2012年はどのような年になるのか。
さまざまなメディアが予測をしています。
私は、予測はできませんので、コンサルティングの現場で起きている事実から、
2012年の大きな流れ、特に消費トレンドについて「こうなるだろうな」と想像してみました。
その内容はあくまでも来年のイベントカレンダーに則ったもので、
そのカレンダーを参考に、どのようなトレンドが起こりそうかを考えることにしています。
2011年のまとめレポートとして、2012年イベントカレンダーをまとめてみます。
■ 2011年を振り返る
2011年に私がテレビや新聞、雑誌などで取材を受けた内容を整理しますと、
大きく以下のような流れを感じます。キーワードは「安・賢・遅」です。
1. 復刻ブームから見える「安心・安全」欲求と「安さ」を求める低価格志向の高まり
2011年は菓子・飲料業界、アパレル業界、玩具業界などあらゆる業界で「復刻版」がブームとなりました。
発売されてから20~30年という区切りを迎えた商品が多くありました。
ブームとなったのは、懐かしさ以上に、昔、購入したことがある商品やブランドという安心感を感じることができたことが大きな理由です。
3.11以降、家族、つながり、絆、縁といったものを重要視する流れがありますが、それもすべて不安を感じる人々が安心を求めているからと言えます。
2012~13年は世界的に激変の年となるでしょう。
復刻版のような、確実に安心感を得られるものはさらに人気を得ることでしょう。
併せて、引き続きデフレが続く日本では、安さを求める志向も同時に高くなるはずです。
LCCのような低価格の航空路線が本格的にスタートし、TPPへの参加是非が問われる2012年は、あらためてさまざまな業界で価格の見直しに入ることになるでしょう。
安心・安全とともに、安さをキーワードにした新業態が生まれるのが2012年だと思います。
2. 「賢く見える」消費スタイルがますます強まる
リサイクル業界はますます細分化し、最近では「シェア消費」(みんなで共同利用する)も増えてきました。
必ずしもモノを所有する必要はなく、それを使用することに価値を見出し始めた生活者が増えています。
また節電の影響から、ダラダラと残業するのではなく、効率よく働いて、空いた時間を自己研鑽にあてるという人も増加中です。
いかに「賢く見える」か。これがポイントのようです。
3. 人の集まる街、集客する店のキーワードは「ゆったり」
2010~11年は銀座や有楽町など、都心のスピード感のある街が注目されました。
2012年は「スカイツリー」がオープンすることもあり、ちょっとローカルな街や東京・下町のような混沌とした雰囲気を持つ街がトレンドを作ることは間違いありません。
また「街コン」のような田舎の「団体合コン」などが最盛期を迎えるのも2012年でしょう。
全国各地で街コンによって地域を盛り上げようというイベントが、春にかけてかなりの頻度で開催されるはずです。
その一方で、ひとりカラオケのような「おひとりさま市場」も拡大していきます。
「ゆったり、ゆっくり、みんなで、のんびり」、時には「おひとりさま」が時代を作りそうです。
■ 2012年イベントカレンダー
さて、前述のような流れが2012年は出てきそうなのですが、2012年は実はさまざまなイベントが行われる年でもあるのです。
それを時系列ではなく、テーマ別に整理するとトレンドが分かってきます。
■ 時系列に見てみる
次に上記内容のトピックスを時系列で眺めてみます。
【3月】
◇ LCC「ピーチ」が運行開始
⇒低価格戦略がさまざまな場面で注目される
◇ 東日本大震災から1年
⇒震災1年で東北応援セール、ほか
◇ 京都マラソン2012開催
⇒東京、大阪、神戸などに続く本気のオヤジランナーが激増(ハードランナー向けシューズを含めてランニングウェアなどの売上がさらに増加。ランステーション、ランコーチなどのサービス市場も活発化)
【4月】
◇ 中学校のダンス必修化
⇒ダンススクール生徒激増。先生も増える。avexダンスネーションの親子参加がさらに増加。
【5月】
◇ 韓国で「2012年麗水国際博覧会」開幕
◇ 金環日食観測
⇒5/21に向けてグラスなど金環食グッズ、ツアー、イベントが流行
◇ 墨田区に「スカイツリー」がオープン
⇒スカイツリーブーム。スカイツリー詣で、スカイツリーマンション、スカイツリー菓子、スカイツリーTシャツ、スカイツリー婚、スカイツリーウォーキングなどスカイツリー大注目
◇ 「渋谷ヒカリエ」がオープン
⇒久しぶりの渋谷ブームくるか?
◇ 「三井アウトレットパーク木更津金田」開業
⇒新たなアウトレットブーム到来
【6月】
◇ 2014 FIFAワールドカップ アジア最終予選
◇「新東名高速道路(御殿場JCT~三ヶ日JTC)」が開通
【7月】
◇ 「再生可能エネルギー特別措置法」施行
◇ ロンドンオリンピック開幕
⇒オリンピックが終了する直後からスポーツシューズの販売量激増。
【8月】
◇ LCC「エアアジア・ジャパン」運行開始
⇒LCCが出揃い、航空運賃が劇的に安くなり、海外への渡航も来年は増加するだろう
【11月】
◇ アメリカ次期大統領選
⇒アメリカ大統領選の半年前くらいから世界の経済がさまざまな影響を受けることが考えられる。2011年の今はその影響の始まり。これからひと波乱、ふた波乱ある。EU問題、中国問題にどうアメリカが対応していくか。アメリカ国内の景気は?
【12月】
◇ マヤ暦、12月21日で地球滅亡説!?
◇ 京都議定書規定の08年から5年間の温室効果ガス年平均排出量削減目標期限。
このように2012年は、スポーツから政治、経済、スカイツリーのような新しいビル、商業施設オープンなど、大きなイベントが続く1年になります。久しぶりに明るい年になる期待が持てます。ではこのような流れから大きなトレンドとしてはどのようなことが言えるのでしょうか。
■ ウチからソトへ
私が感じている一番大きなトレンドは、「ウチからソトへ」です。インドアからアウトドアへと人は出ていくようになると思います。
3.11以前から、日本では「巣籠り消費」と言われ、家の外に出ず、家の中で消費するという傾向が見られました。
消費のダウンサイジングが続く中で、これは引き続き見られる現象でしょう。
しかし、3.11でさらに巣籠り状態になった結果、それに耐えられなくなり始めた消費者が増えているのです。
「もうじっとしていられない。できれば外にでて、ストレスを発散したい」というニーズが高まり始めているのです。
それを私は「ウチからソト」と呼んでいます。
スポーツやアウトドアがひとつのブームとなることは間違いないのですが、“ソト”というのはそれだけを指しているのではありません。
外食を控えていたのが“ソト”で食事をとるようになったり、下着・肌着やワンマイルウェア(家から1マイルの範囲内で着る服)ばかり買わず、少しお洒落にもお金を使ったりする、という消費活動が活発化することも含みます。
また、“ソト”との交流を積極的にするようになり、街コンだけでなく、小さなイベントやパーティーなども復活してきそうです。
盛り場も2012年は盛り上がりそうな雰囲気がありますし、
すでに2011年のクリスマス前後の東京の繁華街は、忘年会やパーティーのお客さんでごった返していました。
2011年までは“ウチ”の時代でしたが、2012年は“ソト”に意識と行動が向かいます。
企業としてはそのような嗜好を持つ消費者に対して、何を提案できるかが問われます。
これまでのマーケティングを切り替えて、お客様を“ソト”で楽しませる企画や商品、サービスを開発していく必要があります。
2012年は新しい時代の幕開けになりそうです。引き続き消費・商品のトレンドに注目していきましょう。
(出典:ダイヤモンド・オンライン)