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マイケル・ポーターの「基本戦略」を説く(1)

皆さんはマイケル・ポーターの説く「基本戦略」をご存じでしょうか?
2回にわたり、この基本戦略に欠かすことのできない「差別化戦略」について私見を述べたいと思います。

ポーターによると基本戦略は大きく分けると4種類しか存在しません。まず縦軸に「ターゲットの幅」を取り、ターゲットを広く設定するか、狭く設定するかを決定します。競合企業に比べて広い顧客設定をしているか否かで区分するのです。
今回は家電店を例にとって考えてみることにしましょう。
例えば大手家電量販店ではどのような顧客もターゲットにしていることから、広い顧客設定をしていることがわかります。一方メーカーの系列店のような地域家電店では、いわゆる団塊の世代以上のエルダー層がターゲットとなりますので、狭い顧客設定をしていることがおわかりになると思います。
次に横軸に「他社との競争優位性」を取り、他社と比較した場合にコスト構造が優位か否かで区分します。コスト構造が優位な場合には「コスト優位」を、それ以外を「差別化」で考えるのです。
家電量販店でも、仕入れのスケールメリットが効くヤマダ電機などではコスト優位性が働き、それ以外の量販店では「差別化」が働くことになります。
ここまでをまとめますと、
1.ターゲットが広く、コスト優位が働く
2.ターゲットが広く、差別化が働く
3.ターゲットが狭く、コスト優位が働く
4.ターゲットが狭く、差別化が働く
の4種類の戦略が存在することがご理解いただけると思います。

これらはそれぞれ、
1.コストリーダーシップ戦略
2.差別化戦略
3.コスト集中戦略
4.差別化集中戦略
と区分されます。
これら4つの戦略について、ポーターは4つの基本戦略と呼んでいるのです。

ここでぜひ読者の皆さんに考えていただきたいのですが、「差別化戦略」や「差別化集中戦略」でいうところの「差別化」とは一体何を指すのでしょうか?
「コストリーダーシップ戦略」や「コスト集中戦略」の中の「コスト」については確かに明確です。競合企業と比較してコスト構造が優位、つまり低コストを実現することができればいいわけですから。
一般的に低コストを実現するためには、製造業であれ流通業であれ、スケールメリットがきくか、経験による習熟度が最も高いことが必須です。とすれば、コスト優位性を発揮するためには、その業界のトップ企業でなければ、その恩恵を享受することができません。言い換えれば業界のトップ企業だけが「コストリーダーシップ戦略」を採用することができ、ターゲットを絞った「ミニ・トップ企業」だけが「コスト集中戦略」を取ることができるのです。
先の家電店の例でいえば、ヤマダ電機だけが「コストリーダーシップ戦略」を取ることができるのです。彼らは圧倒的な販売量を背景に、仕入れ量のスケールメリットを活かし、低コストでの仕入れを実現することによって低価格での提供を実現していることになります。

他方、「差別化」とは何でしょうか?確かに「コスト優位」でないことだけは確かです。しかし、これだけでは判然としません。
「差別化」という言葉を耳にすると、どうしても「高付加価値化」と置き換えたくなってしまいますが、私の経験上、実はこれは誤りです。もちろん「高付加価値化」も「差別化」のひとつの要素には違いありませんが、これだけでは不十分です。
(この記事は2008年2月26日に初掲載されたものです。)