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勝ち残る会社の人事戦略とは

本コラムでは勝ち残る会社の人事戦略とはというテーマでお話をさせていただきます。

すばり、勝ち残る会社の人事戦略のキーワードは下記の5つとなります。

1.インターナルマーケティングの考えを取り入れる
2.優秀な人材が入り、辞めないための人事マネジメント構築
3.キャリアパスの魅せ方
4.評価制度の課題と活用を明らかにする
5.パフォーマンスを発揮する要因「動機付け・衛星理論」

1.インターナルマーケティングの考えを抑えよう!
一般的なマーケティングの売上方程式では「客数×客単価」となりますが、インターナルマーケティングの考え方では、「売上=社員数×1人当りの生産性」となります。インターナルマーケティングとは、社員を「顧客」のように考えることにより、会社への忠誠心と仕事に誇りを持った社員を通して、高いパフォーマンスを実現し、最終的に会社の利益につなげる様々な取組のことです。

一般的なマーケティングでは、社会情勢の変化や、ターゲット顧客のニーズ変化に対応して、商品・価格・売り方を変えながら最適を追及していきます。対してインターナルマーケティングとは、内部である働き手の意識変化や労働環境の変化に対応して、社員の採用、定着そして最大のパフォーマンスを発揮してもらう仕組みをつくることにあります。合わせて労働法規に対応していく必要も出てきます。

インターナルマーケティングの考え方では、「売上=社員数×1人当りの生産性」となります。つまり、優秀な社員が何人いるかで業績は決まると言う考え方です。勿論、優秀な人材がたくさんいても、「儲かるビジネスモデル」でなければ生産性は上がらず人件費が増えて経営を圧迫するだけなのですが、そもそも「儲かるビジネスモデル」を構築していくのも優秀な人材にほかならないのですから、優秀な人材が業績を決めるという考え方はほぼ全ての会社にあてはまることです。

しかし、実際は多くの会社で、人材が確保できていないのが現実です。ここに来て、この「インターナルマーケティング」の考えは、補完的なものではなく、企業存続を決めるうえで決定的な要素となってきました。業種業態を問わず、人材不足は深刻な問題となっています。特に若い世代の不足は深刻です。これは一時的な現象ではなくこれからも加速していきます。

国立社会保障・人口問題研究所のデータによると2010年~2025年までの15年の間に、個人消費を起こす全人口が約5%減少するのに対して、多くの会社で求められている20歳~44歳の若い労働力人口は約23%も減少すると予測が出ています。労働市場における若年層の需給バランスは完全に逆転したのです。ですから優秀な人材どころか「人手」も不足していきます。

2.優秀な人材が入り、辞めないための人事マネジメント構築を構築しよう!
人事担当者から「当社では、優秀な人財を求めているのではありません。普通の人でいいのです。贅沢は言っていないのですが…それでも人が採れないのです。…」との悲鳴なような嘆きを耳にします。総数が減っているのに輪をかけて、「優秀な人」と「残念な人」の二極化が進み、多くの会社で求めているような「普通の人」も減っているのです。

そのような状況の下で、欲しい人材が採用し、しっかり定着させている企業の採用活動を見ていると、やるべきことがよくわかります。採用活動を「社員を選ぶ(品定め)する場」ではなく、「会社を魅せる場」としてのスタンスに立っているのです。逆に、今まで同じ感覚で、数少ない優秀な人材を見極めて採ろうとしている会社のほとんどは上手くいっていません。当然、会社が欲しくなるような人材はそもそも近くに寄ってこないのです。

しかも折角、優秀な人材またはその資質がある人材を採用しても、残りません。会社における優秀な人材には共通の資質があります。将来の目標(夢)を持っており、その目標を実現させるための努力ができることです。当然のことですが、将来の目標(夢)は会社に依ったものではありません。まさにワークライフバランスのとれた人生設計です。

この特性が会社にとって仇になることがあります。目標(夢)が実現できると思えるから努力をするのですから、目標が実現できないと見切りをつけしまえば、実現できる場所を求めて会社を辞めてしまいます。人材は引く手数多なのですから活躍のいくらでもあるのです。仮に会社に残ったとしても、目標(夢)を諦めてしまったら、既に優秀な人材とは終えず、目の前の損得だけを考えて楽な方へ流されているような、会社から見て残念な人になっています。

そこで優秀な人材が、入っている。辞めない。そして最高のパフォーマンスを発揮する会社にするために、人事マネジメント体制を築いていく必要があるのです。

3.キャリアパスの魅せ方を意識しよう!
頑張れば報われるだけでは、モラルが上がるはずもありません。そこでキャリアパス制度をつくり魅せていく必要があります。キャリアパス制度とは、自分の将来・人生設計をイメージして、この会社で働く目標を示す制度です。当然のことですが、本気でそうなりたいと思えるような魅力的な将来でなければなりませんし、何をどのように頑張れば、キャリアアップができるのか?が具体的にイメージでき、尚且つ、実現出来そうと思えるものでなければなりません。

キャリアパスは、役職制度や等級制度として賃金などの処遇上の区分や、職務権限や責任や、人事や教育等とも密接につながってきます。ですから人事制度の基幹制度ともいえる制度です。

キャリアアップの作成ステップ
まず、キャリアステージごとの役割を明確にする必要があります。一般的にこのステージを等級や役職となります。働く人にとって重要な関心事の一つである賃金や賞与等と結びつけるために、等級や役職ごとの賃金レンジ(=目安の賃金)も決めておきます。次にキャリアアップ(=昇進・昇格)をするための条件として、スキル、経験、実績、人事評価などの基準を決めていきます。ただ、基準を示すだけでは実現イメージは高くなりません。

個人の自主的な努力に委ねるのではなく会社としての教育や、計画的に業務経験を積ませるなどの支援を仕組み化していくことも検討します。最後にキャリアアップのスケジュール化をします。もちろん個々人の能力や態度により差が出てきますが、新卒3年で主任…10年で課長…なども、目指すモデルを示めしていきます。

4.評価制度の課題と活用を明らかにする
一定以上の規模の会社になれば、昇給や賞与などの処遇を決定するうえで不可欠なものであることは間違いないのですが、評価制度でどこまでパフォーマンスが上がるか?は人事に携わる者にとって永遠のテーマです。評価制度には両刃の剣の面もあり、運用を間違えると、パフォーマンスが上がるどころか低下させることもあります。

過度な成果主義を導入して結果、組織が部分最適と現在最適を追及し過ぎて、業績まで悪化してしまった事例も決して少なくありません。もともと人事評価における評価は、短期的な成果に対しておこなうものですから、どうしても現在最適になりがちです。もちろん人事評価だけの問題ではなく企業文化の問題が大きいのですが、最近の不祥事を起こした名門企業を見ていると、現在最適を最優先させる価値観の危うさを痛感します。

人事評価をより意味あるものにするために抑えておくことの一つに「意識すること」と「評価項目にすること」を混同しないことです。特に定量的な評価においては十分に注意することが必要です評価項目に個人の意思決定や行動が数値に直結することであります。経営である以上は営業利益の確保が必要ですから、部門責任者には営業利益を意識してもらいたいという思いがあるのは当然のことです。

しかし、実際に現場責任者の裁量では、売上を増やすことを除いて出来ることは限られています。人件費も含めて部門責任者でコントロールできる幅は殆どありません。現場に価格決定権があるのであれば粗利率コントロール位はできますが、裁量権を考えれば、売上高と粗利益に責任を持つのが精一杯なところです。

業績が好調なときはそれなり意味があるのですが、業績が悪化してくるとデメリットの方が大きくなっていきます。数値結果が歴然としているので、一見、納得性が高いように見えますが、納得しているのではなく、反論の余地がないだけです。納得できないのに正論で反論しづらい状況が、続くと多くの場合、思考停止で何も感じなくなってしまうのです。

業績制度が、阻害している側面もあります。小売業やサービス業では営業利益を評価項目にしているところがあります。こういう会社では、店長や管理職と言われる一部の社員がサービス残業をして人件費を抑えて利益確保しようとしています。労基法上の問題もそうですが、それを見ている他のスタッフは、店長になりたくないと思います。これではワークライフバランスを考える人から選ばれないのは当然です。人材不足は加速していきます。

利益出すための評価項目と行動が、スタッフ不足と言う機会損失で利益を損なっているなんて本当に皮肉な話です。普通の人でも、無駄な人件費を垂れ流すような人はいませんし、もしそれがあるなら、しっかりと指導すればいいのです。評価制度を作って、年に1~2回賞与前もしくは定期改定前に評価をするだけでは、あまり効果がありません。せっかく手間をかけて制度を運用するのですから、根付かせていくことが求められます。

ドラッカーが「マネジメントの究極ゴールは、マネジメントしなくても良い状態になること」のような主旨を述べていますが、評価制度も社員が全員人間的に成熟しており、会社に対し信頼感があれば、評価制度がなくても何も問題はないのかもしれません。

5.パフォーマンスを発揮する要因「動機付け・衛星理論」
古典的な心理学に、「動機付け・衛生理論」という考え方があります。その理論に依ると、「不満の要因をいくら取り除いても、満足感を高めることはできないので、モチベーションを高め、パフォーマンスを高めるためには、「動機付け要因」にアプローチしなければならない」とされています。

動機付け要因として、「達成」、「承認」、「仕事そのもの」、「責任」、「昇格」などが挙げらています。一方「人間関係」、「労働条件」、「賃金」、「個人の生活」等は衛生要因とされています。衛生要因を改善しても、あまりパフォーマンスは上がらず、目に見えるような効果が上がらないのは事実です。しかし、衛生要因が満たされない状態では、様々な不都合な問題が起こるのも事実です。

働き方改革この20年を振り返ると、多くの企業で「動機付け要因」を優先させて、「衛生要因」を後回ししてきた感があります。「社員の代わりは幾らでもいる!」状態だったです。その結果2010年頃に業績的に優良企業と言われていたにも関わらず、過酷な長時間労働が故に「ブラック企業?」と風評が挙がった2つ企業があります。

その後の対応で明暗を分けました。そのうちの1社の大手アパレル会社では、批判を受けて、残業削減などの働き方の改革をおこなって、今ではブラック企業云々の風評はあまり聞かれなくなりました。もう1社は大手の飲食会社です。この企業は、壮大な理念を掲げて、会社の労働観を社員に強要し続けて、抜本的な働き方改革が遅れてしまいました。

その結果、社員のモラルの低下により事業不振に陥り挙句の果てに不幸な事故までおこり、事業の縮小せざるを得なくなりました。社員から選ばれなくなった会社には、明るい未来はないのは間違いのない事実のようです。

1億総活躍社会と言う聞こえがいいですが、言葉を変えると、全ての人が働かなくてはいけない社会を作ろうという動きです。そうなると、男性の子育てや家事など本当にワークライフバランスを考えなければいけません。そのような生活の働き方改革を推し進める社員から選ばれる会社になるためには、まずは、適正な労働時間を実現させる必要があります。勿論、会社にはいろいろな事情があるのでしょうが改善の余地は小さくありません。

勿論働き方改革を進めるに際して人事制度は補助的なものにすぎません。業務改善と幹部の意識改革が必要です。現在の幹部はすべてを仕事のために捧げて、私生活を犠牲にして業績を上げてきた人が大多数です。ですから、休みも取らず、長時間働くことが当たり前になっています。幹部の意識改革から始める必要があります。

業績目標と同じくらいの重要な目標として、労働条件の改善目標を位置づけていくことが、今後も成長し続ける企業の条件になってくると思います。最低限のラインとして、年間休日104日 月残業時間45時間以内、有給消化率20%は実現させたいところです。