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これからの不動産仲介ビジネスに必要な収益構造転換の発想

契約件数にあまり変化はないが単価のマイナスによる手数料収入ダウン……単価にそれほど変化はないが契約件数の大幅減少による手数料収入ダウン……いずれにしても、手数料商売の限界がいよいよきていることは明らかである。

この原因は大きく分けて2つの市場動向に起因している。「市場規模の縮小」と「市場の成熟化」である。前者はさらに[1]過剰な物件供給[2]「住」に必要な土地の需要の低下[3]仲介特化型ビジネスモデルの破綻[4]人材確保の困難化 等に、後者は[1]消費者の二極化[2]物件の二極化[3]商品の比較・検討段階の長期化[4]動機付けの多様化 等にそれぞれ細分される。中でも先に述べたような商品価格の下落に伴う手数料単価の下落は手数料に頼った仲介特化型のビジネスモデルに大きな影響を与えている。
単価が下がれば、契約件数を上げないと社員一人あたりの生産性を確保できないが、特に地方都市の郊外エリアなどでは、人為的な限界を超えないと採算ラインを超えることができず、人材確保や会社維持、部門維持が不可能になる会社も出ている。結果として、仲介メインのビジネスモデルは人口が集中する大都市・大エリアでしか成立しなくなっていくのである。

とはいえ、周辺ビジネスへの展開を考えるにあたっても仲介を軸にした考え方は避けて通ることができないのが現状である。赤字部門であってもエンドユーザーとの直接的接点を持つ部署として存続させていく必要がある中で、先に述べた生産性(成約率)の問題に追い討ちをかけるのが、消費者の商品の比較・検討段階の長期化である。
インターネットの普及によるメール反響の増加、それに伴うセールスステップの増加に加え、商品の氾濫により、選択肢の幅が広くなった消費者は、比較・検討の段階が長くなっている。さらにインターネットによる情報の氾濫、続出する企業の不祥事等による不信感からの慎重化がそれを助長させている。

また、何かを選ぶ際の動機付けが“自我の欲求充足”“自己実現(自己表現)”であることが多くなり、物件を選ぶ理由(自分の生活スタイルに合っていることなど)、就職先を選ぶ理由(自分の能力を活かして成長できることなど)などの多様化につながっている。このような市場環境の中で業績の拡大を実現するには、既存事業の成長も見込まれる新規事業を付加していくことが今後は望まれる。

いずれにしても企業は環境適応業である限り、市場や顧客心理の変化に適応し続けていかなければならない。“顧客がわがままになったから生産性が上がらない”のではなく、顧客の根本的ニーズを満たす提案や企業努力をしているかどうか。顧客思考、顧客中心主義経営の結果としての業態転換を今こそ考えるべきではないだろうか。
(この記事は2008年10月20日に初掲載されたものです。)