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低価格ハイブリッド

トヨタ自動車に引き続き、ホンダも中国でハイブリッド車を中国企業との合弁で開発することを発表した。私はこの相次ぐ発表には、以下の背景があると考えている。

【1】中国マーケットの規模は東南アジアマーケットとはケタ違い。
今年の中国の自動車販売台数は2000万台を超えることが確実と言われているが、その中でもVWは約400万台、GMは約300万台の販売台数を誇っている。それに対して日系の自動車メーカーの販売台数はいずれも100万台に満たない。日系の自動車メーカーは東南アジアでは高いシェアを誇っているが、東南アジア全体でも自動車販売台数は400万台に満たない。自社の世界シェアを高めるためには中国市場でのシェアをいかに高めていくことが、当面の間は、大きなポイントとなる。

【2】EVよりもハイブリッド
かつてハイブリッド自動車はガソリン車から電気自動車に移行するまでの過渡期の技術であると認識されたこともあったが、今はむしろEVよりも、小型エンジンターボ車とハイブリッド車こそが、未来の自動車の姿であると再び見直され始めている。駆動部におけるEV技術の発展は目覚しいものがあるが、車載技術、例えばエンジンを活用したエアコン技術などは、ガソリン車に置き換わるほどの技術開発にはまだ時間がかかる。走るだけの自動車ならばEVでも十分機能するが、エアコンその他電気系統を起動させようとすると、まだまだEVだけでは機能しない。その点ハイブリッドはEVの機能とガソリン車の機能の優れた点のみを両方活用したすばらしい技術であることが改めて証明されるに至っている。

【3】価格ありきの市場
マーケットとして中国市場を見たとき、まだ一人あたりのGDPが日米欧の10分の1という豊かさである。しかしながら、自動車に関してはすでに富裕層が嗜好品として所有するものではなく、その下の中間層が実用的に所有するものとなっている。いかに幅広い中間層を取り込んでいくかという点が重要なポイントとなる。そのためには、低価格車を実現させなければならない。VWやGMが中国市場で成功している理由は、一つには市場への製品投入が早かったことがあるが、その次には日本車よりも価格が安いことがある。環境意識が高まって来ており、かつガソリン価格が高騰している今、VWやGMと違う領域で日本の自動車メーカーが中国市場に投入できなければ、今後の挽回の芽が摘み取られてしまう可能性がある。そのためには、低価格車の実現が不可欠である。

一方で、中国市場へのハイブリッド車投入で最も気をつけなければならないことが技術の流出である。トヨタの合弁相手である第一汽車、トヨタとホンダの合弁相手である広州汽車、ホンダと日産の合弁相手である東風汽車はいずれも自社ブランドを保有している。これからの企業が日本が誇るハイブリッド技術を身につけた時、中国域外、そしてさらには、おそらく近い将来、中国国内でも、競合関係になる。トヨタやホンダが、中国での合弁生産に踏み切ったのは、たとえ中国企業がハイブリッド技術を身につけたとしても、追いつくことができない次の技術の開発に目処がたったからであることは間違いないだろう。