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ラーメン二郎に学ぶ 「商品力が戦略を越える瞬間」

歓送迎会の季節ですね。一次会、二次会とお酒がドンドン深くなりがちなところかもしれません。お体には気をつけてください。お酒と健康といえば、もうひとつ。酔いが頂点になると、ついついやってしまうのが、〆のラーメンですよね。筆者も分かっちゃいるけど、やってしまいます。先日も、ついついやってしまいました。そこでの考察を一つご紹介します。

まだ寒さが厳しい三月上旬。小雨が降りきしる午前零時。スープの香りに惹かれて、くぐったのは黄色い暖簾「ラーメン二郎」。このラーメン二郎、ほんの数年まではカルト的人気でしたが、最近ではメディアにも取り上げられている元祖大盛りラーメンです。関東を中心に暖簾わけで展開し、各店が店舗独自路線を打ち出すという、ラーメンチェーンとしては本当に珍しい形態です。(チェーンとして共通仕入れを行っているのは、カエシであるアネシ醤油のみ)麺もスープはもちろん、量もトッピングも唯一無二、そんな尖がった性質が「ジロリアン」と呼ばれるコアなファンの魂に火をつけ続けています。かく言う私も「ジロリアン」、味は世界一の美味とは形容し難いが、その魅力に酔い続けています。(※筆者の個人的な感想です。)

さて、マーケティング視点からの考察です。
船井総研では差別化要素として次の8つを挙げています。

【1】 立地
【2】 売場面積
【3】 暖簾
【4】 商品力
【5】 販促力
【6】 接客力
【7】 価格
【8】 固定客化

この順番は重要度も表しています。「【1】~【3】を戦略的差別化=すぐに変えられない」、「【4】~【8】を戦術的差別化=企業努力で変えられる」と呼んでいます。繁盛店を分析する際、我々はこの視点で分析します。

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評価は以上のようになります。按配は各人に異なるとは思いますが、商品力が最大の優位点であることに、少しでもラーメンに興味のある読者であれば相違が無いはずです。ここで注目して欲しいのは、黄色い暖簾ではなく、黄色い網掛け部。上位の戦略的差別化要素が芳しくないものの、圧倒的な商品力で集客および収益を生み出しているのです。それどころか、商品力が下位戦略(【5】以降)にも影響しています。

商品力の研磨は市場の成熟期以降に大変に重要になります。そびえる野菜に、山盛りのニンニク、トッピングに背油・・・昨今の健康ブームからは大きく離れた商品力。ラーメン二郎はマスのファンを捨てた結果生まれたものです。差別化とは、何らかの要素を捨てることで、新しい要素生み出すという典型例だと思います。正に差別化のエクストリーム。

商品の差別化が行き着いた先には、ある栄冠が待っています。それは、そのジャンルが商品名となるのです。現にタウン誌などを見ていると、「二郎系」や「二郎インスパイア」などの言葉が乱立します。そう、ラーメン二郎のジャンルは「ラーメン」から逸脱し、「二郎」というジャンルを創造したのです。だから一番なのです。これは、SONYの「WALKMAN」と同じ現象が起きているといっても過言ではありません。

繰り返します。商品名がジャンル名になったとき、戦略は全くの無意味と化すのです。究極の差別化とは、何かを捨てるというエクストリーム、何処かエンターテイメントに通じるかもしれません。