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規模の経済

規模の経済では、生産台数が伸びれば伸びるほど、1台あたりの固定費負担は小さくなり、シェアを高めた企業程、製品を低コストで生産し、低価格で供給することが可能になる。新興国中間層が成長するほど、生産コストにおける固定費割合の大きい耐久消費財には規模の経済が働くことになり、この規模の経済の恩恵を得るために新興国市場では大手メーカーによる熾烈なシェア争いが繰り広げられている。

物流経費が大きい自動車、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの白物家電は、地産池消化により各国国内での生産コストを下げ、価格競争力をもって各国国内でのシェアを高めることが命題となっている。その一方で、PC、スマホのような物流経費の黒物家電の場合は、重要なことは、【1】できるだけ多くの量を生産して1製品あたりの単価を下げることと、【2】できるだけ人件費の安い国で生産すること、であり、生産拠点を原則として一極集中させることで低コスト生産を実現し、そこから世界中に輸送している。

白物家電とPCやスマホの中間にあるのがテレビである。完成品としてのテレビは、大型化しており、輸送には物流経費がかさむため地産池消化が必要である。例えばテレビの完成品メーカーであるLGなどは、欧州向けにはポーランドで、米州向けにはメキシコで生産している。このように、テレビメーカーは、各社物流経費を抑えながらも、人件費も抑えかつ品質を維持していくための戦略が重要となる。

一方で、テレビの場合、その構成部品については、一極集中して効率生産し、生産コストを下げることができる。例えば、台湾のAUOや奇美電子などの液晶パネルメーカーはその典型例であり、TV用の液晶パネルはこのように、完成品メーカーだけでなく、パネルメーカーが大きな競争力をもってきた。

そして今、このパネルの分野において、現在BOEをはじめとする中国メーカーが急速にそのプレゼンスを高めてきている。BOEの強みとして、国営企業としての豊富な資金力と、AUOなどから引き抜いた優秀な人材があげられるが、それ以上の強みとして何よりも中国という莫大な自国の市場の存在があげられる。自らの市場で中間層が拡大しており、主要顧客であるハイセンスやTCL集団のようなテレビメーカーも急速に世界シェアを高めており、自国内で十分な需要を確保することができる。さらに、サムスンやLGといった世界のトップメーカーがアジアにおける主要な生産拠点を中国においており、さらに最近では日本のテレビメーカーも中国生産を強化するに置くようになってきているなど、テレビ用の部材についてはますます中国企業にとってのアドバンテージが拡大している。

規模の経済を考えると、これから当面の間、中国の耐久消費財メーカーの成長が続くだろう。日本企業にとっては、こういった企業よりも常に1歩先の製品を市場に投入することがますます求められるようになる。