業界構造の変化から、エンドユーザーに直接販売を実施しない素材・部材メーカーなどの川上・川中メーカーにも、エンドユーザーを見据えたマーケティング力・企画力を強化する必要性が強まっているというお話を致しました。
そしてその中で、具体的にマーケティング力・企画力を強化していくために、以下の4つの手法を挙げさせて頂きました。
<エンドユーザーを見据えたマーケティング力・企画力の強化手法>
1.自社でエンドユーザーモニターを組織化し、ニーズ調査を実施する
2.自社独自でエンドユーザーの購買行動などに関する定点観測・調査を実施する
3.外部の調査会社を利用し、展開事業に関するエンドユーザーの嗜好を確認するWEB調査などを実施する
4.海外展開などしている場合には、海外からの情報を集めグローバルでのトレンドを自社・もしくは外部機関を利用して分析する。
今回はその中で一つ目の
「自社でエンドユーザーモニターを組織化し、ニーズ調査する」
手法について詳しく述べて行きたいと思います。
これは具体的には、マーケティング部などが主導となりエンドユーザーを集め、集まってもらった人に定期的なマーケット変化に対する
レポートの提出や座談会のような形でエンドユーザーの声の収集を行っていくものです。
この手法を用いる目的としては、例えばサンプル品についての評価してもらうような商品化仮説の検証を実施していくことや、レポートや座談会で出てくるエンドユーザーのアイディアの中から今後の開発に繋がる潜在的なニーズを汲み取っていくことなどが挙げられます。
前者については、川上・川中メーカーが実際の販売先に提案をしていく際に、その提案内容を事前にエンドユーザーの視点で検証してもらい、エンドユーザーの評価を盛り込むことで提案内容に深みを持たせることができます。
これは販売先の立場から考えると、従来販売先自身がエンドユーザー視点で評価しなければならなかった領域をサプライヤーが自ら評価してきてくれるということになり、販売先との関係性において優位に立つことができます。
また、後者についてはエンドユーザーが持つ雑多なマーケット情報を集める中で、次の開発のタネとなる要素を見出し、その後のマーケティング活動の起点となる仮説を策定していくことに繋げられると言えます。
このようなお話をさせて頂くと、マーケティング担当者が市場調査については十分に実施しているというご意見をお持ちになる方も中にはいらっしゃると思います。
しかし、一度エンドユーザーの視点から得た情報を基に、仮説検証という形で市場調査を実施するのと、ゼロベースに近い状態から市場調査を実施するのとでは、調査アウトプットの質が大きく異なってくると言えます。
さらに、この手法のメリットとしては、マーケティング活動として得られる情報量の割にはコストが割安ですむという点が挙げられます。
この活動にかかる主な費用としては、エンドユーザーを集めるためのリクルーティング費用と活動ごとにエンドユーザーに支払う謝礼になりますが、年間予算として200万円程度で実施することも可能であります。
そして何よりこの手法を用いることで、日々のビジネスの中で販売先に対しての意識が囚われがちな川上・川中メーカーにとって、エンドユーザーとの直接の接点を持つことにより、本来はエンドユーザーを見据えたマーケティング・企画を実施していかなければならないという基本的なスタンスに立ち戻ることができると言えるのではないでしょうか?
(この記事は2008年3月18日に初掲載されたものです。)