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こうして生まれたヒット商品!~チロルチョコの成功~

みんなから愛される定番商品、チロルチョコ。1962年にチロルチョコが発売され、約40年を超えるロングセラー商品になっている。このチロルチョコはどのように誕生したのだろうか。なぜ、誕生してから、これまで人気を誇っているのだろうか? チロルチョコの誕生経緯及び人気の秘密にせまる!
1辺わずか3cmに満たない正方形の一粒のチョコ。これまでのチロルチョコの種類は、味の分類だけで150種類以上。ミルク、チョコ、きなこもち、様々な味の「チロルチョコ」のコアファンは多い。

なぜ、これほどまでに人気があるのか。なぜ、これほどの長い期間、消費者に愛され続けてきたのだろうか。

■ チロルチョコ誕生

チロルチョコが誕生したのは、1962年、福岡県田川市の松尾製菓の2代目社長、松尾喜宣氏が、当時、チョコレートの価格が約100円であった時代に、子どもたちでも買えるようにと10円という価格で駄菓子屋にて提供することを打ち出したのが始まりであった。当時のチロルチョコは、3つ連なった細長い「チロルチョコ」であり、10円という価格を見合わせるために、砂糖と水あめを煮詰めて作ったヌガーを中にいれていた。これが、瞬く間に子どもたちに愛され、手軽でおいしい菓子として、人気を博した。

しかし、10年続けた10円という価格が、1973年のオイルショックによって、価格を20円、30円と値上げすることを余儀なくされ、売行きに影響を与えた。

1979年、このままの売上低迷を打開するために、ついに松尾喜宣氏が、原点の10円に立ち返ろうと、「3つ山」を「1つ山」に分割し、再び10円での販売を開始。これが現在の形となっている。

254_2こうして生まれたヒット商品!~チロルチョコの成功~

■ コンビニへ展開し、急成長

一粒チョコとしての販売も起動に乗ったが、新たな問題が松尾製菓を待っていた。バブル期以降、街の駄菓子屋の数の減少である。駄菓子屋を販路としていた松尾製菓は、販路縮小に悩まされることになった。

その同時期に2代目社長の松尾喜宣氏が体調を崩し、急遽、社長就任したのが、現3代目社長である松尾利彦氏である。

就任当時、松尾利彦氏が、この販路縮小及び子どもの減少にともなう商品の脱皮から考えた施策が「3拡運動」である。その施策は、「販路」、「ターゲット」、「エリア」の拡大である。そこで、駄菓子屋に変わる新たな販路としてコンビニエンスストアに目を向けた。

そこで、興味を示したのが、セブンイレブンである。当時のセブンイレブンの担当バイヤーの企画で北海道でのテスト販売が実現し、そこで好調な結果を得る。それをきっかけにして全国展開へとつながり、購買層も拡大していった。

セブンイレブンでは、1日に400個も売れる店が現れるなど、人気を呼び、チロルチョコの名は全国的に知られていくようになる。こうして、コンビニと言う有力なチャネルを得た結果、チロルチョコは売上を飛躍的に伸ばしていった。

その後、2003年に「きなこもち」が爆発的に売れた。これは、「バラエティパック」の一つであった「きなこもち」を、やはりセブンイレブンのバイヤーが注目したことから、単品で売り出すことになり、大ヒットした。このヒットした要因としては、コンビニエンスストアは、客単価下落が問題視されておりその方策とチロルチョコの単価がマッチしたと考えられる。菓子業界では10億円売れれば大ヒットとされる中、年間17億円もの売上を「きなこもち」は上げていた。

254_3こうして生まれたヒット商品!~チロルチョコの成功~

■ 人気を保ち続ける秘訣は

3代目社長松尾利彦氏は、次なるチャネルとしてスーパーも検討しているようである。現在の市場環境を考えると、売上の主力チャネルとなっているコンビ二エンスストアも店舗数が伸び悩み、飽和状態となっている。

また、最近では、コンビニエンスストアの棚を見ると、チロルチョコのサイズの低価格のお菓子もよく散見するようになった。

このような、市場が飽和し、競合商品がひしめく中で、同社が行っている施策とは何か?

その施策は、自社商品ライフサイクルを短縮化させることである。これは、製造個数を制限し、市場に商品を投入する。そしてその商品が売り切れると、新たな商品を投入するというサイクルを繰り返し、商品の飢餓感をだすというものである。

自社商品のライフサイクルを短縮させるといっても、誰でもできるわけでない。次々と斬新な商品を市場に投入できる秘訣を社長は、以下の3点だと指摘する(1)自分たちが「楽しい」、「斬新さ」がないと商品を売らない、(2)設備投資を惜しまない、(3)賞与を完全業績連動型にしている。

(1)に関して、松尾社長は、次のように語っている。

「商品を作る際には、遊び心が必要。お菓子が本来提供しなければならない楽しさや新しさが消費者に評価されているのだと思う。映画、絵画、音楽などすべて同じだと思う、やはり作り手が楽しいか、楽しくないか、気持いいか、気持ちよくないかという想い、愛情、思想、魂がないと消費者に伝わらない。僕自身も、自分でおもしろいと思うものしか商品にしていない。」

また、(3)に関しては、「社員が自発的に商品開発に取組む風土にするために年二回の賞与は完全業績連動型にしている」と語っている。

このような社長の哲学及び組織風土あるからこそ、次々とワクワクするような商品が生まれ、また斬新なパッケージやデザインが生まれるのだろう。このワクワク・ドキドキさせる味・パッケージ・デザインでも消費者に驚きを与え続け、決して飽きさせない。そのための商品企画には膨大な時間が費やされるという。社長の哲学は、社員にも浸透している。社長の確固たる商品哲学、その哲学を受け継いでいる社員。このような風土があるからこそ、次々とつい手を出したくなる商品が生まれる。

47年前に生まれたチロルチョコ。長方形の形から正方形に形を変え、様々な購買層の笑顔を作ってきた。今度は、どのような商品で我々の笑顔を作ってくれるのだろう。
(この記事は2009年4月1日に初掲載されたものです。)