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エコカー補助金、エコポイント終了後の各業界は? 不確定要素多き2011年に生き残る企業の条件

■ 実感なき景気回復の2002~07年、リーマンショック後の不況に喘いだ08、09年

「『景気が良い』って言われてるけど、何だか実感湧かないよね」

それこそが、戦後最大の“いざなぎ景気”を超えたと言われた2002年~07年の好景気における多くの国民の本音でした。わずか3年前の話なので覚えている方は多いだろうと思います。

社会ではお金が回っているようだけど、自分の財布には入ってこない。こうした状況は、「格差社会」という言葉でも表現され、問題視されはじめることとなりました。

それと同時に「消費の二極化」というキーワードが出てきたのもこの時期です。「良いものは高くても売れる」あるいは「安くなければ売れない」といった現象で、多様化する消費者の価値観が顕在化しました。「BMWに乗って、100円ショップで買い物をする」という状況も、実際に起こっていることであり、変化する価値観に対応できる企業こそが勝ち残れる企業だといわれました。

その後、米国のサブプライムローン問題から不況へと突入し、08年9月のリーマンショックを境に企業の業績は大きく悪化。09年には、かつては2兆円の営業利益を上げたトヨタ自動車でさえ赤字転落するという事態に陥りました。そして、日本で長期政権を守り続けてきた自民党から民主党への政権交代が実現し、現在では景気回復が大きなテーマだという認識をほとんどの国民がもっているわけです。

さて、今年もわずか2ヵ月足らずとなってきましたが、この2010年はいったいどんな年だったと言えるのでしょうか。

■ 家電量販店、外食チェーン…今年目立った“絶好調”企業の強み

電機メーカー系列の販売店網の業績が絶好調だと聞き、実際に調べてみたところ、空前の猛暑による影響で、10年上期の国内エアコン出荷台数は515万台(15.8%増)、出荷金額4234億円(21.3%増)と過去最高を記録していました。

しかも、家電はエアコンだけにとどまらず、冷蔵庫2439億円(8.9%増)、炊飯器501億円(11.6%増)など、エコポイントの追い風もあり、白物家電全体で1兆1863億円(11.3%増)という結果となっています。

白物家電以外にも、地デジへの切り替えリミットが来年に迫っているテレビなども好調に推移しました。その影響もあり大手家電チェーンのヤマダ電機は、10年上期売上高1兆137億7300万円(8.2%増)、営業利益470億9200万円(87.5%増)という前年を大きく上回る業績。同業のケーズHDにおいても、10年上期売上高3567億3200万円(19.1%増)、営業利益155億6900万円(97.7%増)と市場の追い風を受けて業績を上げている状況がわかります。

また、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、先日発表した10年度上半期(4~9月)の連結決算は、売上高1797億200万円(2.9%増)、営業利益277億2200万円(74.6%増)、税引き後利益160億6900万円(68.0%増)と、特に利益ベースでは開園25周年の08年度を上回る実績を上げたようです。

利益面に関しては、新しいアトラクションなどの大きな設備投資がなく、減価償却費が落ちているなどの要因もあるようですが、入園者数は1295万人と08年度に次ぐ数字になりました。例年よりも雨の日が少なかったということもありますが、“気持ちの良い非日常体験”を得られること、それをベースにしながら企画されるテーマ性の高いイベントで顧客を楽しませて離さない経営が徹底されていることが、好業績を支えているのでしょう。

不景気になると「近場で安くすむ」という理由から、国内需要が高まるという話が出てきますし、もちろんそういうニーズもあるとは思います。しかし、東京ディズニーランドにおいては、「ディズニーランド“で”いい」ではなくて「ディズニーランド“が”いい」という顧客を増やし続けているところに、他が追随できない強さがあるのではないでしょうか。

外食では日本マクドナルドホールディングスが、10年1~9月期の業績を発表しており、売上高2461億700万円(11.1%減)、営業利益222億1600万円(25.8%増)となっています。

戦略的閉店を推進していることから売上は減少していますが、フランチャイズ店舗を含めた全店売上高は4088億4300万円(2.9%増)と過去最高を更新、営業店舗数を9.4%減少させているなかでの実績であり、好調をキープしています。

戦略的閉店の一方で、24時間営業、ドライブスルー、新世代デザイン店舗、を推進したり、新しいチキンメニューを投入したりという、きめ細かいマーケティングが8月の月間最高売上高を更新するなどの結果に表れています。

02年の赤字転落から復活してきたプロセスの中で、「スピード」を顧客に約束するというポイントを軸においていることが、さまざまな施策をかつてのようにブレさせない要因になっているのではないでしょうか。

その他、以前当連載でも取り上げたアップル、宝島社、すき家などの企業も今年度目立った業績を上げています。

■ 「エコカー補助金終了」の影響を受ける自動車業界

一方で、非常に気になるのが自動車業界です。

「10月新車販売:トヨタ24%減、マツダ47%減」

1週間前、このニュースが新聞紙上を賑わせていました。原因はご存知の通りエコカー補助金が9月7日に終了してしまったことで、駆け込み需要の反動が10月に出てしまったとのこと。トヨタ、マツダ以外も、ホンダ29%減、日産24%減、と各メーカーともに大きな影響を受けたようです。

日本国内の自動車販売台数は、まさしくリーマンショックのタイミングで大きく落ち込み、その対策として講じられたエコカー補助金が功を奏して大きく回復基調にのっていたところでした。

自動車産業は、鉄鋼や化学といった業界も関わってきますし、非常に裾野の広い、いわば国内景気に大きな影響を及ぼす産業であることは言うまでもありません。

■ “景気”という概念に振り回されない顧客目線のマーケティングを

リーマンショックを機に起きた不振によって、米国の需要が大きく減少し、その影響が輸出で利益を上げる日本企業を直撃。雇用不安、給料の減少といった連鎖が起き、日本国内の需要も一気に冷え込んでいきました。その後、米国の景気がやや落ち着きを取り戻すとともに日本企業の業績も回復基調に戻り、さらにエコカー補助金という対策で消費を刺激してきました。

しかし国内需要は、“事件”や“対策”で前倒しになったり、後ろ倒しになったりはするものの、長い目でみると安定しています。

例えば、自動車の国内需要は以下のグラフの通りであり、戦後最大の好景気である02年~07年でも大きく伸びていることはありません。

日本の国内自動車販売不振の理由として、「若者のクルマ離れ」といった話が出てくることもあります。それはひとつの見方として否定するものではありません。しかしさらに大きな市場の流れとして考えるべきなのは、日本の人口が頭打ちであることです。

しかも、自動車を購入するターゲットである20歳~64歳の人口にフォーカスするとすでに1999年をピークに減少し続けているのです。

よって、自動車業界では、買い替えのサイクルが早まらない限り、国内需要は増えません。冒頭の家電業界も構造としては同様でしょう。飲食業界においても、衣料品業界においても、大きな流れは変わりません。

実は11年の景気は、米国、中国との絡みから不確定要素が多く、何ともいえないというのが本音です。しかし、国内需要をターゲットにしている企業は、世の中の「景気が良い」「景気が悪い」といった論調に左右されることなく、

「どのお客さまと、どう付き合っていきたいのか」
「そのために、何をお客さまに約束するのか」

という軸を決めた上で、きめ細かいマーケティング活動を実践し続けることこそが大切です。それを先ほども挙げたいくつかの好調企業が示してくれています。

個人的には、冒頭でも触れたように、本当に“日本の好景気”は02年~07年のような状況でしか成立しないのか否かを明らかにしながら、来年のコンサルティング活動をしていきたいと考えています。