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机上の空論で終わらせないターゲティングのコツ

前回、“起業”や“新規事業開発”のステップとしてまずは「事業ドメイン」をしっかりと確立することが重要であるという内容のお話をさせていただきました。これは一見すると非効率、時間の浪費だという意見もあるかと思います。しかし、「事業ドメイン」が確固たるものになっているかどうかで、実は次の「誰をターゲットとするか」に話が進んだときに大きく差が出てきます。今回はこの部分でのお話をさせていただきます。(これ以降は一般的なマーケティングでも同じ考え方です)

■ ターゲットの決め方
「誰をターゲットとするか」を決めるにあたって、まずは市場をセグメントします。ご存知の方が多いと思いますが、“セグメント”とはマーケティングミックスを的確に行うために顧客の顔が見えるレベルまで市場を細かく分けることです。ここではいくつかの軸を想定して細かく分けていきますが、代表的な軸としては性別、年齢層、地域、職業、所得水準などがあります。メーカーなどのように全国的にマーケティングを行う必要がある場合は性別、年齢層といった把握しやすい軸で分類することが多いように思いますが、ある耐久財メーカーで行ったセグメントでは「30代前半の男性、家族構成は妻と2~3歳くらいの子どもが1人、会社ではマネージャークラスにあり、部下が10人程度、年収700~800万、週末は家族でドライブに行き、釣りやキャンプを楽しむ」というようなレベルまで細かく分けた例もありました。一方、小売業のように顧客の比較的詳細なデータを既に保有している業態ではRFMといったセグメント方法も存在します。

■ どのレベルまで細かく分けるか……4R
先の耐久財メーカーが行ったセグメントのレベルから、「40代女性」といったようなものまで、セグメントの分け方には様々なレベルが存在します。いったいどのレベルまで細かくすべきなのだろうかという議論については以下の4Rという基準でよく考えます。

Response :そのセグメントでの市場規模を測定できるか(測定可能性)
Reallistic:セグメントの市場規模は事業を展開するに足る大きさか(有効規模)
Rank   :セグメント間の優劣が検討できるか(優先順位)
Reach   :セグメントへのアプローチは可能か(到達可能性)

あまりセグメントを細かくしてしまうと、いくら精緻なマーケティングミックスを構築したところでそもそもの市場規模が事業成立に必要な規模に満たないのですから事業展開の意味がなくなってしまいますし、あまり大きすぎると市場規模の測定が困難になる、または市場規模が測定できたとしてもどれも似たり寄ったりで優先順位がつけられないといったことにもなりかねません。
私どものグループメンバーがここで特に重要だと考えているのは4つめの到達可能性です。この部分を視野から外すと「やることは決まった、魅力的なセグメントもある、しかしどこで売れば(どこに流せば)いいか分からない、どのようなプロモーションをすればよいか検討もつかない」というように机上の空論で終わってしまいます。私どものコンサルティングのゴールは「戦略を立案し、その戦略を現場で実行して成果を出す」ことですから、机上の空論で終わらせないことはコンサルティングの現場でも常に意識するようにしています。

■ 手戻りの発生

次に以上のようなセグメントに関して、その規模や優先順位からメインとするターゲットを決め、そのターゲットに対する最適なマーケティングミックスを検討するのですが、多くの場合ここで“手戻り”が発生します。
手戻りには2種類あって、1つは「セグメント方法の見直し」、もう1つは「事業ドメインの見直し」です。事業ドメインが確立していればほとんどはセグメント方法を見直すことでシナリオが先に進みますが、そうでない場合は事業ドメインから見直すことになります。両方とも過去に経験したことがありますが、時間をかけて事業ドメインを確立してからシナリオを進めるよりも事業ドメインの見直しが発生する方がはるかに多くの時間と労力を必要とします。
事業ドメインの確定に多くの時間を割くべきとお伝えしているのはこのためです。
次回は事業ドメインの決定からセグメント・ターゲティングまでの部分でいくつかの事例をお話させていただきたいと思います。
(この記事は2008年8月15日に初掲載されたものです。)