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「構えて狙って打つ」のではなく「構えて打って狙う」

先日読んだマッキンゼー出身のエクセレントカンパニーに関する本に、すばらしい内容が書いてあった。アメリカの電力会社AESのケースをあげ、戦略とは、「構えて狙って打つ」のではなく、「構えて打って狙う」ことだという内容である。恐ろしく深い内容であるが、私なりに次の通りに理解してみた。

事業展開にあたって、成功している企業は必ず勝ちパターンを持っている。勝ちパターンの内容は各社様々であるが、どの企業も、経験に基づいて、勝ちパターンを構築している点については共通している。

勝ちパターンは、やみくもな活動により身につけているわけではない。最初の段階で、マーケットセグメントとターゲットを明確にしている。マーケットセグメントは、例えば、「中国」とか「インドネシア」といったエリアではなく、「中国の富裕層」とか「インドネシアのプリブミ(インドネシア原住民。大地の子の意味。)」といった細分化されたセグメントである必要がある。ここまで明確にすることが、「構えて」ということであると思う。

この段階では、当該セグメントにおけるターゲットが何を求めているか分からない。そこで次の段階で「打って」、つまり具体的なアクションが必要になる。ここで「狙う」つまり的をしぼってしまうと、自社の強みが発揮できるカテゴリを除外してしまうことになりかねない。したがって、まず失敗してもよいので「打って」みるというアクションが重要である。これは、国内市場でも、海外市場でも同じである。

「打って」みる段階で的を外すことは多く、的にあたるまで、打ち続ける必要がある。逆に言えば、この段階は、外してもよいのであり、重要なのは、「打って」を繰り返しながら、的に近づいていくことである。そこに的がある限りは、必ず、いつかは、的にあたるが、やみくもに打ち続けても体力を消耗し、いつか息切れしてしまう。息切れに耐えられる体力と信念があればそれでもよいが、それ以上に、仮設が必要である。早く的にあてるためには、仮説をたて、一つ一つ検証しながら的を絞りこんでいかなければならない。

仮設をたてるためには、先行事例の研究が有益である。すでに成功している企業が、どのようなプロセスで成功してきたのか?当該マーケットセグメントにおけるマーケットリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーがどのようなカテゴリに対して、どのような商品で取り組んでいるのか?そして、そういったベンチマーク企業と比べた場合の自社の強みは何なのか?そういったことを明確にしていけば、大きく的を外すことはないはずであるし、1発目よりも2発目、2発目よりも3発目とだんだんと的に近づいていくはずである。

そして一旦、的にあたったならば、次に「狙う」ことが必要となる。この段階では、的を外してはならない。かつ、継続的に的を狙い続けて、自社のポジションを確立していかなければならない。「狙う」というのが、マーケティング、プロモーションといった活動である。「狙う」べき的と、「打つ」べき弾が明確になっていれば、マーケティング、プロモーション施策は、特定のマーケット、特定のカテゴリに対して、特定の製品をもって実施できるはずである。つまり、それが、勝ちパターンである。

今回は、あえて抽象的な内容に終始してしまったが、「打つ」という行動に躊躇してしまっているのが、今の日本の多くの企業の現状であると思う。打たなければ、勝ちパターンは身につけることはできない。誰でも成功できるビジネスモデルなど、「真っ赤なうそ」であり、存在しえない。待っていても、勝ちパターンなどやってこないし、「誰でも成功できる」などとPRしてくるビジネスモデルなど、ただの罠である。

「構えて、打って、狙う」ことを通じて、多くの企業に、本当の行動から身につけた勝ちパターンを構築していただきたいと思う。