とても労力を掛けてやっていはいるけど、思ったより報われない業務ってけっこうありませんか? データ収集などは典型的ですよね。データ収集するだけで疲れてしまい、肝心の提案がうまくいかないという意見も聞こえてきます。
私が業務に携わっている、あるチェーン店A社様のケースです。A社は全国に数百店を持っている中堅企業であり、今までは個々人のノウハウで店舗業績向上に努めてきました。ところが、経営陣が入れ替わったため、定量情報をより重視されるようになり、本部と現場の橋渡し役であるSVにデータ収集業務が集中しているという次第です。
■ A社SV業務の実際
現状のSV業務を追ってみると1SV平均15ほどの店舗を担当しており、週に一度1時間程度店舗巡回を行っております。その準備として進捗管理シートというものを作成しているのですが、項目として売上/客数/客単価については1週間/日別/時間帯別/商品別はもちろん、廃棄コスト/就労指数/人時生産性、更に店舗独自の施策別目標数値(KPI)などを店ごとに整理しています。今まで数字を整理して分析するということがなかったため、1枚のシートを作るのでもPOSシステムから目的の数値を探してコピー・貼り付けなど約2時間程度かかります。更に加えると個人SVの結果を毎週営業会議にて報告するための資料も作成しておりました。
更にこれらに加えて、さまざまな社内プロジェクト業務(赤字店黒字化プロジェクト、SVマニュアル整備プロジェクト……)などの業務も圧し掛かっていたため、業務量は膨大となっていたのです。その結果、報告を行うためのデータ収集、分析、資料作成となっており、本来の収集した数字を分析し次の打ち手を考えるという目的から乖離してしましました。現状のSV行動を整理すると、
データ収集・報告書作成のために膨大な時間がかかる
↓
現場に回る時間が少なくなる
↓
現場を把握した打ち手を打てない
↓
店舗の業績が上がらない
↓
その要因を管理者から求められる
↓
新たなデータ収集に時間を費やす
といった悪循環に陥っています。
■ 重要なのは『今』の企業に必要な提案
ここで我々が提案したことは次の2つです。
(1)追いかける数値を極力少なくする
データ収集時間が膨大になっている理由としては、単純に多くの数字を取ろうとしているからです。データ分析は精緻に行う方が良いのですが、精緻すぎて時間がかかり結局使えないものでは意味がありません。
このケースでは店舗で検証すべき数値を日別の売上/客数/客単価と各店舗の施策別KPIのみとしました。もちろん、コスト面、時間帯別の売上なども必要です。しかし、今までデータ分析を行う文化がなかった企業なので、まずは地道に『数字を追う』癖付けを優先させました。
余談ですが、実は施策別KPIいうものは、例えばクーポン配布による新規客の増加といった施策の場合には、新規客数という目標に対して、チラシ配布枚数→チラシ回収枚数→チラシ回収客層など店舗側でしか追えない数値が多くあります。そのため、今までのSV業務を店舗側にも負担してもらうという意味合いもありました。
(2)データ収集業務を集約する
データ収集に時間がかかる理由は他に、システム自体が素人にはわかりにくいため、習熟までに時間がかかることが挙げられます。定型フォームで収集できればいいのですが、自分で取りたい数字はなかなか取れないという経験をされた方も多いと思います。システム自体を変更すれば解決するのですが、資金的に難しいため、チェーン全体の業績数値管理専任者にデータ収集を兼任していただくことにしました。
そこで一括してリスト化することで、SVはそのリストから貼り付けるだけでOKということです。また、業績管理者が全体だけではなく、各店の状況も見えてくるため、SVに対して店舗レベルで数値の指摘ができるようになりました。
現在、この方式に改善を行い日が浅いためはっきりとした効果は示せないのですが、明らかに本部にSVが滞在する時間が減っていると感じます。上記2つの提案を実際に実施するにはもちろんフォームの統一、SVスキームの整備などを行いました。
理想を言えば、精緻な分析を瞬時に行い、その膨大なデータ収集を迅速に行うためにシステム整備とスキルを持ったSV育成です。ただし、今の企業にとってはまずデータに慣れること、そして現状のリソースで課題を解決することが必要です。
今回はデータ収集の重要性とデータ収集自体の作業削減についてお話ししましたが、次回は実際にこのようなデータを使用したSV指導方法についてお話ししたいと思います。