今回は「若手社員の流出防止」について考えてみたいと思います。
最近、社内研修や評価制度構築の仕事に関わる中で、社員の方にインタビューをする機会が多くありますが、そこで必ず挙がる問題が優秀な人材の流出です。
若手社員に今後の成長について質問をすると、「キャリアを積んでいくイメージが沸かない」「今の会社で自分が成長していくイメージが沸かない」という答えがよく返ってきます。
一方マネジメントクラスの社員に話を聞くと、「優秀な人ほど条件のよいところに移っていく」というのです。
ここに、マネジメント側と若手社員の意識のギャップを感じます。
若手社員は仕事に自分の成長や自己実現を求めているのに対し、マネジメント側は条件が問題だと感じている傾向があるのです。
会社としては募集、採用、教育と多大なコストをかけて、これから戦力として貢献してもらいたい若手社員が流出してしまっては大変ですから、何とかして流出しないよう、囲い込む方策を考えます。
確かに、給与や賞与などの金銭的報酬や労働環境といった面も重要ですし、そういった条件に恵まれた職場は魅力的です。
しかし社会に出て間もない若手社員は、これからの長い社会人生活のことも考えています。目先の好条件も大切ですが、それ以上に自分の人生を託す場所として、その企業が本当に自己の成長や自己実現の場としてふさわしいのかどうかを考えているのです。
まだスタートして間もないのですから、成長や自己実現の可能性が感じられれば、条件面は生きられるレベルで妥協できるものです。
このように考えると、若手社員を惹きつける企業とは、成長と自己実現の機会を提供できる企業なのではないでしょうか。
その具体策のひとつとして、最近私が注目をしているのが企業内大学です。企業内大学は国内企業でも増加していますが、最近の傾向としては、従来の研修センターの職位別研修の名称変更的なものからキャリア開発支援のカラーが強くなってきているように見えます。
キャリア開発支援の方法は、
(1)「全社員教育」― 全社員の受講を必須にするなど、社員の技能・技術など実務能力の全体的な底上げ
(2)「次世代リーダー育成」― 意欲的な人材を選定し、次世代リーダーの育成と輩出
に大別できます。
いずれの方法も仕事のやりがいを認識できたり、今後の成長性が見えるなどの期待効果があると考えられます。
さらに企業内大学は人事部や人材開発部門が関与するだけではなく、全社的な経営戦略に連動した施策であるため、全社の人材育成体系の可視化やキャリア形成に大きな役割を果たすと考えられています。
まだ(1)(2)の方法が確立している企業内大学は少ないようですが、今後企業における重要度が増していく施策と考えられます。
「企業は人なり」とよく言われますが、企業内大学も若手社員の流出防止策の1つの方法にすぎません。
キャリアアップを支援する環境を整え、継続的に展開していくことが、若手社員の帰属意識を高め、流出を食い止める一助となるのではないかと期待をしています。
(この記事は2008年7月8日に初掲載されたものです。)