様々な化粧品ブランドの中から、出来るだけ自分の肌に合った化粧品を選ぶ。それが従来の消費者の考え方であった。
そのような中で販売された、消費者一人一人の肌に合う「個肌対応」化粧品であるPOLAのAPEX-i。20年前に初めて現れ、今もなお進化し続けているAPEX-iの秘密に迫った。
■ APEX-iの誕生
POLAはもともとプロダクトアウト的な商品を生み出すことを得意とする会社である。例えば昭和12年、固形石鹸が主流であった時代にクリーム状の洗顔料を市場に投入する等、世にないものを出すという気質が強い会社だ。
また、もともと「“最上のものを一人ひとりにあったお手入れと共に直接お手渡ししたい”という創業者の思いを継承し、風土としてその方の肌に合う商品が肌に良い」という考えが根底にあった。肌のタイプに合わせて使い分けるエクセル(2タイプ・1961年)から始まり、エスティナ(4タイプ・1986年)と続いた。
そして、行き着いたのが究極の「個肌対応化粧品」であり、1989年、ある研究員の発見によりAPEX-iは誕生した。
当時、角層研究にあけくれていた一人の研究員が1ヵ月かけて完成する肌の最外層である「角層」を調べることで肌の履歴がわかり、肌の状況が把握できることを発見した。
そこで、全国にいるポーラレディが顧客の角層を取り、本社研究所へと送付することで、研究所にいながら全国の女性の肌データを取得できる仕組みを構築した。そしてそのデータに基づいて、数百あまりの処方の中からぴったりの化粧品をチョイスし、注文を受けてから出荷するというオーダーシステムとして構築した。ポーラレディという強力な販売網を持っていたことが、APEX-i誕生の土台となった。
その結果、完成したのが現在もなお進化し続けているAPEX-iである。
■ ポーラレディへの浸透
現在では、APEX-iはポーラの主力のカウンセリングブランドであるが、発売当初はポーラレディに浸透させるのに大変苦労した。
従来であれば、訪問してすぐに販売商談へと話が進むところ、APEX-iは「自分の肌を知る」というところを入口にしている。従って、「まずは自分の肌を知りませんか?」というフレーズにより、消費者にとって非常に障壁を低くした入口となっているが、この方法をポーラレディに教育していくことが非常に困難であった。
特に、販売するまでの3回お客様に会うという、3ステップ販売「スキンチェックのステップ⇒アドバイスシートと無料サンプル提供のステップ⇒商品お届けのステップ」を確立。1回目で商談とならない方法に当時のポーラレディは戸惑いを見せた。この商談までの販売フローを数回に分けて行うことが、POLAにとっても大きな改革であった。
しかも、マイナス面として捉えると、お客様からすれば3回断るチャンスがあるのだ。
しかし、POLA本社はそれを逆手に取った。従来であれば、1回目で商談にいくところを、APEX-iでは3回お客様と接して初めて商談にはいるため、一度購入した後の継続性も高く、またその3回の間に人間関係も構築できる。また、肌分析、結果の説明を通じて納得してもらって購入してもらうというカウンセリングの仕組みにポーラレディたちはやりがいを感じた。
全国発売の前に先行して約100名のポーラレディを先発して教育、テスト販売を行い、その後のAPEX-iの取扱いも資格制とした。研修会に参加し、専門の知識・技術を身に付けたポーラレディのみが扱うことを許され、当時13万人いたポーラレディのうちたった2万人しか扱うことはできなかった。(現在でも約3万人弱)
また、一定期間売上がないとライセンスも落ちる仕組みとし、知識・技術があり、かつアクティブに活動しているポーラレディのみが扱える商品とした。従って、POLA本社側からしても、ポーラレディの人材育成の強化へとつながったのだ。
■ 20年間愛され続けているAPEX-i
APEX-iが大切にしているのが、「ヒト・モノ・コト」の三位一体である。
APEX-iは数百種類の多品種少量からなる化粧品(モノ)に分析センターによる肌分析(コト)がつき、それを確立された教育制度の仕組みにより教育されたプロのアドバイザー(ヒト)が丁寧に伝える。この三位一体が確立されているからこそ、20年間使い続けられている。
また、お客様のお肌で結果が出ているのが今でも評価し続けてもらえている理由である。季節の変わり目に肌を分析することで、APEX-iを使って前回に比べてどうだったのかがデータで証明される。それによる満足感、実感が出ている。
もちろん、他社もPOLAの真似をしてきている。しかし、肌の基礎研究のバックボーンがPOLAとは大きく異なっている。
他社が店頭で実施している肌測定はあくまでその場の肌の状態であるのに対して、POLAは1,000万件を超える肌データから、角層だけでも保水能力、保護力、といった肌の持つ力がわかる。またメラニン量やシワ進度など将来の肌の傾向までわかる細かい分析結果が出る。またその結果に応じて数百種類の化粧品の中からぴったりの化粧品がおすすめできることが他社の追随を許さないところである。
また、その1,000万件に及ぶ肌データを反映して、新たな有効成分が発見されるといち早く処方改良したり、約5年に1度の大きなモデルチェンジも行っている。
そして、商品を取り扱うポーラレディへの徹底した教育。これら「ヒト・モノ・コト」の三位一体の仕組みが常に進化しているからこそ、20年以上も愛され続けられている商品APEX-iが成り立っているのだ。