昨年の東日本大震災後は、アジアの企業を訪問していると、どの企業も日本人は「brave」だという。ああいった大災害にも関わらず、混乱せずに、相手を思いやる気持ちを忘れていない日本人は、アジアの企業から見ると、憧れと賞賛の対象だったようである。
世界中で日本食ブームである。日本食はおいしいということは、どの日本人も認識している。海外の人々にとって、日本食は、おいしいというだけでなく、ヘルシーであるという。
日本食は、ヘルシーなため、高いお金を払う価値があると考えられているようである。日本の米だけでなく、日本のワインが現在、アジア、特に香港で売れている。中国でフランスやイタリアのワインが売れているということは有名だが、日本のワインは、一部の熱狂的なファンに対して売れているようである。
日本のアパレル生地を海外の有名ブランドが採用している点については、このシリーズでも以前取り上げさせていただいた。日本国内で原料から一貫生産でき、かつ伝統的な職人技術によって製造されたアパレル製品は、高くても購入する価値があることを、海外の一流メーカーが認識している。
三菱航空機がMRJの大型受注をした。場所はエアバスやボーイングも展示する世界最大の航空見本市が開催される英国パプシャー州、受注元は、世界最大のリージョナルエアラインを持つスカイウエスト社である。世界最大のイベントで、世界最大のエアライン会社が、日本の小型旅客機を受注した。MRJの技術および構成部品は、「純日本製」である。
中東・アフリカ・アジア地域で建設が進む海水淡水化プラント。大きく分けて、海水を蒸発させて淡水にする手法と、フィルターでろ過して海水を淡水にする製品があるが、前者ではササクラ社が、後者では東レや日東電工が世界トップシェアを誇っている。
さらに海水をプラントまでくみ上げるポンプでは、荏原、酉島、クボタ、三菱重工が世界のトップシェアを誇っている。海水淡水化プラントにより、砂漠の人々の生活用水と工業用水が供給されている。
日本の工作機械メーカーのシェアは、世界で圧倒的である。リーマンショック後、工作機械の販売台数が中国とドイツに抜かれたが、2010年は再び世界一のポジションを取り戻している。
日本の工作機械は高い。この高い工作機械を買いたいというメーカーが、世界中に存在している。工作機械メーカーのお膝元であるドイツやイタリアには、ヤマザキマザックの機械しか使わないという部品加工メーカーがたくさん存在している。
これらの世界に誇る日本の強みを、認識している日本人の方が、どれくらいいるだろうか? 日本人の作る製品は、消費財であっても、生産財であっても、「本物」なのである。買い手の期待を裏切らない。これが日本製品である。
海外企業が日本企業に求めるもの。それは、「本物であること」。他の国では実現できない品質を日本製品を購入することによって得ることができるのである。
サムスンやTSMCが絶好調な一方で、パナソニックが大苦戦していることが、報道されている。しかしその一方で、パナソニックの白物家電は今売れている。冷蔵庫、冷暖房、洗濯機などの分野では、サムスンの製品よりも圧倒的に品質が良いようである。テレビやパソコンなどデジタル製品では日本は負けても、アナログ製品では、圧倒的な強みを持っている。
サッカーといえば、アディダスやナイキのイメージが強い。サッカーボールといえば、圧倒的にアディダスである。しかし、中東・アフリカで圧倒的に売れているのは、アディダスのボールではなく、日本のミカサのボールである。理由は頑丈だから。蹴っても蹴っても壊れないボール。それがミカサのボールであり、それが、中東・アフリカでは20年以上もトップブランドとして認識されている。
日本企業の強みは何か? それは間違いなく「本物の品質を作り出すことができること」である。そのことを決して見誤ってはならない。安いものづくりをするために海外に進出する限りは、人件費の高騰の問題にかならず突き当たる。新興国は成長し続けている。
「本物」を作り続ける限り、マーケットは広がっている。安いものづくりをつつける限りは、中国からベトナムへ、ベトナムからカンボジアへ、と工場を移転し続けることになるだろう。
どちらがよいだろうか? 日本企業の強みを考える限り、その答えは明白であると思う。