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名医から学ぶ仕事の考え方【1】 ~心臓外科医・須磨久善氏の「フィロソフィー」~

コラムでは、この10年間で出会ったびっくり経営者や技術者を紹介させていただいていますが、今回は、須磨久善(すまひさよし)氏です。
初めてお話をさせていただいたのは平成15年で、須磨先生の登場したNHK「プロジェクトX」を見て感動し、当時、院長をされていた葉山ハートセンターに訪問しました。

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■須磨久善(すまひさよし)氏
世界初の胃大網動脈を用いた冠動脈バイパス手術、日本初のバチスタ手術を成功させ、「神の手をもつ男」と世界から賞賛されている心臓外科医。これまでに行った手術は5,000件以上。「プロジェクトX」、「課外授業―ようこそ先輩」などに出演し、ドラマ「医龍」、「チームバチスタの栄光」の医療監修など、多方面で活躍。2010年、海堂 尊原作をもとに須磨の功績を描いた特別ドラマ「外科医 須磨久善」が放映。同年、日本心臓病学会栄誉賞受賞。現在、代官山で須磨ハートクリニック院長を務める。
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須磨先生からはインタビューを通して、医療人としての信条や生き様など様々なことをお教えいただきましたが、一番、感銘を受けたのが、医療人としての哲学、フィロソフィーです。

■何のために手術をするのか?
名医と呼ばれるためには、医者としてのフィロソフィー(哲学)が問われるわけです。フィロソフィーがしつかりしていないと、いくらいい技術を持っていても大きな過ちを犯してしまいます。たとえば、非常に腕のよい外科医が難しい手術をするとします。その医者は前日に患者さんと会って、その手術のゴールをイメージするわけです。そのイメージの仕方で結果に大きな違い が出てくるのです。

つまり、手術前に思い浮かべるイメージが、難しい手術を成功させて学会で拍手喝采を受ける自分の姿なのか、それとも患者さんが家族と一緒に「ありがとう」といいながら退院していく姿なのかによって、結果が如実に違ってくるのです。

前者の場合は、自分のための手術になります。ところが、自分のために何かをやると、しなくていい無理をしてしまう。100点でいいところを120点を目指してしまい、それが取り返しのつかないミスにつながるんです。

ところが、もしその患者さんが喜んで帰る姿をイメージしていたなら、細心の注意を払って慎重に手術します。「手術は80点で終わるかも知れないけれど、この患者さんは絶対に死なない。残りの20点で文句をいわれても、私が責任を負おう」と、医者が腹を括ればいいわけです。患者さんに何としても元気になってほしかったら、手術というのは120点ではなく80点でやめられるのです。

外科医のように、人を傷つけて「ありがとう」といってもらえて、そのうえ給料までもらえる仕事というのは、人類の歴史上あり得なかったことです。そのこと自体が異常なことですが、そういう異常なところで毎日仕事をしていると、フィロソフィーの大切さがよく分かります。(月刊「世相」NO,236より)

須磨先生からこのお話をお伺いした時に、心から感銘を受け、多くの経営者やリーダーの方々に、そのままの内容をお伝えしてきました。世の中には医療技術のプロはたくさんいるけれど、本当の医療人とは、この根っこの部分で決まるのだと気づきました。根底にどのような思いを抱いているのか。 “自分のためか?” “人のためか?”

もちろん、創業者の船井幸雄の言葉にあるように、人は、「今だけ、自分だけ、お金だけ」というエゴを大なり小なり持ち合わせています。
ただ、根底に流れる本当の思いはどこにあるのか?意識の半分以上は、自分ではなく、お客様や周りに向いているだろうか?須磨先生の「フィロソフィー」を意識するたびに、自分の思いに嘘がないか振り返っている。