前回は、企業における現場のリアリティと経営層のリアリティについて考えました。
定性的・個別各論な要件重視のリアリティを認識しがちな現場と、定量的な情報をベースとした客観的なリアリティを求める経営層との間で、致命的なコミュニケーションギャップが発生してしまうという問題です。
今回は、その解決策について検討してみたいと思います。
結論から申し上げると、解決策といっても、至極当たり前のことになります。企業は副次的な側面としていろいろあるにしても、結局利益を上げることで成り立っているのですから、あらゆる成果は定量的に判断するしかありません。そして現場の方々もその所属員として利益を源泉とした活動をしているわけで、やはり現場も定量的な視点に帰結することが求められると思います。
前回述べましたが、現場が定性的な要件に寄ってしまうのは、日常業務の中で突発・例外事項に接し続けるうち、定量・普遍的な客観視に対して現実との乖離を感じ、猜疑・辟易としてしまうことが理由として多いように見受けます。
業種業態にも因りますが、確かに特に売上面はいくら目標数字を置いても不確実性が付きまとい、猜疑的印象を受けてしまうかもしれません。さらに、現場としては、不確実性がつきまとう目標数値で経営層から締め上げられることに辟易としてしまうのかもしれません。
しかし、私がここで現場と経営層のコミュニケーションギャップを整合させる解決策としての定量的リアリティとして申し上げたいのは、将来の不確実性について数字遊びをしようということではなく、過去と現在の実績をリアルに定量的に捉えようということです。
将来の目標とは異なり、過去と現在は、結果も理由も見えていると思います。それを、利益創出活動とのリンクの中で数値に置き換えてみるだけの話です。そうするインフラを整えておけば、過去の検証もしやすくなります。経営層と現場の間でうまくコミュニケーションが取れていないケースでは、結局、将来の予測目標がどうこうというより、現実の捉え方がブレているがゆえに前提認識が揃わず、将来目標についてはより大きなブレ幅でギャップが出るということになっているように見えます。
過去と現在の現実を定量的に把握するというのは、P/L・B/S等の実績数値を、業績の変動要素のくくりで組み直して、業績上の成果と課題を炙り出すイメージです。例えば店舗ビジネスであれば通常、店舗ごとのP/Lで業績を見ていると思いますが、会社全体として考えれば、本社費用を店舗の利益で賄っているという構図になるので、本社費用を店舗に配賦し、逆に本社からの一括調達で本社利益を持っているなら、それを店舗に返して組み直すことで初めて、実態としての店舗利益が見えるということです。
その上で、実態として赤字の店舗は、客数が落ちているのか、客単価が落ちているのか、それともコストが上昇しているのか、そして、客単価が落ちているのであれば、価格政策上の変動なのか、MD上の出荷変動なのか等と紐解いて課題を抽出します。
つまり、現実の結果をリアルに定量的に捉えた上で、その成果課題をまた定量的に分解して捉える。これを現場のリアリティとして前提に置き、経営層とのコミュニケーションを図っていけば、現実と成果・課題を同等の規模感で共有し、今後の方向性についても同等の指向性で解決アクションとしてコミットできるようになるのではないでしょうか。
真新しいことは何もありませんが、このような現場・経営層間コミュニケーションの基点となる部分が共有されずに認識・活動上のギャップが大きく出てしまうケースを度々目にしますので、一度振り返ってみていただければ幸いです。
(この記事は2009年8月21日に初掲載されたものです。)