先日、CCCの増田宗昭社長に弊社の経営戦略セミナーにおいて講演をしていただきました。その際に、いろいろとお話をさせていただき、なるほどなあと感心したことがありました。
同社では今、代官山にあるような蔦屋書店を全国展開し始めています。本が売れない時代に、本を主役にした新しい本屋を展開している。今ではT-SITEという業態が世の中にでたから、「それはいいよね」となっていますが、よく考えたらもっとも厳しい書店という業態の改革にチャレンジしているわけです。
毎日2店舗ずつ本屋がなくなっていく世の中。それでも本屋にチャレンジしています。なぜそれができるのか。それは、増田さんの中に「こうすればきっと本屋はもっとおもしろいし、儲けることもできるはず」という強い信念というか執念があるからだと私は思いました。
代官山だからできるわけではなく、世の中の人が「本」というコンテンツには特別の思いを持っています。確かに買わなくなっているけれど、本は知的でアカデミックな部分も多い。知識が集積したものであり、それを1000円くらいで手に入れることができる魔法のハコのような店。それが書店なのです。
しかし、今までのような切り口ではお客様が飽きてしまって買いたくなくなっている。本に飽きたのではなく、本の売り方、本しか提案していない店に飽きているのです。だからこそ増田さんは新しい分類を考えて、本屋自体をライフスタイルの切り口から編集し直したのです。
これが結果的にお客様に支持されるT-SITEという業態開発につながっていきました。成熟した業態にも必ずチャンスがあります。人口減少の世の中では成熟業態はすべて×のような印象ですが、まったくそうではありません。
いかにお客様にライフスタイルを提案できるか。ここにこだわることで新しい需要を掘り起こすことが可能なのです。イノベーションの原点に気づかされました。増田さんのように「まずは自分がおもしろいことをやる」という考え方がイノベーションを生み出すのです。