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捨てること

ドイツにあるディスカウントストアALDIは元祖ディスカウントストアと呼ばれている。第二次世界大戦後、日本と同様敗戦国だったドイツには貧しい人が多く、そういった人たちのために、どうやったら物資を安く提供することができるだろうか考えた末、ALDIが誕生した。今やALDIは世界小売業のトップ10に入る売上規模を誇り、ALDIの創業を引きついた兄弟は世界長者番付上位にランクインをしている。

ALDI店舗に入るとまずその安さに驚く。ワインが2ユーロ台で販売されており、パンやチョコレートなども他のスーパーの半額くらいである。そしてほとんどがPB。生鮮食品も肉類も格安である。さすがディスカウントストアと言ってしまえば、それまでだが、このALDIには他の店舗と違う、いくつかの際立った特徴がある。

まず、このALDI、圧倒的に品揃えが少ない。日本では、週に1度、必要なものを買い揃えに行こうとスーパーマーケットに行く主婦が多いと思うが、そういう買い物には、全く適さない。必要なものが揃わないのである。

次に、店舗の中が一方通行である。通りをはさんだ向こう側の棚まで、商品を取りに行こうとすると、ぐるっと回らなければならない。入り口も1箇所、出口の1箇所。正直言って、不便である。そして、店舗が狭く、レジには行列が出来ている。一旦買い物をしてレジに並んだら、待つしかない。さらに他のスーパーと比べて、閉店時間が早い。

つまり、この売上高世界トップ10に入るこのスーパーマーケットは、徹底的に不便なのである。しかし安い。安さを徹底するために、不便を犠牲している。これが、このALDIの最大のポイントであると言える。

その一方で、面白いことにALDIは、ALDI以外のスーパーマ-ケットの近くに立地している。ALDIがあるから他のスーパーマーケットがやってくるのか、それともALDIが戦略的に他のスーパーマーケットの近くに店舗を立地させているのか、その理由はわからないが、相互に競合する商品が並べられているとしても、補完的な機能を持っている。ALDIを目的に来店した顧客は、ALDIで揃わない商品を、隣接するスーパーマーケットで購入している。どちらかの駐車場が一杯だったとしても、空いている方の店舗の駐車場を利用している。アメリカでは、ホールフーズマーケットのような高級店と、ウォルマートのようなディスカウントストアは立地が全く異なり客層も異なっていたのと対照的である。
特定の分野、つまり安さで圧倒的一番を目指すために、他の事を捨てている。そして捨てたことを、何らかの方法で、他のリソースを使って補っている。イオンやセブン&アイをも超える売上をあげているALDIを視察して、「捨てること」の重要性を感じた。