最近の小売業の低価格化傾向を見ていると、価格に特化して規模を追及するスタイルに傾いていますが、消費者の声を拾うと面白い傾向が見られます。
「○○でいい、○○で十分」という消去法的選択です。
モノの価値の見極めが大きく変わり、コモディティ化が進んでいく流れが強く現れているものと思われます。
このことから、昨今の消費不況は景気が悪いからモノが売れないのではなく、「○○がいい」という積極的な選択をしてもらえるだけの商品が減少しているのではないかと考えるべきではないでしょうか。
メーカー主体の商品そのものの告知だけでは、消費者が商品に対するストーリー性を感じられず、モノで終わってしまうがゆえに、低価格でなければ買わない流れになりつつあるものと思われます。このような状況になると、チャネルである小売業が意識的にストーリー性を告知していかなければ、消費行動が変わらない可能性が大きくなります。
モノとしての要求を満たすだけになるからこそ、コモディティ化が進み、消費者の選択は消去法的選択=消極的選択になっていくのでしょう。
かつては雑誌が「茶髪」「シロガネーゼ」のように、着火点前の現象に名前をつけ、特定のターゲットからトレンドを作り出したものです。情報媒体としての雑誌が力を失くし、Web関連に情報が氾濫している昨今では、消費者の大多数を特定の方向に向けるトレンドを生み出すことができなくなりつつあります。
このような時こそ、メーカー、チャネルが一体となって商品にストーリー性をしっかり持たせるようにしていかないと、規模と製造経験に左右される価格競争からは脱却できないのではないかと思われます。
価格競争の先駆者は、当然その価格で利益を生み出せる体制を作り上げているものですし、消費者に対して供給する上では自社の規模を最大限に利用できる体制をとっていることでしょう。
これに対して、同質の競争を挑むと確実に利益が減少し、大きなダメージを受けます。さらに、追随行為をした場合には、先駆者が常に比較材料として取り上げられるため、宣伝広告上では「利他行為」が大きくなります。
つまり、最初に仕掛けた企業に二番手以下が追随すればするほど、先駆者メリットが拡大していく流れになっているのです。後発企業としては、本来は「○○がいい」という積極的選択に勝機を見出していく「価値表現」に土俵を移していくべきなのでしょう。
そのためには、実用性と趣味性の中間に位置づけられる商品を見出していくことがポイントになるものと考えられます。
単なる贅沢品は大きく売上を落としているだけに、取り組む上では勇気が必要かと思いますが、従来の勝ち方で売上が上がらない時だからこそ、本質的なことを見失わないようにしたいものです。