前回、問題解決のステップとして【問題の抽出・整理】→【中核問題の発見】→【解決策の立案】→【解決策の有効性の検証】→【実行計画策定】という5つのステップがあり、もっとも重要な最初の2つのステップまでのお話をさせていただきました。その話のなかで、『理論上は中核問題を解決すれば、それにともなって発生している問題は発生しないことになるので、そこに注力すればよい。』という表現をしていましたが、それに対していくつかのご質問をいただきましたので、補足させていただきたいと思います。
なぜ中核問題にフォーカスした方が良いのかというと、中核問題とはそもそもその企業を動かしている方針の部分に行き着くケースが非常に多いのです。例えば、「組織としての全体最適を図っていきながら利益体質を作り上げる」といった方針を掲げているにもかかわらず、評価制度をみると「部分最適の追求を奨励するような目標管理の仕組みで動かそうとしている」といったことはよくあるケースです。このようにちぐはぐな状態になっている場合、現場においては明らかに行動レベルの“対立”が生じることになります。行動レベルで両立できない“対立”の結果生じている問題が中核問題として導き出されるため、この中核問題を解決しない限り、その他の問題が抜本的に解決することなどあり得ないのです。そのような理由から、問題解決におけるもっとも重要な2つのステップとして位置づけているわけです。
企業がよく陥りがちな事例をひとつ紹介しましょう。
ある販売会社の事業部に対して、『事業戦略の構築と実行計画の策定』というテーマでコンサルティングさせていただいたときのことです。[現状分析]のフェーズで現状の問題点を整理するためにロジックツリーを作成した結果、中核問題として出てきたのは“販売実績に偏りすぎた目標管理制度”でした。ということは、事業部の問題というよりも全社的な問題ということになります。
よって、「社長および取締役の方々に認識していただいて、対策を講じましょう。このままでは事業部の戦略や実行計画にも多大な影響を及ぼしますよ。」という提案をしたのですが、プロジェクトメンバーの方々の意見は違いました。「全社的な問題にまで言及するのは本プロジェクトの主旨から外れるし、変更して2年程度の評価制度を今の段階で変更するように説得するのは難しいと思います。あくまでも事業部内で解決できる部分にフォーカスして進めましょう。」ということです。組織内の“しがらみ”の存在は理解できますが、このような意思決定が正しいとは到底思えません。コンサルタントを使わずに社内プロジェクトを推進している企業も多いので、是非とも強い意志をもって取り組んでいただきたいと思います。
結局、このケースでは、役員会議の場をかりた中間報告会を設定してもらい、コンサルタントの立場で私が提言させていただくカタチをとらせていただきました。ロジックツリーを見た役員の方々ほとんどが問題の重要性を認識し、すぐに目標管理制度見直しのプロジェクトを発足させることになったのです。中核問題にフォーカスすべき理由と、それを全社的な認識として共有化するためのロジックツリーの有効性についてご理解いただけたでしょうか?
それでは、次回あらためて残りの3ステップについての解説をしたいと思います。