MENU
×

MENU

お問い合わせ マイページ

サマータイムは消費を押し上げる救世主!? 節電で生まれる“アーリータイム市場”とは何か

夏の電力使用制限が7月1日から始まりました。
関東・東北地方だけでなく、全国的に節電を意識した生活スタイル、
“節電ワークスタイル”へと変化しそうです。

節電ワークスタイルの中でもっとも注目されている取り組みが、
サマータイムの導入でしょう。
一部の企業では、すでにサマータイムを本格的に導入し始めています。
私も先日、ある雑誌のインタビューでサマータイムについてお話させていただきました。

世間の関心が高まっているサマータイム。
これによって生まれる新しい市場とはどんなものでしょうか。
今回は、サマータイムが生み出すさまざまな市場への効果について考えてみたいと思います。

■ 「サマータイム」とは何か

まず、「サマータイム制度」とは、どんなものなのでしょうか。

これは夏の間、太陽が出ている時間が他の季節に比べて長いことを利用して、
現行の時間に1時間加えた時間帯で生活をしようという考え方です。
簡単に言えば、時計を1時間進めて昼の時間を長くするという制度です。

サマータイムは欧米を中心に世界の約70ヵ国で実施されているといいます。
日本では夏時間、サマータイムという言い方が一般的ですが、
英語では、Daylight Saving Time(DST)と呼ばれることが多いようです。

この制度を導入することにより活動時間が長くなり、これまでできなかったことに時間を使え、
余暇を楽しむことができ、さらに照明や冷房の省エネ対策としても期待されています。

また今回は、「節電」という明確な目標があるため、もう1つの取り組みにも注目が集まっています。
それが「平日ホリデー」です。
休日を土・日から平日の月・火などに変更するというものです。

このように、各企業は既に節電ワークスタイルを本格的に進め始めています。

今のところサマータイムや平日ホリデーなどの節電ワークスタイルを導入すると発表している(一部公式発表ではないものも含む)企業は以下のようになります。
400_2

■ サマータイムによる市場規模は1兆円超? 朝型生活で生まれる“アーリータイム市場”

2005年に第一生命経済研究所が発表したレポートでは、内閣府「国民経済計算」数値をもとに、
あらゆるモノ・サービスでの需要増を足しこんで、サマータイム制導入効果を求めており、
その規模を1兆2000億と算定しています。
日常の生活時間が1時間前倒しになるということは、余暇時間が1時間延びることになります。
その結果、各家計において1兆円程度の消費が増えるだろうというのです。
もちろんこれは日本のすべての人々がサマータイムを同時に進めた場合の数値ですから1つの参考値ではあります。

今回、日本ではスーパークールビズの一環としてサマータイムを提言していますが、
国として公式に推奨しているわけではありません。
したがって、実際にはここまで大きな市場とはならず、私の試算では約500~1000億程度の市場規模になると考えています。

しかし、これまでなかった市場が新たに生まれることを考えれば、企業としてこれを見逃すわけにはいきません。

確かに各種アンケートなどをとると、サマータイムには反対意見が多かったり、
残業できなくなることに不満を持つ社員もいるようです。
それでも、確実に言えることが1つあります。

完全に朝型の仕事スタイルをとっている私の経験側からすれば、「朝のほうが仕事はダンゼンはかどる」ということです。
つまり、今回をきっかけに、朝の時間価値に気づく人が増えると考えています。

私はこれを“アーリータイム市場”と呼んでいます。
アーリータイム市場とは、サマータイムにより新しく生まれる早い時間帯の市場のことです。

また、休みが土・日から平日にシフトする人が増えることから、”平日ホリデー市場”も生まれます。

この新しく生まれる空白マーケットにはどんなチャンスがあるのでしょうか。
アーリータイム市場、平日ホリデー市場、そしてアーリータイム商品・サービスなどについてまとめていきたいと思います。

■朝食市場、スクール需要、百貨店の来客増…。アーリータイム市場の持つ価値

朝は出社時間が1時間早くなり、夕方は退社時間が1時間早くなる。
これがサマータイムによるワークスタイルの変化です。

つまり、朝8時の出社が、朝7時の出社になるため、今までよりも早く仕事を始める人が増えます。
早く仕事を始める人が増えることによって、そこに新しい市場が生まれると考えられます。

まず、朝食市場です。
これからは5~7時までの朝食マーケットが伸びていくことでしょう。
喫茶店やファストフード店、ファミレスは朝5時頃から店を開ければ、アサイチ客を取り込めるはずです。

コンビニでも朝食需要が一層高まることでしょう。
おにぎりやサンドイッチ、それにドリンクをセットにした朝食セットや、味噌汁などのスープ類、
また、朝食用の新しいメニューなども注目されるでしょう。

また夕方、会社を出る時間が早くなる人も増えます。
サマータイム導入企業では、これまで終業が夕方5時だった人は、4時頃には帰宅することになります。

その時間に仕事を終えて、すぐに家に帰ればいいのですが、家に帰りたくない人も多いはず。
そんな人たちは新しくできた夕方の時間を満喫しようとします。
そこで生まれるのが、いわゆる“アフター4市場”です。

そんな動きを捉えて、居酒屋ではアーリータイムが動きます。
5時前の入店は割引などのサービスがどんどん増えていくことでしょう。
居酒屋チェーン運営のコロワイドは関東地方で展開する系列の「北海道」40店舗で、
夕方の開店を1時間早い午後4時に繰り上げるなどの対応を始めています。
8月31日までは、午後4時~6時に来店したお客様に対し、
アルコールの一部を半額にするなどのサービスで集客増を仕掛け始めました。

また、語学学校や専門学校などのスクール需要も増えるでしょう。
語学学校のGABAは7月をめどに、仕事帰りの会社員らを対象とした「夏の短期集中プラン」を始めるそうです。
朝が早くなったことで朝早い時間帯から語学教室を始めたところもあります。

スポーツジム、ジョギング、マラソン、自転車などのスポーツ人口も増えていくことでしょう。

都内のOLの声でよく聞くのは、「これでゆっくりと百貨店で買い物ができる」というもの。
今までは閉店間際に駆け込みで行っていたのが、これからはゆっくりと洋服を買いまわれるということで、
洋服や雑貨などへの消費もプラスになることが考えられます。
(参照:「ブランディングナビ」 3.11 歴史的な価値観大転換の日

つまり、朝と夜のアーリータイムは、確実に新たな消費を盛り上げると言えるのです。

■ 「アーリータイムに対応できない人」向けの商品・サービスにも注目

また、私はこんなビジネスチャンスもあると思っています。

サマータイムが導入され、始業時間が早まったとはいえ、
朝早く起きるのに慣れていない人たちが圧倒的に多いという現実があります。
これまで朝型で仕事をしてきた人はいいのですが、夜型で仕事をしてきた人にとっては、
始業が1時間早まるというのはかなりきついはずです。
ですから、朝起きるため、また、日中起きていられるようにするためのツールや場所、サービスが流行ると私は考えています。

目覚まし時計は、あらためて売れることでしょう。
スマートフォンのアプリでも目覚ましアプリなどが開発されてくるはずです。
「○○さんの声で朝の目覚め」をというようなアプリは受けるかもしれません。

また、お昼までにお腹が空いてしまう人も増えるでしょう。
そんな人のために、早めのお昼タイムができ、10時過ぎからランチをとれるようにする店もでてくるかもしれません。
昼のピークタイムが前倒しされることが考えられます。

さらに、朝が早いので、お昼を過ぎると眠くなる人も多くなりそうです。
そんな人のために、休憩用レンタルスペースやカラオケボックス、マンガ喫茶のような時間消費型サービスの利用が増えることでしょう。
適度に睡眠をとって、それから働くというのも1つの働き方になるかもしれません。
それに伴って、目薬や目を冷やすアイスノンのようなものも売れるでしょう。

こうした動きが本格化すると、今までの空白マーケットでお金を使う人が増えますので、消費効果は確実にあると言えます。

しかし一方では飲食店などは、夜が早くなったり、翌朝が早いので終電前に確実に帰るなどをする人が増える影響で、
今までとれていた市場がなくなる、もしくは減るということも考えられます。
同じ理由で、タクシー会社や深夜バスなどの需要は減るかもしれません。
飲食店は二次会、三次会で来店するお客様が減る可能性がありますので、
新しい販促策を考えておかねばならないでしょう。

いずれにしても新しい空白マーケットが世の中に生まれてくるのは、市場活性化の切り口にはなります。
私はこの機会こそ、余暇時間の充実に励むというよりも、これまでできなかった自身のスキルアップなどの勉強や、
人脈づくり、また家庭や地域でのソーシャル活動などに時間を使っていただくのがいいのではないかと考えています。

飲みに行くのはいつでもできますが、勉強や地域でのソーシャル活動などは、時間をしっかりとらなければできません。
しかし、通常どおりの仕事生活をしている限りは、こうした活動には時間を割けないのも事実です。

今回の節電ワークスタイルは、このような、これまでやりたかったけどできなかった活動に時間を使うことだと思います。
新しいワークスタイルへの変化とともに、自分の新しいライフスタイルを創り出すきっかけにしていただくことが必要です。
企業もそこで働く人も、この機会を上手に活かしてほしいと思っています。

(出典:ダイヤモンド・オンライン