりますが、それぞれの機能が戦略立案単位となります。「物流」を例にとってみると、エリアカバー性、迅速性、小口商品対応度合などが差別化のポイントとして候補にあがり、物流戦略を構築していくことになるのです。
一方サプライチェーンとは、最終顧客に商品やサービスが届くまでの流れを指します。生産から最終消費者に届くまでにどれだけのプレーヤーが存在し、自社がどの部分を供給しているのかを判断するフレームです。業界全体の事業フレームの再構築を検討する際などに便利です。かつては文具を事業所に納入しているのは有力文具卸と相場が決まっていましたが、アスクルの台頭により、勢力地図が大きく変わってきました。アスクルのビジネスモデルは、サプライチェーンの検討抜きにはできなかったと思われます。

事業戦略構築の際には、戦略の2つの前提条件をしっかり押さえた上で、基本方針を決定し、「ヨコ」と「タテ」の両面から検討する、という手順で進める必要があることをご理解いただけたでしょうか。
それでは次回は「ヨコ」、つまり「マーケティング戦略の策定手順」について、お話しさせていただきます。
(この記事は2008年8月15日に初掲載されたものです。)