「なかなかモノが売れない…」
今はそんな時代です。そのような時代に求められるのは、相手に対して的確なアドバイスを行い、納得してもらったうえで売る力です。
それが、「コンサルティング営業」です。
ここで言うコンサルティング営業とは、コンサルティングを受注するための営業ではなく、“コンサルティング的な営業”という意味です。
対象は、法人向けに営業をしている方になります。
コンサルティング営業を成功させるためには、次の要素が必要だと考えています。
(1)マインドセット(心構え)
(2)ビジネスモデル(商品を売るのではなくビジネスモデルを売る)
(3)マーケティング(集客の仕組み)
(4)ビフォーフォロー(事前準備)
(5)セールス(成約の仕組み)
(6)アフターフォロー(顧客を営業マンに変える仕組み)
今回は、そのなかの(1)~(3)の要素について、ご紹介していきたいと思います。
※(4)~(6)については次回ご紹介いたします。
■ デキる営業マンはコンサルタントに向かない?
(1)マインドセット(心構え)
まずは、(1)マインドセット からいきましょう。
船井総研でもよく言われていることですが、前職でデキる営業マンだった人ほどコンサルタントになれないケースがあります。
理由は、必要とされるスキルが違うからです。
デキる営業マンにはいろんなタイプがいます。
お客さんとの人間関係で実績を上げてきた人、たまたま担当したお客さんに恵まれていた人、会社の看板で実績を上げてきた人…などなど。
基本的には、売り込むことが得意な人が多いようです。
しかし、コンサルタント(コンサルティング営業)になろうと思うと、それが逆効果になります。
なぜなら、コンサルティング営業では『売り込んではいけない』からです。
営業的な能力は高いにもかかわらず、これができずに苦しんでコンサルタントをあきらめた人を私は数多く見てきました。
そして、コンサルティング営業の本質を理解する上で、必要不可欠な考え方があります。
それは、『コンサルティングとは、願望実現ビジネスである』ということです。
これは、弊社取締役の五十棲がよく言っていることなのですが、どういうことを指すかというと、以下のとおりになります。
◇ コンサルティングは、願望実現ビジネスである
◇ だから、相手の願望を引き出さないといけない
◇ 相手がワクワクするような“あるべき姿”を提示しないといけない
◇ そういう意味では、コンサルティングはエステと同じである
(なりたい自分をイメージさせて、それに向けて施術する)
それを初めて聞いたとき目からウロコが落ちるとともに、
「そうなんだ。コンサルティングは美容系のビジネスと同じなんだ」と妙に腹落ちしたのを今でも覚えています。
さらに、大事なことは『相手を選ぶ』というスタンスです。
フツーの営業マンは全てのお客さんに対応しようとしてしまいがちです。
しかし、コンサルティング営業は違います。ターゲットと定める相手とだけ付き合います。
まとめると、『売り込んではいけない』、『コンサルティングは、願望実現ビジネスである』、『相手を選ぶ』、これらがコンサルティング営業の大前提となります。
■ お客さんに“あるべき姿”を提案しよう
(2)ビジネスモデル(商品を売るのではなくビジネスモデルを売る)
コンサルティング営業を実践する上で、最も大事な要素が2つ目の「ビジネスモデル」です。
優秀な営業マンであれば必要ありませんが、フツーの営業マンをコンサルティング営業にするのであれば、必要不可欠です。
では、ここで言うビジネスモデルとは何かというと、収益性の高い業態、ワクワクするような業態のことを指します。
今は、商品ではなかなか差別化できない時代です。
仮に差別化できたとしても、すぐに真似されて差別化要素がなくなってしまいます。
では、どうするのか? 商品ではなく、ビジネスモデルを丸ごと提供する必要があります。
では、「ビジネスモデル丸ごと」とは何か? 要するに「儲かる仕組み」です。
では、「儲かる仕組み」とは何か? 自社の商品を活用して、具体的な見込客集めの手法、高確率で成約するための手法を再現性のある形(仕組み)にしたものです。
まさに「フランチャイズを売る」ようなものと考えるとよいでしょう。
そうなると、それに伴う営業トークは「この儲かるビジネスモデル(フランチャイズ)に乗りますか? 乗りませんか?」という具合になります。
このビジネスモデル作りは容易ではありませんが、形にできると驚くほど成約率が上がります。
私のクライアントでも、これによって成約率が40%以上に飛躍した企業があります。
ただし、儲かる仕組みだけがビジネスモデルではありません。
私がビジネスモデルに位置づけているものとして、“あるべき姿”があります。
あるべき姿とはすなわち、あるべき業態、あるべきビジネスモデルです。
IT業界の場合は、システムを活用することで“あるべき姿”を実現していこう! という提案になります。
しかし、実際には多くのIT企業においてシステム導入ありき、つまりシステムを導入することが目的化してしまっており、
「システムを活用してあるべき姿を実現する」という発想をしている企業が意外と少ないように思います。
そもそも、システムとは、決められたことを徹底したり、仕組み化するためのものです。
わかっちゃいるけど、徹底できない、守れない、仕組みにできないケースは多いのではないでしょうか?
そこでこれらの企業は、システムを活用することで“あるべき姿”の型にはめていったり、
使わざるを得ない状態に導くことによって、定着することを狙っています。
この発想は、まさにSAP社のERPの考えと同じです。
SAP社のERPは、システムを業務に合わせる(カスタマイズ)のではなく、システムに業務を合わせるという考え方で作られています。
同社のERPは、世界の優良企業をモデルに作られており、
「SAP社のERPを導入すれば、世界の優良企業のように業務をまわせる」というのが謳い文句です。
つまり、SAP社のERPを入れると企業には“あるべき姿” が手に入るということなのです。
現実はそう簡単にはいきませんが、発想は間違っていないですし、私もこうあるべきだと思います。
では、“あるべき姿” が手に入ると、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には次のようなメリットが挙げられます。
◇ 儲かる(利益率が向上する)
◇ 品質を落とさずに低価格のサービスが提供できるようになる
◇ 人件費を減らすことができる(人が必要ないところは自動化するため)
そのほかにもいろいろとありそうですが、さらに大事なことは、「“あるべき姿” が手に入ることで、ワクワクするかどうか」かもしれません。
■ イメージは「フランチャイズ説明会」。権威や主導権を握れるセミナーが効果的
(3)マーケティング(集客の仕組み)
コンサルティング営業を実践する上で、最も大事な要素が(2)ビジネスモデルであるということをお伝えしました。
つまり、ビジネスモデルが用意できていないと、ここから先はどんなに仕組み化できたとしても、大きな成果を上げることは難しくなります。
逆に言うと、ビジネスモデルさえ作れてしまえば、マーケティングもセールスもそれほど難しくありません。
コンサルティング営業のマーケティング(集客の仕組み)で、最も効果的なのは、「セミナー」です。
セミナーを活用することで、コンサルティング営業に必要不可欠な「権威」と「主導権」を手に入れることができます。
その他にも次のようなメリットがあります。
◇ 顧客を教育・啓蒙できる
→お客さんを目の前にして、2~3時間も営業できる機会は他にない
◇ 一度に見込度の高いお客さんを集めることができる
→効果的・効率的な営業が可能になる
◇ 経験の浅い人でもセミナー講師になれる
→船井総研でもまさにそうです
では、コンサルティング営業のためのセミナーの流れはどうのようにすればよいのでしょうか。
また、普通のセミナーとは違いがあるのでしょうか。
実際には、普通のセミナーとは少し異なります。
商品紹介セミナーでもなく、事例連発系セミナーとも違います。
イメージ的には、「フランチャイズの説明会」です。
フランチャイズの説明会とは、ビジネスモデルが決まっていて、
「ある商圏でビジネスをすると、これだけの収益が生まれ、このようなやり方でやればうまくいきますよ」、ということを説明するものです。
説明会を聞いた人に、「このビジネスモデルに乗るか? 乗らないか?」というとてもシンプルな決断を迫ります。
コンサルティング営業のセミナーもこれに近い形になります。
あるべき姿を提示して、「そうなりたいか? なりたくないか?」が焦点になります。
具体的に言うと、コンサルティング営業のセミナーの流れは、次のようになります。
◇ 背景
◇ 想定課題
◇ 問題を放っておくと…
◇ 解決策(あるべき姿の提示)
◇ 解決策を効果的に実現するためのサービスの提案
◇ サービスの特徴とメリット
◇ 他社との比較(優位性)
◇ お客様の声
◇ 実績
◇ Q&A(買わない理由をつぶす)
◇ 特典(セミナー参加者限定)
セミナーの最後には、「無料診断」や「無料相談」などを用意し、それにチェックを付けたお客さんだけが営業のフェーズに入っていくことになります。
もちろん、集客の仕組みは「セミナー」だけではありません。代表的はものとして、以下のようなものが挙げられます。
◇ ブログ
◇ メルマガ
◇ WEBサイト
◇ 会員制勉強会
◇ 出版
◇ オファー(小冊子)
これらは1つずつ無理なく階段を登ることができるようにしておく必要があります。
例えば、船井総研の場合は、「メルマガ→セミナー→会員制勉強会→顧問契約」というステップをとっています。
それと、是非おすすめしたいのが、「出版」です。出版している人としていない人では、“権威”の面で雲泥の差があります。
しかし、いきなり本を書くのが難しいようであれば、小冊子がおすすめです。
実際に、私も本を書く前に、小冊子を作っていました。
小冊子は、書籍ほどではありませんが、権威化の効果がありますし、自分のノウハウを整理するのに最適です。
出版したいとお考えなら、まずは小冊子を作成してみてはいかがですか。
(次回へ続く)
(出典:ダイヤモンド・オンライン)