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差別化戦略と具現化戦略フレーム[マーケティング戦略・営業戦略]

今号は「差別化戦略と具現化戦略フレーム」についてご紹介します。

基本戦略は「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「コスト集中戦略」「差別化集中戦略」のいずれかしかないことは既に何度かご紹介してきました。
しかしここで「あれ?」と思った方はいらっしゃいませんか?
「『差別化』とは果たしてどのようなものを指すのだろうか?」という命題について疑問に感じられたことはないでしょうか。ポーターによれば他者との比較優位性を大きく「コスト」か「差別化」と規定しているわけですから、「差別化」とは「コスト以外の差別化」と考えることができます。と、ここまでは問題がないのですが、「それでは一体『コスト以外の差別化』とは何だろう?
」という新たな疑問にぶつかることになります。
そもそも戦略とは、1.他社との競争優位性を有しており、2.それが一定期間他者が真似することができない、ことが条件になります。一般的に「差別化」というと多くのクライアント企業では、これを「高付加価値」と置き換え、例えば「価格はA社より高いけれどアフターサポートを充実させる」というような打ち手が多いように思いますが、これはむしろオペレーション的な戦闘レベルの問題です。つまり上記1.を満足しておらず、すぐにライバルに真似をされる可能性が高いという点において戦略論に昇華していないのです。

それでは1.および2.を満足させる差別化戦略とはどのようなものでしょう?これについて私は長年の経験から「製品系戦略に軸足を置いた差別化戦略」と「販売系戦略に軸足を置いた差別化戦略」に大別して考えることにしています。「製品系戦略」とは製品戦略とコスト戦略を指し、「販売系戦略」とは販
売戦略とプロモーション戦略を指します。今は仮にこれらをそれぞれ「製品系差別化戦略」と「販売系差別化戦略」と呼ぶことにします。
まず「製品系差別化戦略」ですが、これは販売やプロモーションよりも製品や低コストモデルが得意な企業が取るべき差別化戦略です。ソニーなどがこのグループに入るでしょうか。この場合、製品そのものに高い付加価値をつけることや高い技術力で他社を圧倒する、低いコストを実現するための生産ラインを確保するなどの打ち手が差別化としての内容になるのです。

一方、「販売系差別化戦略」は販売やプロモーションに強みを持つ会社が採用する戦略になります。ナショナルなどが該当することになると思います。販売戦略を例にとってみますと、販売戦略は直販を含めたチャネル戦略になりますので、チャネルの長さ・幅・動機付けという点で他社との差別化を図ります。
より広い層をターゲットにする必要があればチャネルの長さ、幅のいずれかを大きくする必要があるでしょうし、逆に特定セグメントがターゲットならば、ターゲットとする層にのみリーチするチャネルの幅に絞ることで、チャネルコストを低く抑えることが考えられるのです。このような方策が販売系差別化戦略での差別化要素として挙げられます。

差別化を安易に「高付加価値」と置き換え、しかもそれをオペレーションレベルの施策でお茶を濁すようなことをしていては企業の健全な発展はないとさえいえるのではないでしょうか。
(この記事は2008年5月27日に初掲載されたものです。)