地域密着型生活支援サービスを事業のコンセプトに掲げ、物流面から地域の小売店の活性化や、生活者の利便性向上をサポートしているブラウニー(株)という企業が広島にあります。
ブラウニー(株)では、105円の料金で、生活者が登録店舗で買い物した商品を3時間以内に自宅まで届ける「お届けサービス」を展開しています。
広島では「ゆめタウン広島」の食品売り場や、食品スーパー、商店街の店、生花店など、東京においては、ドラッグストアチェーンの「ぱぱす」がブラウニー(株)のサービスを導入しており、客単価のアップや売上増につながっています。
ブラウニー(株)のお届けサービスは、独自のシステムによって登録店舗で宅配の申し込みがあると、その情報が最も近い場所にいるドライバーへ入るようになっています。連絡を受けたドライバーは、その店舗で商品をピックアップし、そのまま顧客の元へ届ける仕組みです。登録店舗のバックヤードがそのまま集配拠点となっていて、新たに基地を持たないことでコストの削減をしています。
料金を105円にしている理由ですが、様々な価格で実験したところ、宅配を利用する件数が210円だと105円の場合に比べて半減し、315円では6割減になったそうです。反対に105円以下の設定でも検証したそうですが、客単価が低くなり、登録店舗や地域代理店にとってメリットが少ないことが分かり、105円に行き着いたそうです。
ドラッグストアのぱぱすでは、宅配を利用しない買い物客の平均単価が1,000円強なのに対して、買い物したものを家まで運んでくれるなら、まとめ買いしようという心理から、宅配利用客の平均客単価は5,000円~6,000円と4~5倍高く、週末に実施することが多いポイント5倍などの販促日には宅配の利用が集中するそうです。
近くに築地市場があり、観光地であると同時にビジネス街と住宅地の顔を持つ、東京築地に店を構える「ぱぱす築地店」は、近くにある程度の規模がある食品スーパーがない立地です。同店は、1日約2,000人の来店があり、宅配は平均的に1日30件ほどの利用があるそうです。週末などにチラシと連動してポイント8倍デーを実施したところ、1日の宅配件数が140件に跳ね上がった事例もあるとのこと。
宅配ではミネラルウォーターやトイレットペーパー、紙おむつなど、重くてかさばるものが売れ筋となりますが、商品1個からでも宅配可能なブラウニー(株)の場合、2駅先の銀座へ出かける際、買い物袋を提げていきたくないと、食器用スポンジや茶葉などの重くないものを買って、宅配を頼む人もいるようです。
ぱぱす側は、導入コストはほとんどかからず、宅配売上に対して一定の割合を手数料としてブラウニー(株)に支払うため、宅配の稼動件数が少なくても手数料が発生するロスがない点でもメリットを感じられているようです。もちろん、宅配を受け付けるカウンタースペース(1坪程度)や受付の際にスタッフの対応が必要になりますが、1年を経て宅配を行っている店舗では売上前年比は伸びており、売上に占める宅配売上の割合は5%を上回ってきているようで、宅配が地域の顧客を囲い込む戦略的なサービスになっていることは間違いないと言える事例です。
スーパーやドラッグストアの配送は、昼から夕方にかけてピークを迎えます。またブラウニー専用の車輌ではなく、ステッカーを貼るだけで対応可能なため、既存のBtoB配送を午前中に行っている車輌を昼からの仕事に活用すると大きな相乗効果を得ることが可能です。さらには構築した自社の配送網を活用し、見守りサービスなどの高齢者向けビジネスを展開するなど新たなビジネスへのチャンスにもつながります。大きな可能性のある事業だと言えるでしょう。
【編集後記】
小売店からの宅配という配送網を活用し、地域密着型の生活支援サービスを実施しているブラウニー(株)ですが、このお届けサービスの成功のポイントは二つで、利用しやすい105円という配達料金設定、そして買った時点から3時間以内の配送という点です。15:00までの注文は18:00までにお届けなど、時間を固定してしまうと宅配利用客が伸び悩みます。価格とスピードがお客様のお客様から必要とされる大きな要因でしょう。