今回は、業務改善活動の機能を妨げる原因の一つである「組織目標の伝達」について解説します。
これは少々挑戦的な発言で、あくまで個人的な見解になりますが、よく「ビジョンがあれば人はついてくる」的な考え方の書籍などを見かけますが、これは少々語弊があると考えています。
”ビジョンがある”とは、様々な定義がありますが、簡単に言えば、”自社がどのような企業になりたいというイメージを持っている”ということになります。経営理念などといった形で提示されていることもありますが、基本的に漠としたイメージを伝えるもので、スローガン的です。
例えば、様々な企業のビジョンを見比べると、「顧客第一主義の徹底」、「誠意ある行動」、「技術力の強化」、「信用」などといったキーワードが各所で並列的に並びます。
あらためてこれらをイメージすると、どれも基本的には当たり前のことで、極論すれば宣言するまでもないとも言えます。
「ビジョンの浸透が足りない」という論調もありますが、これらの至極基本的なキーワードをいくら声高に叫んでも、理解する人間にとってこれらのキーワードは改めて言われるまでもなく理解していることであり、逆に理解できない人間には、1+1はなぜ2なのかを諭すようなもので、説明しても通じるものではありません。
また、これらのキーワードでは、現状をどのように捉えているのか、さらにいつの時点の話をしているのかも分かりません。
これでは、何を以ってビジョンに人がついてくるといえるのか説明できません。
ビジョンに人がついてくるのではなく、理解ある社員の集合体の結果としてビジョンがあると考えた方が妥当ではないでしょうか。
つまり、漠とした将来イメージなどを提示しても、組織を動かす目標として機能してはいないのです。
では、実質的に組織を動かす目標とは何かというと、最終の業績目標、顧客の定義、商品・サービスの定義、競合とのパワーバランス、チャネルとのサプライスキーム、自社業務プロセスなどのミックスを把握し、それぞれ現状との長期的・短期的ギャップを埋めるためのビルドアップのステップを提示するもの
となります。
組織目標といった時に、これらの要素を飛ばして漠としたビジョンを掲げ、さらにそれは一度置いておいて、過去実績からの単純な成長カーブを前提とした最終の業績目標とその数値操作から導き出された部署目標へのブレークダウンという策定フローが現実論としてよく見受けられますが、いかがなものでしょうか。
目標の認知とは、つまるところそれを受ける現場が納得感を持ち、その活動に志向性を持たせられるかということであり、納得感を持たせられない目標は結果的に機能せず、目標とは別次元の結果の高低を生むだけです。漠としたビジョンを頭を振り絞って提示し、他の要素をおざなりにするくらいなら、振り返って最低限のところを簡易的にでもおさえた上で、現場に説明がつき、少しでも納得感を与えられる組織目標を立てる必要があると思います。
(この記事は2008年7月24日に初掲載されたものです。)