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間違いだらけの“目標管理”

本コラムでは下記3部の構成で間違いだらけの“目標管理”について述べたいと思う。

①“目的”と“目標”について考える!

「ウチの会社は目標管理で評価してるんだけど、いまいちうまくいってないんですよ。」
よくよく考えると、うまくいってますという話を聞くことが殆ど無いといっても過言ではない“目標管理”だが、とは言っても、そもそもはあのドラッカーが提唱した考え方でもあり、マネジメントの本質部分においては間違っていないのだろうと思う。
経営面で活用されるメソッドに関しては、目標管理の他にも経営品質賞やISO、バランススコアカードなど様々なものがあり、「うまくいってる」と思うレベルになるまでには相応の期間を要するものだ。

しかしながら、「よし、やってみよう」と導入した企業にとってみれば、早く成果を上げたいと考えるのは当然のことであり、だからこそ拙速にその成果を要求するがあまり「なかなかうまくいかない」だったり「この制度はウチの会社には合わない」といった判断になってしまう。

これは非常に残念というか、もったいない話だ。

よって、今回から数回にかけて、よく活用されているメソッドについて押さえるべきポイントを解説していきたいと思う。

ということで、冒頭の“目標管理”だが、その名の通り“目標”に関しては目が向けられているが、こと“目的”という話が放置されているケースが多い。あらためて言うまでもないことだとも思うが、“目的”を果たすための“目標”だ。

「売上目標を○億円にする」
「○件の商品開発をする」
「生産コストを○%削減する」
「新卒採用人数を○名にする」

これらは、その年の“目標”であって、“目的”ではない。
まずは、企業として組織全体の“目的”を明確にしなければならないのだが、それが従業員の腹に落ちる言葉まで落とし込まれていない。
“理念”や“ビジョン”といったカタチで提示されてはいるものの、それと“目標”が全く結びついていないということだ。

だから、現場ではこんなことが起こる。

「“目標”達成しないと評価されないから、達成できそうな“目標”にしておこう。」
「そんな達成できそうもない“目標”にさせられたら、やる気なくなりますよ。」
「そもそも“目標管理”を導入した目的は何なんですか? 給料抑えたいだけでしょう。」

“目的”のはっきりしない“目標”を追いかけ続けると従業員は疲れる。

「今期“目標”を達成して喜べるのはほんの一時で、すぐに来期“目標”に向かって走り始めなければならない。これって、毎年毎年続いていくんですよね…。」
「個人的には“目標”達成したんだけど、他の事業部が全く不調で、結局会社の業績も下がってるからボーナスは期待できないらしいですよ。一体何どういうことなのか…。」

ワールドカップ金メダルという偉業を成し遂げ、その後のロンドン五輪予選も見事に突破した“なでしこジャパン”。
彼女たちの感覚で言うと、金メダルも予選突破も、そのときそのときの“目標”でしかない。
もちろん、達成したときの喜びは大きいと思うが、それを味わえる期間は思いのほか短い。

しかし彼女たちには、「日本女子サッカーをメジャーにする」、「もっと多くの日本の少女たちがサッカーをやろうと思う環境をつくる」、「その少女たちが将来の夢をもてる」、という具体的な“目的”を持っているから、走り続けられるし、高い目標も掲げられる。

“目標管理”の運用の解説で、“目的”に関してはサラっと流すような感じだったり、あるいは触れられてもいないモノもあったりするが、実はもっとも時間をかけなければならないのが、この会社としての“目的”を明確にすることだ。

我々がサポートする際には、「創業原点」や「お客さまとの約束」、「仕事上の感動体験」といったキーワードをもとに進めるプロセスの中で、腹に落ちる“目的”をあぶり出すようにしている。

②制度の“目的化”から脱却する!

“目標管理”制度はそもそも何の為に導入したのか?
この問いかけに答えられなかったり、あるいは通り一遍等のごくごく一般的な答えを返すことしかできない会社が結構多かったりする。

まあ、それも致し方ないことか、なんて思うのは、導入時にそれを引っ張った担当者も異動でいなかったり、そもそも経営者も変わってしまっている、のもよくある話だからだ。

前回も少し触れたが、こういった制度は運用しながら自分の会社にあった方法(つまり導入目的を満たすようなもの)へと改善していくことで組織に馴染んでいくもの。

だから、「ウチにはこの制度は合わない」なんて言ってること自体が少しおかしくて、「この運用方法はウチには無理が生じるから修正しよう」と考えた方がいいだろう。

“目標管理”制度を導入している会社は、大多数が評価制度との連動を図る。
これ自体に大きな問題は無いが、評価と連動させているがために、期初にシート(目標)を記入して、期末にそのシートを確認して評価に活用する、といった運用方法になっている会社が多い。

これがどんな状況を引き起こしているのか?

比較的わかりやすい営業部門を例にとってみよう。
営業だから、数値目標は明確だ。その目標を達成するために実施する方策(キャンペーン等)も記入されている。
既存顧客からどの位の売上を獲得し、新規顧客を開拓する目標も掲げられている。

その為に注力する商品・サービスも当然上がっている。
つまりシートの記入事例として考えても及第点を与えられるレベルに仕上がっている。

しかし、期初のタイミングはそれで良かったはずだが、その感覚のまま(シートの記入内容を見直すことなく)期末までやり続けられるような業界がどの位あるだろうか?

得意先の大手が大きく業績を落としたため、今期の取引が激減する。
期待されていた新商品が全く支持を得られず、既存顧客の離反が増加する。そういった不確実な要素がビジネスにはつきものだ。

もちろん、バブル崩壊やリーマンショックを経験してきた私たちは、業績が環境の変化に大きく左右されてしまうことを理解している。
よって、このようなカタチ(現実とはかけ離れた目標管理シートが運用されてしまっている状況)で、このシートを活用している営業はいないといってもいいだろう。

評価に反映されてしまうという現実もあるから、表向きしっかりと記入はしているものの、所詮は実績数値で評価されると思っているから、内容に関してはもはや見栄えが良いか悪いかの領域だ。

これらは営業に関わらず、どんな部門でも似たり寄ったりの状況を招いている。

これこそが、まさしく「手段の目的化」だ。何らかの目的の為に導入した“目標管理”制度は、その制度をまわすこと自体が目的化して運用されてしまっている。

そもそも“目標管理”は、「自ら目標を設定してそれを実現する」ことで個々の社員のモチベーションを向上させること、作成のプロセスにおいて組織の戦略目標を社員の行動レベルに落とし込むことでその実現を図ること、が重要な目的だ。

それを前提に考えると、作成段階で会社全体の戦略目標が明確に定まっていて、それが各部門の目標にまで落とし込まれていることが不可欠だ。
それをもとに部門長は個々のメンバーと議論をしながら作成されなければならない。

また、年に1~2度の確認ではなく、少なくとも月単位で進捗管理や目標の修正などを実施しながら、組織の目標達成を推進するものでなければならないし、個々人の成長を応援するものでなければならない。

「月単位の管理は別途マネジメントシートがあるから、煩雑になって無理ですよ。」

これまで何度も耳にしてきた言葉だ。複数の部門が自らの役割を果たそうとして、複数の似たような管理システムが混在してしまっている。

「何の為に、何を活用し、何を止めるのか」を決めることが大切である。

③経営企画室の目標とは!

先週の記事を読んだ知人のAさんからメールがきた。

「いつも楽しく読ませてもらってるけど、ちなみに経営企画室の目標って何を設定すればいいの?」

ちなみにAさんは、某薬品メーカーX社の経営企画室長。

これは、非常に悩ましい質問だ…。
というのも、知っている限りの数の経営企画系の部署を考えてみても、その役割や権限、業務内容は千差万別だし、Aさんは知り合いだけどX社に転職してからは仕事をいただいてないのでX社のこともわからない。

仕方がないので、とある飲食チェーンY社で立ち上げに関わった経営企画室を想定しながら質問に答えることにした。ちなみに、このY社が知る限りではもっとも“あるべき経営企画室”に近いと思っている。

主な業務内容は以下の通り。

1. 経営分析レポート作成(月間、四半期、半期、決算)
2. 経営分析数値にもとづく各部門の担当役員、部長、課長への個別ヒアリング
3. 特に課題となる部署に関しては、現場にて事実確認
4. 各部門からの要望を取りまとめて市場動向調査(全国、エリア、県)
5. 競合各社の動向分析
6. 中期経営計画、年度計画に上がっているプランの進捗確認
7. 進行中のプロジェクトの進捗確認

特に重視しているのが、2番、3番、6番だ。

Y社の経営企画室では、分析レポートに出てくる実績数値に対して、その良し悪しの要因をヒアリングし、ヒアリングの内容が本当なのかどうかの事実確認のため現場に出向く。

例えば、「価格競争が厳しくて集客が減少している」という話が出てきたときに、具体的にどの競合がどんな価格で攻めてきているのかを見に行くわけだ。

また、6番の中期経営計画に向けての行動計画は、利益率を向上する部門の効率化(資源を圧縮しながら生産性を担保する等)の動きが進められ、強化部門への資源異動が進んでいるか、といったレポートには表れにくい動きが計画通り進んでいるのかをチェックする。

これらの業務内容を考慮して、組織図上は社長直轄の部門になっている。

Y社と同じような動きをするのであれば、経営的な意思決定を行なう上で役に立つレポートが作成できているかが評価の対象になるだろう。
よって数値目標を設定するとすれば、経営層や幹部層からのお役立ち度を指標化するのも一案だ。

現場に出向いての事実確認が、Y社経営企画室としての強みにもなっているため、経営的課題の抽出数、課題解決による改善効果、なども指標としては悪くない。

以前は、経営企画室主導の下にコスト削減プロジェクトを立ち上げて、店舗の賃料削減、文房具等の備品代の削減、食材仕入れコストの削減に取り組んで、合計数千万円規模のコスト削減を達成したこともある。だから、各部門からは出てこないようなコスト削減額も指標としてあげられる。

Aさんに対しては、これらの回答をまとめて返したところ、

「そんな業務、ウチの部署だと人数が少なくてとても無理だよ。“お役立ち度”は試しにやってみようかな。」

と返信がきたので、Y社の実態をお伝えした。

「Y社は社員3名とパート2名ですよ。要するに他部門をいかに巻き込めるかです。」

Y社の社員3名の経歴は基本的に現場(店舗)出身、よってPCスキル等のリテラシーもかなり怪しいが、各担当役員から現場に至るまで、そのコミュニケーション能力で求められる業務を遂行する。
レポートに関しては殆どパートの2名が作成しているわけだ。

これが「経営企画室に何を求めるのか」について、Y社が出した答である。

(この記事は2019年7月に再度更新しました)


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