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経営者の気持ちがグローバル人材を育てる

ある従業員50名の機械工具商社は、昨年から、海外向け売上が伸び続けています。
しかし、わずか数年前は、海外向けの売上はまったくのゼロでした。

なぜ、この商社はこれほどまで、海外との仕事が増えたのでしょうか?

この企業では、誰もが海外に行くチャンスが与えられており、毎日のように、誰かが海外出張に行っています。
自分で海外の仕事のチャンスを持ってくれば、経験者のサポートにより、具体的な商談まで持っていくための仕組みが出来上がっていて、
社員が社員を育て、社員全員で海外ビジネスを拡大させているのです。

このような「社員が自発的に海外ビジネスをするための仕組み」は、勝手にはできません。
実は経営者の地道なそしてきめ細かい取り組みが背景にあります。

この経営者様が海外向けに取り組むにあたって、最初に目をつけたのがタイでした。

タイには日系企業がたくさんある。
自分たちが日本で行っている活動は、顧客から高い評価を受けているので、
タイで同じ活動をすれば、同様の日系企業のニーズを汲み取ることができるのではないか?
そういった判断のもと、タイに合弁で販売会社を立ち上げました。当然、タイの拠点は、ゼロからのスタートです。

多くの企業は、海外に拠点を設立した場合、
当該の拠点に赴任した責任者に現地の経営を任せきりにして、
現地責任者からの状況報告に基づいて経営判断をしていきますが、この経営者様は違いました。

現地責任者には権限を与えながらも、自分でも驚くほどの頻度でタイの拠点を訪問し、
現場で見た感覚を大事にして、必要に応じて日本からの出張ベースで社員を派遣してタイ拠点の活動を支援したのです。

そこで生まれたのが、現地責任者の日本からのサポートに対する感謝の気持ちです。
その感謝の気持ちが、現地拠点スタッフ全員の責任感と安心感を生みました。
自分たちで、もっともっと顧客開拓をしなければならない、顧客開拓ができれば、日本からのサポートが得られる。
そういった気持ちを抱きながら、現地スタッフは、責任者、担当者含め、どんどんタイで顧客を増やしていきました。

次にこの経営者様が取り組んだのはインドネシアと中国です。

この企業のタイ拠点に対して、インドネシア向けの案件がいくつか入ってくるようになりました。
インドネシアはバイクの販売台数が毎年100万台のペースで伸びています。
自動車の販売台数も近いうちにタイを超えてASEANでNo.1となる見込みといわれています。

そのような状況で、タイにある自社の拠点に引き合いが入ってくるということは、
インドネシアに拠点を設立すれば、もっと案件が出てくるのではないかと考えました。

そこで、いち早くインドネシアに駐在員事務所を設立し、インドネシアの日系企業向け取り組みを始めました。
そして、タイの人員を増強して、インドネシア向けサポートができる体制を整え、
インドネシアでの活動を、タイからも、日本からもサポートできるようにしました。

今では、この企業は、インドネシアの大手自動車部品メーカーから、多くの引き合いを受けています。

同時並行で、中国にも取り組み始めました。中国の場合、日系以外にも現地資本の自動車メーカーが育ってきていています。

その市場に取り組むためには、タイやインドネシアと同じやり方はできない。
中国資本に対して取り組むためには、中国企業と一緒に取り組まなければならないと考え、現地企業と合弁で、販売会社を立ち上げました。
それも、明確にターゲットを設定して、そのターゲットの所在地を考え、
多くの販売会社がまず拠点を設立しようと考える上海エリアではなく、北京エリアを選びました。

今、某大手現地自動車部品メーカーから、大型の設備案件の引き合いを受けています。

この企業様の取り組み方は、先行投資型です。ビジネスが立ちあがる前に、拠点を設立しています。
先行投資型で海外市場に取り組んだ多くの企業が、進出前と進出後とではあまりも想定した環境が違ったことにより、
思っていたとおりにビジネスが立ち上がらず、失敗しているのに対して、この企業は、すべて成功しています。

その理由はあきらかです。
経営者の絶対に立ち上げるという気持ち、結果を急がない姿勢と、
その取り組みに社員が積極的に関与できる環境が、すべてのビジネスを成功に導いています。

なぜこういったことができるのかというと、経営者ご自身でターゲットを決め、
そのことに対して責任をもって取り組んでいるからです。
このターゲットに対しては、絶対にビジネスができると信じ、
そのための投資もする、結果には自分が責任を持つ、実行するのは社員だ、
そのために自分もできる限りのサポートをするという姿勢で取り組んでいます。

その結果、今、この企業の社員は、自分に経験があろうとなかろうと、語学ができりようとできまいと、
タイ・インドネシア、中国向けビジネスに必死に取り組んでいます。
そして、社員の海外向けビジネスのスキルの向上とともに、海外向け売上も伸びています。

「企業はトップで99%決まる」。
セオリーなどは、後からついてきます。大企業であっても、中小企業であっても、トップの気持ちが、海外ビジネスの成否を分けます。