今回は、流通業の現状について考えてみたいと思います。
流通業では、ボーナス商戦の真っ最中でもあり、自分の業種・取り扱い商品へ吸引していく仕掛けに血眼になる時期になりました。
外は暑いですが、反面、ガソリン高騰など、生活インフラコストが上昇し、消費マインドは冷えこんでいます。
製造現場では、原材料の高騰の影響で値上げをせざるを得ない状況にあります、モノが売れていない小売業では店頭価格を簡単に上げるわけにはいかない状況にあります。
6月の全国百貨店売上高は前年同月比7.6%減(既存店ベース)の5,880億円と4カ月連続のマイナス(日本百貨店協会)になっています。なかでも衣料品が14.0%減と3年4カ月ぶりに二ケタ減となりました。
日本チェーンストア協会が6月22日に発表した全国スーパー売上高(既存店ベース)は、前年同月比0.9%減の1兆814億円で、3カ月連続で前年実績を下回っています。大手スーパーや専門店チェーンでは、一人当たりの買い上げ点数が前年比で約一割近く落ち込み、エンドユーザーの生活防衛志向が強まっています。
生活密着度が高い商品ほど、エンドユーザーは値上げに敏感に反応することは食品スーパーの買上点数減少から判断できます。このような状況に陥ると、販売現場では「安くしないと売れない」と考えることが多いため、小売業のバイヤーは値上げを受け入れにくくなる、という環境になります。
このような環境下で、チェーン店で本当に考えなければならないことは、自社の顧客が何を望んでいるのかを再確認していくことなのではないでしょうか。顧客視点や顧客志向が重要であると言われて久しいですが、モノが売れない状況になると、このことを見失いがちです。
買上点数が減少するということは、購入する接点での表現・告知がうまく機能していないのではないかと、商売の原点を振り返るようにしてみましょう。
店頭においては、お客様評価が決まる一瞬である MOT(Moment of Truth)Point を意識した取り組みを徹底していくことで、買上点数の減少に歯止めをかけられるケースがたくさんあります。
MOT(真実の瞬間と訳されています)は、スウェーデンの経営コンサルタントのリチャード・ノーマン(Richard Normann)が提唱したもので、有名な事例にスカンジナビア航空(SAS)があります。
そのコンセプトを取り入れて経営再建に取り組んだヤン・カールソン(Jan Carlzon)の著書は、広く知られております。
このような考え方は、サービス業のものと捉えられがちですが、顧客が意思決定・評価を決めるポイントを見極めることは、改善の第一歩であると考えられます。
価格政策は、極めて重要だからこそ、安くする前にやるべきことをやりきる体質が重要ではないでしょうか。
価格を下げるのは、ある意味容易ですが、一旦下げた価格を上げるのは極めて困難です。厳しい環境だからこそ、現在最適に振り回されないようにするための強い意志が必要だとお考えください。