船井総合研究所の北島です。
立地を判断する上で着眼すべき点として、
(1)商圏特性
(2)動線
(3)視認性
(4)店前通行量
(5)競合
のうち、今回は(5)競合についてお話しさせていただきます。
小売業販売額が大きく、昼夜間人口を比較すると昼間人口が非常に大きい、主動線が店前にある、視認性が非常に良い、店前通行量が非常に多い立地があったとします。
皆様はこの立地をどう判断しますか?
非常に有望そうな立地であることは間違いないでしょう。
しかし必ずしも自店に最適な立地と言い難い場合があります。この判断の精度をさらに高めるためには「競合」を見なければなりません。
■ 競合とは
ここで「競合」の定義を申し上げましょう。立地診断をやる上で理想的なのは、「お金を落とす場所」を全て競合とみなすことです。もちろんコストや時間的にそこまで手が回らないことがほとんどです。
しかしそのような場合でも、「自店がカフェだからカフェ」「自店は居酒屋だから居酒屋」というなミクロな視点に入ってしまってはいけません。あくまで、「飲食店」というマクロな視点で競合を捉えなければならないのです。
なぜならば、自店がターゲットとすべきは「同業他店の顧客」だけではなく、「街を歩く人」なのですから。
■ 競合を見ると商圏が分かる
競合を見ることによる一番のメリットは、「その商圏において支持されるにはどのような条件が必要であるか」が分かることです。
冒頭の立地を例に取りましょう。
やや高価格帯のカフェの出店を検討していると考えてください。さて、同業者競合を見てみると、いずれも繁盛しています。
A カフェ:主力商品180円
B カフェ:主力商品220円
カフェは繁盛しているし、しかも高価格帯の店舗はなく、差別化にはもってこいです。じゃあ出店……ちょっと待ってください。
他の業態はどうでしょうか?
近隣店舗の繁盛店は、庶民的な居酒屋やラーメン店、ファーストフード……。しかも高単価の飲み屋はほとんど集客できておらず、今にも潰れそうです。
ここまで情報を集めると、この商圏においては、「飲食にお金をかける人が少ない」と考えられ、出店見送りも検討しなければなりません。今出した例は最も単純な例ですが、競合を見るときは自店の強みが本当に活きる商圏かを考えなければなりません。
これが競合を見る最も大きなメリットです。
1つだけ事例をお伝えして終わることにしましょう。
とあるラーメン屋の事例です。既に都内で複数店舗展開していました。商圏を見誤っていたのは、中目黒の店舗です。山手通りに面しており、店前通行量も多い、マクロデータから見ると、中々の好立地でした。しかし売上が上がりません。
味やサービスも自店の他店舗と比較しても遜色ありません。何かが商圏ニーズとずれているであろうことは明らかでした。
そこで他の飲食店を調査しました。
繁盛している店を見てみると価格帯や時間帯別の集客数、入店客層はほとんど変わりません。では何が違ったか。「それだけ?」と思われるかもしれませんが、それは「席レイアウト」なのです。
繁盛店はいずれもゆったりとしたレイアウトになっていた一方で、自店はカウンターと2人用テーブルがカツカツの状態にレイアウトされていました。
このお店は店内見通しがよく、道からでもレイアウトがはっきり分かる店舗でした。この店内見通しが逆効果となり、「食べてすぐ出なきゃいけない」という雰囲気を醸し出してしまっていたのです。
つまり、この商圏の「ゆったり食事を楽しみたい」というニーズからずれていたのです。
嘘のような話ですが、このお店はテーブルをいくつか間引いて、2人テーブルをくっつけ4人席を作るだけで売上が上がりました(特に夜の客単価が大幅に上がりました)。
本当にささいなことですが、商圏のニーズとずれてしまっては、お客様は離れてしまいます。
出店の時はもちろんのこと、自店の売上が上がらないときも周りの店舗を見てみてください。何がその商圏において評価されているのか。それは同業者だけ見ていては気付きません。
今後は、競合という概念を少し広げて、立地を判断してみてください。